239回整形外科リハビリテーション研究会報告

2016.3.19 於:I.M.Yホール会議室
            

     第2中足骨基部骨折・左前脛骨筋断裂を呈した一症例

 バイク事故で転倒し左脛骨、左腓骨近位、第2中足骨基部の骨折と左前脛骨筋断裂を呈した症例である。翌日某総合病院にて創外固定を行い、10日後に観血的整復固定術と前脛骨筋の縫合術を施行し約3か月後に某整形外科病院にてリハビリ開始となった。

 主訴は歩行のHeel off時における骨折部とその周囲の疼痛である。

 理学所見では、Heel off時の足部アライメントは、後足部回内と内側ホイップを呈していた。テーピングにて距骨の後方誘導もしくは後足部を回外誘導することで歩行時痛は軽減した。視診・触診では、骨折部周辺に腫脹と熱感、骨折部での圧痛を認めた。術創部は足関節前面にあり、伸筋腱間、術創部の滑走性低下を認めた。足関節の可動域は膝関節伸展位の背屈5°、膝関節屈曲位の背屈15°、底屈25°であった。足関節のMMTは底背屈4レベルであった。

歩行時痛の原因は、Heel off時の後足部回内と内側ホイップが骨折部に対して外反・外旋のストレスとなり疼痛が出現していると考えた。

運動療法として、足関節背屈可動域改善を目的に底屈筋のストレッチ、KFPのモビライゼーション、長母指屈筋のストレッチング等を行った。約2か月経過し、足関節の背屈可動域やMMTはやや改善したが、歩行時痛に変化はなかった。骨折部は、単純X線画像より仮骨の増生を認めたが、エコー画像では骨折部周囲にやや血流の増加があるが明瞭な仮骨がみられなかった。

 検討項目は歩行時に生じる骨折部および周辺での疼痛の原因についてである。

 検討による助言では、下腿遠位1/3は血流が乏しいため骨癒合が得られにくく本症例も、単純X線画像では仮骨の形成を認めるが、エコー画像では明瞭な仮骨が見られないことから骨癒合がまだ十分ではなく、疼痛の原因になって可能性があることが挙げられた。これは、背屈可動域制限による代償が下腿回旋ストレスになり骨癒合を妨げる原因になっていることが予測され、ストレスの継続によっては偽関節の可能性やスクリューの破損などが危惧されるため荷重量の調整や補高等による背屈調整と改善が挙げられた。運動療法では、足関節の背屈可動域の拡大が優先され、内果後方を通る後脛骨筋、長趾屈筋、長母趾屈筋の柔軟性・滑走性、距腿関節および距骨下関節の可動性獲得と、腓骨頭の骨折・第2中足骨の骨折から、近位・遠位脛腓関節、前足部の柔軟性、足内筋も評価治療の追加が挙げられた。また、本骨折は重度であり長期的にOAチェンジも念頭におき、背屈と底屈の総可動域の拡大も重要であることが挙げられた。急な段差は無理せず、平地から背屈可動域に見合った負荷、段差、階段へ結びつけることも合わせて挙げられた。

 今回の症例は、脛骨側の骨折部に着目した検討項目であったが、他の骨折部位である腓骨、第2中足骨基部の周囲組織に対しても評価と治療が必要であると学んだ。また骨折部の癒合が不十分な場合には、運動療法以外でも考慮する必要性があることを認識した。 

(校正者:橋本貴幸)



脛骨高原骨折及びPCL付着部骨折を受傷し一症例

 症例は20歳代男性で、職業は工事作業員である。某日、工事現場で作業中に鉄の棒(6m,40kg)が右膝前外側に当たり受傷し、右脛骨高原骨折PCL付着部剥離骨折と診断され、受傷時X-p及びCTより脛骨外側顆関節面に陥没と分断を認め、Hohl分類において外側split型と考えられる。受傷2日目に人工骨充填及びプレート固定施行された。尚、PCL付着部剥離骨折においては、保存療法が選択されている。3週間ギプス固定の後に退院し、術後32日目より当院にて理学療法開始となった。現在術後4週3日目であり、免荷中である。理学療法評価では、膝関節ROMは屈曲70°、伸展−20°、足関節背屈5°と制限を認めた。MMTにおいても、膝股関節3レベル以下と筋力低下を認めた。また下腿外旋傾向を認めた。脛骨PCL付着部の骨的不安定性を確認するため、エコーを用い端座位にて脛骨後方引き出し及び屈曲運動を等尺性にて行い、その際の動態を確認した。結果著名な不安定性は確認されなかった。よって運動療法ではハムストリングスや腓腹筋の反復収縮、膝後面筋に対する持続牽引を行った後に、supra•infra patella tissuemobilization及びpatella settingを行っている。

 エコーを用いたPCL付着部の不安定性検査に関しての妥当性、将来的なPLRIへの懸念について検討が行われた。エコー検査に関しては、そもそも不安定性については透視下にて確認するものであり、今回基準となるものがないため比較ができない。また後方引き出しや膝屈筋の筋力などどの程度のストレスを与えたのかが不明であり、明確なことは言えないとのことであった。将来的なPLRIについては、現在可動域制限が存在しているため、早期に膝関節伸展可動域や足関節背屈可動域の拡大が求められ、その後にdial test等のspecial testにて確認していくのが良いとの意見であった。またその他に、高原骨折についての概要が述べられ、脛骨高原骨折は関節内骨折であり、関節面の5mm以上の陥没では、関節症に移行しやすいとされ、陥没した関節面を持ちあげてプレートで固定することが重要である。従来Buttress plateが使用されていたが、近年はLocking plateが使用される傾向にある。Locking plateの特徴として、骨膜との間に隙間があることで血流障害は生じないが、荷重時に骨折部の変形が生じる可能性がある。また周囲に存在する軟部組織の走行や位置変化に伴い、緊張が亢進してしまうことも危惧される。との説明があった。

検討結果を踏まえ、本症例において将来的な外側型の変形になりうる可能性を有しているため、術後の再陥没や下肢アライメントの異常を呈さぬよう、荷重期までに膝伸展0°及び足背屈可動域と足部の柔軟性を改善して、脛骨外側顆関節面への過荷重を避け、内側顆関節面との均等な荷重を行うことが重要となる。長期的視野で、knee inを予防していく必要があることを再認識した。

(校正者:岡西尚人)



     40代 女性両側THA後に右鼡径部痛を訴え、歩行障害を呈した一症例

症例は、40歳代女性である。幼少期に先天性股関節脱臼と診断され、37年前に左寛骨回転骨切り術(以下RAO)、35年前に右RAOを施行された。その後はロフストランド杖使用下での日常生活を行ってきたが、3年前に両股関節痛が再発し増悪したため、本年某日に、某病院にて両側人工股関節全置換術(以下THA)を施行された。既往歴に右側凸の側弯症(Cobb50°)、両側外反母趾がある。術後7週より当院での理学療法を行った。当時の主訴は、下位腰部、両鼡径部、両側の膝関節内側での歩行時痛であった。圧痛所見は、下位多裂筋、両側恥骨筋、両側長内転筋、両側大腿直筋起始部、両側大腿筋膜張筋、MPFLに認めた。股関節周囲の圧痛は右側が左側よりも著明であり、膝関節周囲は右側よりも左側が著明であった。腰部と鼡径部は安静背臥位でも疼痛を認めた。可動域(右/左)は、屈曲60°/60°、伸展0°/0°、外転15°/15°、内転15°/15°、90°屈曲位外旋5°/5°、90°屈曲位内旋10°/5°であった。感覚検査は右大腿前面6/10、右殿部3/10であった。筋力はMMT(右/左)にて股関節屈曲2/3、股関節外転2/2、股関節伸展3/3であった。初期理学療法は腰部に対し、腹斜筋群の収縮訓練、多裂筋のリラクゼーションとストレッチ、恥骨筋、腸腰筋、外旋筋群にはリラクセーションとストレッチ、外転筋群の筋収縮訓練を行った。術後15週には職場復帰したが、通勤での階段昇降で鼡径部痛が増悪したため、執刀医の勧めもあり、疼痛回避並びにリハビリを優先する目的で再び休職となった。術後25週では、安静背臥位および歩行時の下位腰部痛は消失していたが、左膝痛は残存していた。可動域(右/左)は、屈曲60°/70°、伸展10°/10°、外転15°/15°、内転15°/15°、90°屈曲位外旋5°/5°、90°屈曲位内旋5°/5°であった。感覚検査は右大腿前面6/10、右殿部3/10であり、筋力はMMT(右/左)にて股関節屈曲は2/3で改善していなかった。歩容は、骨盤過前傾位で右股関節は常時過内旋位で、右下肢立脚期の体幹右側への動揺が著明であった。圧痛所見は、右鼡径部外側に強く認め、屈曲最終域で歩行時と同様の疼痛が出現した。また、鼡径部痛は、伸展位での内外転や内外旋では出現しないが屈曲位では出現していた。右鼡径部痛の解釈、右股関節屈曲筋力低下の解釈、今後の理学療法の治療方針について検討が行われた。

フロアからは、X線像やCT画像を基に本症例の病態を推察し理学療法を実施すべきであるとの意見がだされた。X線像の小転子と坐骨結節間の距離に着目すると、術後は術前より延長している。これより、股関節周囲軟部組織および神経・血管の緊張が増加している可能性が指摘された。さらに、腸腰筋はRAOにより前外側に引き出された臼蓋の上方を通過している。その後のTHAによる距離の延長も重なり、緊張はより強くなっていると予想される。また、術後のCT画像より、右側は左側より前捻角が大きく、臼蓋の前方部も被覆が大きく設置されていることが分かった。これらを想定した上で屈曲についてデモンストレーションが行われた。それらを踏まえたうえで、仙腸関節性の疼痛との鑑別をもう一度精査すべきという意見や、疼痛を助長しないように軽度屈曲位での治療を行うべきとの意見が出た。

画像所見から術前術後における股関節の環境変化を考慮し、評価および運動療法を実施する必要性を再認識した症例であった。

(校正者:岡西尚人)



 80代男性 原因不明の一側性内転筋群脂肪変性を既往にもつTKA症例

症例は農業に従事する80代男性、診断名は右変形性膝関節症で平成2778日に全人工膝関節置換術(以下、TKA)が施行された。また、術前より反対側である左膝にも疼痛を認めており、Kellgren-Lawrence分類にてGradeⅣ(FTAは右186、左188)であることからも、翌年の8月頃にTKAを予定している。術後は順調に経過していたが、右股関節内転筋群の筋力の低下が著しく、退院前日の寝返りの際、「ぶちっとなった」という本人の感覚と共に、それ以降、膝立て位の保持やactive SLRなどが全くできなくなった。術後約1.5ヶ月時点でMRI検査を行ったところ、内転筋群の広範囲な変性(変性該当筋:外閉鎖筋、恥骨筋、長内転筋、大内転筋、短内転筋、薄筋)が確認され、術前CTを見返すと術前にも存在していたものであるとの見解に至った。しかし、精査の依頼をするが本人は「どうせなおらないのなら」と拒否をされ、詳細については不明確のままであった。

術後2ヶ月を経過し、担当となった頃より活動量の拡大に伴い左膝の疼痛が出現した。

その際の理学療法評価は、関節可動域が左膝屈曲130°、伸展0°(extension lag-)、股関節中間位内旋35°(右55°)、外旋50°(右50°)であった。

歩行時痛はLRMstに出現し、疼痛部位は左膝内側、圧痛は内側半月板や内側側副靭帯、膜様筋など疼痛部位周囲には認めなかった。ストレステストは強制伸展と他動膝関節伸展位外反にて疼痛の再現が得られた。また、歩行時痛は即時的な変化として半膜様筋~内側側副靭帯のリラクゼーションやストレッチ、膝蓋下脂肪体のマッサージ、腓腹筋の筋力トレーニング、大殿筋トレーニングなどを単独で行うのみでも消失したが、効果は持続せず残存していた。右の内転筋群が脂肪変性を生じているため、右の立脚期に反対側への骨盤帯のshiftが生じ、代償性のDuchenne跛行が生じていることで、左ICでの不安定性を助長し疼痛出現の因子となっていると考えた。

検討項目として、①本症例が一側の部分的な高度脂肪変性を生じた原因と今後注意すべき点について、②反対側(左膝)の歩行時痛改善が持続しない要因についての2点が挙げられた。

フロアからは①について、感覚異常はなかったとのことであったが高齢であることからもより精査をしてみてもよかったのではないか、代謝性疾患でも脂肪変性が生じるのではないか、脂肪変性の中でも支配神経が複数ある筋もあるためどの筋の変性がより強いかを確認したほうがよいとの意見が挙げられた。今後の改善は見込めないことからその状態でいかに対応していくかを今後考えて行くようにとの指摘を受けた。大殿筋下部繊維など内転の作用を有する他の筋に着目をしてアプローチを行っていたが、回旋に対する作用についても指摘を受けたため、より周囲の筋機能の詳細な確認などを行い、いかに対側の負荷を軽減させられるかを検討するようにとのことであった。

②について、フットプリントなど足部の機能をより詳細に評価することやインソール・テーピングなどを用いて変化を見てみるのでもいいのではないかなどとの意見が挙げられた。その中でも、疼痛発生源となった組織の同定をより詳細にすることが必要であり、症状の改善維持に繋がると指摘を受けた。

今回の経験から、画像から得られる情報と解剖学的知識を活用することの必要性と、現在の症状が対処できるのか対処できないのかを明確にすることを再認識した。また、対処できる場合は、何が疼痛を生んでいるのか組織をしっかり同定してそれに対するアプローチを局所だけでなく、インソールなども用いて対処していくことが重要であると学んだ。

(校正者:赤羽根良和)