第6回整形外科リハビリテーション研究会報告
1992年3月7日(土)松本義肢製作所会議室にて
1.症例検討会報告

 @碧南市民病院 理学療法士 浅野先生より肩甲骨頸部骨析の保存療法例が呈示された。経過は、受傷後Zero Positionにて牽引、20日後Abd.100゜ギプス固定、30日後シャーレとし理字療法開始、39日で60゜、46日で、30゜、48日で除去、徐々に筋力強化を計る。70日でROMがほぼPlateau、X‐p上骨癒合(+)、74日時点でScapulo‐Humeral Rhythmが正常であることを確認し、腕立て伏せ等の筋力強化を行う。92日現在肩内旋70゜を除さほぼ正常な可動域を獲得した。PT開始時点で、筋のImpingementによる疼痛や可動域障害の発生と頸部短縮による筋力の効率低下が予想されたが、疼痛、可動域障害は間題とならなかった。筋力は3ケ月の時点で健側の2/3の筋力(Is0‐Metric、Isokinetic)であった。頸部短縮にも拘らず良好な筋力回復を示したことに対し、転位したGlenoidが前方にきており、棘上筋、棘下筋の効率がそれ程落ちなかったこと、Glenoidが下方を向かなかったことなど理由づけがされた。肩甲骨頸部骨折の経験は、他に1名しかおらず、この症例は今後の指標の一つにもなるだろう。また、肩関節外転装具において内外旋をゆるす工夫を希望する意見があった。

 A国立名古屋病院 理学療法士 中川先生より左肩習慣性脱臼(Bristow変法)の症例が呈示された〈患者さんも参加された)。Op後6週より理学療法開始、現在4ケ月半になるが外旋が0゜と制限が強い。制限因子は術創部の癒着と筋の防御収縮によるもののように感じられた。今後の対策としては、創部軟部組織の癒着・短縮を壊し、動かしていくべきであろうが、その前に2次的に生じている筋の防御的収縮を適切な方法で防いでいく必要があるだろう。アプリヘンジョンテストが陽性であったので、肩の前方の伸張性獲得は、前方不安定性を考慮したレベルであることが望まれるであろう。肩の外旋制限がある場合、C−Hlig.(鳥口一上腕靭帯)に注目してみる必要がある。また今回の場合、術後理学療法開始時期が創部の瘢痕ができあがっている時期なのでその後の回復が難しいことも考えられるし、繰り返し生じた脱日により強い不安をともなったことが影響していたこともあっただろう。尚、私個人の反省として、今回のように患者さんが参加してくれた場合、スムーズに適切な検査かできればとも感じた。

B国立津病院 理学療法士 大曽根先生より左上腕骨骨幹部骨析(Ender釘2本、ストッキネットベルポー固定)の症例が呈示された。術後2日から理学療法開始し、約6週後にはROMは肩外旋75゜を除きほぼ全可動域を獲得、8週の現在では夜間痛とImpingement Painが間題となっている。疼痛に関しては、Rotator Cuff Injuryの疑いが持てるが、年齢(59才)と可動域から保存的にみていけば良いとの意見カが出た。また、Functional Brace使用例も紹介され、肘関節屈曲を制限しない装具の出現を待つ意見が出た。上腕骨骨析でギプス固定をした場合、本症例でほぼ全可動域獲得している6週から可勤域訓練を開始するわけで、早期理学療法の必要性を示した症例といえる。

 C名市大学病院 理学療法士 石田先生より右肩甲骨軟骨肉腫による肩甲骨全(肩峰の一部を残して)摘出術施行例が呈示された。残存筋(カッコ内はOp後10ケ月時点でのMMT)は僧帽筋(上部4+)、三角筋(中部4−、前部3−)、太胸筋・広背筋=肩内旋(4)、上腕三頭筋(5)、上腕二頭筋(5)であり、Op後10ケ月の可動域(カッコ内はPassive)は肩屈曲50(100)、伸展30(30)、外転55(95)、内旋70(90)、外旋0(80)であった。文献的にも同術施行後の可勤域は類似しており、指標となりそうである。また肩甲骨欠如による機能低下(1.支点としての関節窩がない、2.脱Scapul0‐Humeral Rhythm、3.Rotator Cuffによる骨頭の引き下げ固定がない、4.上腕骨の牽引力低下、5.胸鎖関節の過運動性、6.僧帽筋の過活動、7.肩関節周囲筋群の萎縮)を我々に知らしめる症例ともいえる。

2.運営会議

@整形外科リハビリテーション研究会の印をつくる。
A6月または7月に症例報告会を行う。日頃の治療の成果を報告していただきたい。
多くの会員の発表を期待する。詳細は岐阜リハ病院林典雄、碧南市民病院、浅野昭裕まで。

3.資料
1)山本龍二:肩周辺機構.関節外科,9(増刊号):75−84、1990
2)山本龍二:肩関節拘縮成因と病態一.関節外科,10(増刊号):8−16、1991
3)尾崎二郎:肩の腱板断裂.整形・災害外科、30:1453・1460、1987