第14回整形外科リハビリテーション研究会報告
1993年1月9目(土)松本義肢製作所5階会議室

 国立津病院 理学療法士 岸田先生より『拘縮手のリハビリテーション』について、薄井正道による同名の文献をもとにlectureがあった。内容は、拘縮手のリハビリテーションでは創傷治歳機転からのアプローチが重要で、lag ohase、fibroplastic phase、maturation phaseを理解すること。目的は、瘢痕組織のremodelingを助長し、favorable scarを作ることであるというもの。また、拘縮手の評価に関しては、関節要素と関飾外要素とに分けて考えることが大切で、皮膚、腱、intrinsic tightness、retinacular plus signについて述べられた。更に装具についても触れられたが、拘縮の鑑別や治療(装具処方を含む)には手の機能解剖、とりわけcollateral ligamentの走行と緊張の理解が重要であり、再確認したい。MP、PIPの屈曲拘縮および伸展拘縮と母指の内転拘縮の要因が上記文献のtab1e2〜6にまとめてあるのでこちらも確認を。(文責:浅野)

 平野総合病院 理学療法士 小野先生より尺骨骨折の症例提示があった。基本的には尺骨骨幹都骨折であり、運動学的に見て可動域の制限因子となることはないと考えてよい。経過を見ても理学療法開始後2週でpassive ROMはFreeとなっている。間題となったのは、この時点でactiv ROMが回内45゜、回外15゜と制限されていることであった。この症例より、まず神経麻痺が考えれられるが、検査上間題はなく否定される。次に考えられるのは、受傷後1ヵ月のdisuseによる筋出力低下である。小野先生の場合は、これに対し肩、前腕、肘のpositionを工夫し、上腕二頭筋の最大伸長を利用しながらアプローチを施行した結果、1週後に回内70゜、回外60゜と改善を見ている。ここでの治療は、分かれる所でもあるが、症例、症状に応じ効率の良い治療方法を模索したい。また、平成医療学院理学療法士の林先生より、この症例に対し、筋腱移行部へのstretch刺激による賦活作用という面から英語文献が紹介されたので、ぜひ一読されたい。(文責:中川)

 国立津病院 理学療法士 岸田先生より示指伸筋腱断裂後の再縫合症例が報告された。手術は、固有伸筋を切除し総指伸筋のみ縫合したものであったが、リハ開始が術後2目目と早期から行っていた。今回の早期運動療法の問題点として屈筋腱と違い、伸筋腱は線維が薄いため余り早期から行うとe1ongationを起こし易いのではないかという危険性があること、リハ開始時期は炎症期に当たりedemaがおき易く、その時期に訓練を開始することに対する疑間などがあげられた。訓練内容では縫合部の伸筋腱にstressがかかからないようにして、他の関節のROMを保持することが重要であり、解剖学的な知見からアプローチを進めて行くべきとの意見が出された。4週現在、wrist、MP、PIPいづれもROM制限が存在しているが、通常はこれから訓練が開始される時期にあたり、今後の経過報告に期待するものである。(文責:神山)

 平成医療学院 理学療法士 林先生(平野総合病院 原田先生の代理)よりMMK術後の症例が提示された。術後約4週よりリハを開始しているが、ストレッチを中心とした体操療法を施行した。術後約6ヵ月現在肩が屈曲75゜、肘伸展−40゜、手関節底背屈約30゜、MP屈曲10゜〜50゜PIP屈曲70゜〜90゜、DIP関節屈曲45゜〜60゜と著しい制限を残している。手術とは無関係であり、いわゆる廃用性の拘縮と考えられた。今回のテーマがhandであったため、中でも特にADLに大きく関与すると思われるMP関節の改善について検討した。中心となったのは、Sprintの処方であった。様々な方法が考えられるが、よく使われるのがナックルベンダーであるが、義肢装具士からこのナックルベンダーは掌側のバーが邪魔してしまい効果が得られにくいため、処方は角度を考慮しなければいけないとのことであった。それ以外に考えられるのが、アウトリガー付きのものである。これも、牽引方向を注意する必要があり、関節に対してトルク力を考えるだけでなく離開するようにしなければならない。しかし、問題点もあり、患者に対して十分な説明をしなければなかなか装着してもらえないという意見もあった。他にはグローブ式で一本ずつ舟状骨方向に牽引する方法も上げられた。様々な方法を症例に合わせて処方しなければならないが、最終的にはセラピストがいかにしっかりとした評価をし、フォローして行くかが大切とのことであった。(文責:岸田)

 市立高浜病院 理学療法士 高橋先生より、血栓性血小板滅少性紫斑病後の股、膝、足関節拘縮の症例が提示された。間題提示として、強固な足関節拘縮(底屈拘縮)に対しアキレス腱延長を施行することで、歩行能力の改善が得られるか否か、またそのためには現在の理学療法として何を行うべきかの2点が出された。まず前者に対しての意見として、足関節にのみ目を奪われないで股、膝にも注目し、まず全体のアライメントを整えることを優先すべきだとの意見が出された。股関節については、伸展−5゜であり十分腰椎の前彎で代償し得る程度である。やはり膝関節屈曲拘縮の改善を計ることにより、足関節の矯正角度を少なくすることも可能であるとの意見が出された。前記した考え方をもとに歩行を診なければ、手術の意味がなくなるのではないかとの意見が多かった。そのための理学療として、膝に対しては、ハムストリングスへのfriction massageや収縮訓練も意見として出されたが、やはり3方向牽引が最善であろうとの意見が出された。足関節に対しては、MTP関節の十分な可動性、内反、外反ストレス等の1igamentへのアプローチ、そしてやはり牽引療法が重要な位置にあるのではないかとの意見が出された。症例としてはかなりSevereであるが、今後の報告を期待するものである。(文責:林)