第16回整形外科リハビリテーション研究会報告
1993年3月27目(土)松本義肢製作所5階会議室

国立名古屋病院 理学療法士 中川先生より『前・後十字靭帯の機能解剖』について1ectureがあった。文献から屍体研究における各靭帯の角度別のストレス変化について説明があった。それぞれ前方線維と後方線維に分れてはいるが、おおよそACLは30゜屈曲位で緩み、前方線維はそれから徐々にストレスが増加し、後方線緯は、ほば変化をしない。PCLは相反しており、前方線維は50゜屈曲位で一番緊張し、以後は緩んでいくが常にある程度の緊張がかかっている。一方後方線維については屈曲するに従い緩み、80゜辺りからほぼ一定となるとのことであった。さらに、筋収縮が伴う場合はまた違った曲線を示すとのことであった。それらからACL損傷後に行うIsometric−Exは60゜−70゜屈曲位で行うの一番良いとのことであった。しかし、これらの研究はあくまでも屍体研究であり、生理的な状態ではないということ、さらには2次元での研究であり回旋要素が考慮されていないことが間題となる。固定肢位や筋力増強訓練等我々が携わる部分に大きく関与する間題でもあり、今後も十分な研究が期待される。詳しくは文末に挙げた参考文献にて再度確認されたい。(文責:国立津病院岸田)
 
 大桑病院 理学療法士 水谷先生よりDashboard injuryによる膝蓋腱単独不全断裂の症例報告がなされた。primaryに縫合術を施行し、2週間固定した後装具を装着してROM訓練を開始した。8週目に装具を除去、現在10週半の時点で屈曲115゜、伸展−5゜である。考えられる原因としては、膝蓋腱と周りの組織(特に脂肪体)との癒着、筋実質の短縮、線維化等が挙げられた。これにつては、pate11aの位置がどこにあるのかを確認することである程度判別できるため、検査時にはストレス検査に加え必ず確認を取るようにしたい。se1f−exのみでPTの関与がないということで情報量が少ないために確定することは出来なかったが、今後の訓練を進めて行く上で検査すべき項目を再薩認することが出来た。この疾患は、腎機能障害での透析患者には見られるが、外傷による報告は極めて少ない。経過を含めて今後の報告を期待したい。(文責:国立津病院 岸田)

 大桑病院 理学療法士 水谷先生より大腿骨骨幹都骨折、外顆骨折の術後半年経過した膝の可動域制限の症例が呈示された。現時点では骨折部での外側及び中間広筋の癒着や浮腫による筋活動の低下、また膝蓋上包をはじめとする関節包の癒着等の膝周辺軟部組織の短縮等が考えられた。治療方針としては現在の間題点を明確にし、remoderingを意識した治療が必要ではないかという意見が出された。具体的な治療法として以前大腿骨骨幹部骨折術後で優秀な成績をあげた平野総合病院 理学療法士 小野先生に実際の訓練内容を紹介していただきどこに注目して治療を行ったのか、さらに木村病院 理学療法士 神山先生には表面解剖を交え、active−exをどのくらい施行したらいいのか等実技を中心に1ectureが行われた。我々が治療を行う上で施行したプログラムが治療目的に対して的確かどうかをフィードバックする必要性を再認識した。(文責:木村病院 神山)

 名古屋第二赤十字病院 理学療法士 坂本先生より膝靭帯損傷の2例が報告された。まず右膝前十字靭帯損傷では、再建術を施行し、翌目よりCPM、1週後より理学療法を開始して術後8週で膝0゜−150゜と良好な成績を得ている。2例目は左膝前十字靭帯損傷、内側半月板損傷で再建術と半月板損傷縫合術を施行した。この症例は手術まで2週間以上経過しており血腫が進行していたことが予測され、さらに半月板を縫合していることでギプス30゜屈曲位にて4週間固定していたこともあり、理学療法に際し持続する腫張と筋の出力不全が間題となった。弾性包帯等で圧迫を加えながら筋収縮を促すこと、フィードバック療法、pu11y−ex等の意見が出され、さらに半月板とpate11aの動きに着目する必要性があること、また19才女性いうことで精神面も考慮する必要があるとの意見もあった。pate11aの動きについては、この症例に限らず拘縮の原因を探る方法として有用である。経過報告を期待したい。(文責:国立名古屋病院 中川)

 大桑病院 理学療法士 水谷先生より既術性頸髄症の患者が呈示され反張膝について検討した。患者は平成元年より歩行障害出現し、平成4年12月22目に手術を受け、術後3ヵ月現在両側10゜の反張膝歩行を呈し、40m/minの歩行能力である。筋力は膝伸展rt4minus、lt3plus、屈曲rt3、rt3、股関節伸展rt3、1t3、足関節背屈rt3minusで足関節のROM制限はない。知覚は表在覚、深部覚とも遠位で強く障害されている。この症例に対し、フロアから深部覚障害のみで筋力低下のない反張膝の経験談が出され、第一の間題は深部覚障害であり、筋力低下とは言いきれないが、筋力低下に対してはアプローチする必要があること、そして歩行時のアライメントを足関節の角度で修正するような短下肢装具の使用が提案された。深部覚傷害による反張膝歩行は、接地や重心移動の様子をより障害の少ない近位関節の受容器で入力させるための代償でもあり、歩容を正常化しようとすることで歩行能力を低下させる事もあるので注意されたい。(文責:碧南市民病院浅野)

 平野総合病院 理学療法士 原田先生より第12回本研究会にて報告された症例(右腱板断裂、右肩関節脱臼骨折)のその後の治療報告が行われた。当初に比べ肩関節屈曲100゜から150゜へ、肩関節外転100゜から120゜へと改善が認められた。治療としては上、中G−H 1igおよびC−H 1igに対してのstretchingを主体としたものである。ただROMの改善は得られてはいるがもう一息の可動域獲得のためにはどうしたらよいのかが間題として呈示された。フロアーから骨頭が下方へ滑り込むためにはcapsu1eの下部および後部の容量の狭小化を改善すべきとの意見が出された。そのために肩下垂位での回旋可動域だけでなく任意の角度での回旋角度の評価とともに、肩甲骨の確実な固定下での骨頭の下方へのg1iding、ship ro11ingストレスが有効であろうと思われた。棘上筋の断裂の分を上腕二頭筋長頭で代償させると言う最終目標の達成のためにも、十分な余裕のあるcapsu1eの状態を作っておくことが必要であろう。今後の治療にもう一工夫加え、ぜひ報告を期待するものである。(文責:平成医療専門学院 林)

参考文南犬
木村雅史『前十字靭帯再建のバイオメカニクス』骨・関節・靭帯2巻9号1989.9
安田和則 他『膝十字靭帯のバイオメカニクスとその応用』臨床整形外科23巻6号1988.6