第32回整形外科リハビリテーション研究会報告
1996.9.17(土) 於:東社会教育センター第2集会室

 愛知ブレース 義肢装具士 篠田先生より足底板の最新知見についてlectureが行われた。まず足部のアーチを含めての解剖学、機能解剖学の説明がなされた。重要なことは内側縦アーチの頂点は舟状骨であり、外側縦アーチの頂点は立方骨である。足底板については昭和大学藤が丘リハビリテーション病院 整形外科 内田先生の文献をもとに説明がなされた。足部のアーチの形だけではなく前足部の回内外、後足部の内外反を考慮したもので、歩行分析にてどのような状態を呈しているのかを的確に判断し、それにより3つのパターンの足底板を考案、適用しているとのことであった。しかし、その形状と足部の前足都、後足部のアライメントの関係については理解するのが困難であった。踵骨のアライメントを考えるよりも、踵骨のアライメントを決定するのが距骨であるため、距骨を中心に考えた方が理解しやすいとの意見も出たが、結局十分に理解するにはいたらなかった。足部は下腿、大腿とアライメントの影響をお互いに受けているため理解に苦しむが、OAを考える上でも非常に重要な考え方となるため、もう一度十分な理解をしておくことが必要である。これについては次回のlectureにてもう一度十分に検討していきたいと考える。足底板自体は、頂点を舟状−立方関節に置くことで良好な成績が上がっているとのことであった。まずは簡単な素材を用いて簡易足底板を作製し、実際に痛みや歩容の変化を確認して、効果を確かめた上で足底板を作製すると良いとの意見であった。足底板の考え方自体もまだ確立しているわけではなく、意見の分かれるところもある。各therapistの意見を十分に反映していくためにもまず足底板の作製の前に、下肢全体のアライメントの変化がどのように相互間で影響しているかを今一度確認し、十分な理解を得た上で足底板を考えていきたい。(文責:国立名古屋病院 岸田)

 高浜市立病院 理学療法士 大曽根先生より68歳男性の転落事故による左上腕骨近位端骨折(骨頭骨折)の症例呈示がなされた。保存療法で3週間三角巾bastband固定を行い、理学療法が開始された。肩関節周辺に強度の疼痛を訴えROM不可能な状態であった。浮腫や他関節の可動域制限が無かったため、とりあえずbicepsとtricepsのisometric、coddman−exを施行した。8週の時点でG−H50゜、挙上70゜(110゜)、ext−rot20゜(40゜)であった。訓練には内外旋のisometric、上腕の引きつけ運動を追加した。10週で外来通院時80゜でclick音があり、疼痛の出現と脱力感が発生し訓練に支障を来した。現時点では訓練前で90゜(130゜)、訓練後では130゜(150゜)である。健側の角度からして挙上150゜は−10゜程度とのことである。この可動域制限と疼痛、click音について間題提示され、検討した。まずc1ick音については骨折が小転子部にあり、関節面にかかっていると判断されるため、その関節不整によるclick音であろうと結論された。可動域についてはactiveにて挙上制限が著名であることから、腱板の機能不全であろうと判断された。またこの機能不全があることでdeltoidのトルクが関節での骨頭圧迫力に働き痛みを誘発しているのであろうと考えられた。訓練でもcuff−exは行われていたが、実際の手技にて有効に行われていなかったのではないかとの指摘もあり、訓練の実際を実技を交えて検討した。意見としては、いわゆる内外旋、内外転をそれぞれ行うcuff−exやzero−positionでの上腕骨引きつけ運動が紹介された。また・出力の少ない時期にはこれらの運動自体が困難なこともあるため、側臥位にて肩甲骨共々引かせることで、therapistが肩甲骨内転を徒手的に規制してより有効な筋収縮を誘導するといったことが挙げられた。Cuff−exに限らず、有効な訓練を行うためのちょっとした工夫が結果に大きく影響することを再認識することが出来た。(文責:国立名古屋病院 岸田)

 碧南市民病院 理学療法士 寺下先生より67歳女性で転倒した際に手をついて受傷した左肘頭骨折・上腕骨内顆・外顆骨折の症例が呈示された。肘頭に対してはZuggurtungs osteosynthesisにて固定し、顆部はscrewにて固定された。肘屈曲90゜、前腕回外位にて3週固定され、その後リハが開始された。開始時は肘のflex−extは80゜−60゜−0であり、wrist d.f1ex−v.f1exは30゜−0−40゜であり、浮腫もあった。弾性包帯による浮腫の軽減・可動域訓練を中心に行い、術後5週の時点で肘flex−ext 90゜−30゜、前腕pronation−supination 20゜−0−75゜、手関節d.flex−v.f1ex 50゜−0−40゜であった。今後の訓練の進め方について間題提示された。可動域制限の原因についてはcollateral 1ig、capsule、tricepsやbrachia1isの癒着、短縮、g1anurationの関節腔への進入などが挙げられた。いわゆる関節内骨折であり、整復状態についても万全とはいえず、困難な症例と思われた。手関節の可動域の際に内顆に痛みを訴えていることから、肘の内外反ストレスと手関節の動きから来る内顆への影響の方が恐いと思われた。activeな運動を中心に行うことはよいが、isometricでさえも手関節については慎重にならざるを袴ないとの意見であった。術中角度が肘f1ex−ext 100゜−30゜−0とのことで、現在の角度がすでにその角度に近くなってきているため、術中の角度が目標と考えて良いと思われた。今回の症例のように、肘が受傷部位でありながら、肘の動きよりも手関節の動きに注意を要するというのは十分にこれから考慮して行かなくてはならない問題であり、近隣関節の影響の重要さを再認識させられた。(文責:国立名古屋病院 岸田)

 碧南市民病院 理学療法士 浅野先生より腱板断裂の症例が2例呈示されたが、時間が無く十分な検討が出来ないまま終了してしまったため、次回に繰り越して検討をしていく予定とさせていただきます。よろしくお願いいたします。