第41回整形外科リハビリテーション研究会報告
於:1995.6.17 国立名古屋病院

 榊原温泉病院 堤先生より膝関節安定性に関与する靭帯についてのlectureが行われた。MCL、LCL、ACL、PCLを中心に、前後、内外側、回旋の各方向における安定性について説明された。基礎的な部分ではあるが、様々な分析を行っていく上で確実にしておかなければならない項目であり、これらを基にして様々な病態を考えていけるようにしたい。このlectureの内容を基に、MCL、ACL合併損傷の病態について検討してみた。バスケットのボールをもらってストップしたときの軸足によく損傷が起こるということで、そのシチュエーションにて膝にどの様なストレスが加わるかを考えた。MCLについては各会員ともに理解し易かったが、ACLは理解し難かった。MCLについてはストップしたときに膝に外反ストレスと下腿の外旋ストレスが加わることで生じることが理解できた。ACLについては運動エネルギーが前方に向かっているので急激な停止は大腿骨を前方に押し出す力として働き、いわゆる相対的な下腿の後方引き出しが起こるように感じてしまう。よってPCL損傷となってしまいがちであるが、大腿骨が前方に押し出される運動エネルギーではなく、膝関節全体が前方に押し出されるエネルギーであり、それをQuadで止めていると見ることが出来る。そのため膝には屈曲しようとするトルクがかかり、それをQuadが制御していることになる。そのため相対的に下腿に対しては前方引き出しの力がかかることとなる。また、膝が屈曲位にて固定されるため、関節面上では大腿骨顆部が脛骨の関節面のやや後方に位置しており、そこでの荷重は脛骨外側関節面の形態上脛骨を前方に押し出す力として作用する。また、MCLが断裂していれば内側不安定性が大きいため、更にその前方引き出しストレスがダイレクトにACLに伝わることとなりACL断裂を引き起こすと考えられた。一見すると混乱してしまいがちなことであるが、実際に起こっている状況を中心に病態を整理して考えることが重要であると実感した。このような考え方を持って様々な疾患の病態を把握して行けるようにしたいものである。

 岐阜リハビリテーション病院 小野先生より27歳 男性の左下腿複雑骨折、左足関節内果骨折、左距骨骨折、左踵骨骨折の症例が呈示された。H6.12.16に1tの大理石に挟まれて受傷し、1時間そのままの状態でその後病院にてope施行となった。脛骨はplate、腓骨はK-wire、内果はmalleolar screw、距骨はk-wire、踵骨は保存であった。術後gyps固定をした状態で転院し、H7.1.4からリハ開始となった。初期ではankle df -5゜、pf 20゜、edema(+++)であった。1.27よりPTB装着するも疼痛訴え、装着していない。3.17の時点でdf 0゜まで改善したが下腿前面の潰瘍が改善せず植皮術を施行している。4.7よりリハ再開となった。この時点でdf -5゜、pf 20゜であり、4.29に退院し、以降外来にてフォロ−していた。5.23の時点でdf 0゜、足趾拘縮(+)、足部筋疲労(++)、edeme(+)であり、足部は全体として硬く、一塊のようであった。6.16現在でdf 5゜、pf 15゜である。先ずは足趾の運動を十分に行い、屈筋腱を滑らせるように持っていくとの意見が出された。そのうえでPTBにゴムを引っかけて夜間に足趾の持続牽引を行うという意見が出された。足関節については三角靭帯の癒着が考えられるため、足関節に対して底背屈のみでなく内外反を取り入れたmobilizationを行っていくとの意見も出された。また十分な運動の後にactive assistiveに足関節の底背屈および内外反をおこなわせ足根管での屈筋腱のexcursionを引き出していくとの意見も出された。底屈制限については表面の皮膚瘢痕による癒着が考えられ、もしも癒着があると言うことであればPTのレベルでは対処しきれないためDrにconsaltしていく必要があるとのことであった。また足関節の運動を行うときでも可能な限り足底を床につけ、下腿に対する荷重を行わせることも重要とのことであった。今回の場合は非常に大きな力が下腿から足部にかけてかかっているため、軟部組織の阻血、損傷は大きいと考えられ、可動域を回復するには非常に不利な状況ではあるが、可及的に筋収縮とmobilizationにて軟部組織、関節の柔軟性を出して行くことが重要な症例であった。 (文責:国立名古屋病院 岸田)

 菰野厚生病院 丸山先生より同一下肢複合骨折の症例が呈示された。この骨折は骨折間に膝関節があることよりFloating Knee Fractureと言われ、治療に難渋するとされている。症例は41才の男性。交通事故にてH7.4/25受傷し(FreserT型)、3w間の直達牽引後の5/16に大腿骨骨幹部、脛骨共にKuntscher髄内釘、腓骨をK-wireにてope施行している。下腿はGyps固定を行い、ope後1wよりCPM開始、同時に病室にてsetting、SLRを行った。ope後1MでKnee range0-0-75(lag40)であり、今後のリハの進め方についての検討が出された。まず病態については、大腿骨骨幹部はちょうど髄腔が一番狭く支持性がほしい部位での骨折で上下に横止めがなされていること、下腿は解放骨折でこれも上下に横止めをしていることを加味すると創外固定と考えた方がよく早期の荷重は困難と考えるべきである。また、下腿はGyps固定がすでに1M行われており、解放骨折による感染の可能性が生じている為か、その必要性についてはDrの意見の確認が必要である。次に1M経過している現在のリハについて、ROMにおいてはopeの固定性は良好と考えられる為、積極的に行っていいという意見が多く出された。ポイントはlagが40゜とQuadを中心とした筋収縮が出せていないことで、その方法としてはCPMはrangeの維持程度にとどめ後の時間をできれば訓練室で筋収縮を出していくことに当てる事が先決である。問題視されたのはKneeよりもAnkleのrangeで、先に挙げたように底屈位で1MGyps固定している為、Drの意見を聞きながら、まずは積極的な足趾の運動が必要である事も確認した。 (文責:国立名古屋病院 中川)