第43回整形外科リハビリテーション研究会報告
1995.9.30 於:国立名古屋病院


 菰野厚生病院 理学療法士 丸山先生より肩関節の機能解剖(force couple)についてlectureが行われた。inner muscleとouter muscleの協調的な運動が正常な肩関節の動きを作り出しており、双方どちらが障害されても異常な運動が発生することを再確認した。またその際の代償運動についても確認できた。基本的な知識の整理を目的として行われたものであるが、評価をしていく上で非常に重要な内容であった。               (文責:国立名古屋病院 岸田)

 碧南市民病院 理学療法士 浅野先生より基礎的なlectureを理解した上で、ビデオを使用してのscapulp-humeral rythmについてのlectureが行われた。疾患のわからない4症例の肩関節の挙上、結髪、結滞動作を背中から観察し、評価を行った。疾患はすべてが腱板断裂であったが、rythmがそれぞれに異なっており基礎で確認したforce coupleの働きがよく理解できたのではないかと思われる。これを観察だけにとどまらず、実際に肩関節疾患の症例が来たときにどのように応用して評価をしていくかが重要である。そのためにも左右差がある、通常と異なるといった症状を十分に観察し、その症状を明らかに分析し得るだけの様々な検査が出来るようになることが重要である。そのためにもこのような基礎的な知識の整理と、それを臨床的に応用していく技術を一貫して学習できたことは非常に有意義であった。               (文責:国立名古屋病院 岸田)

 村瀬病院 理学療法士 宮地先生より72歳男性の左上腕骨頸部骨折の症例が呈示された。7.28転倒にて受傷、velpeau固定施行。8.26異常可動性あり8.31airplain装具に変更。9.2外転シーネにしたが、変形増強してきたため三角巾に変更。異常可動性はあるものの理学療法開始。いわゆるcodman-exを行い、9.29現在で肩屈曲75゜(体幹前屈にて)の状態である。今後の理学療法の進め方について検討された。まずはXーp読影について名古屋大学医療短期大学部 理学療法学科 教授 猪田先生より説明がなされた。骨折に伴う骨片の変形の方向などを確認した。X-pについては理解が難しいため、普段からも積極的にXーpを読む癖を付けていきたい。症例についてはまだ骨折部の癒合が不十分な状態でいわゆる可動域訓練は行えないため、継続してcodman-exを行っていくことと、状態をみて筋の活動性を出していくことが挙げられた。また早期から行われていたようであるが、肘・手・手指関節の拘縮予防は確実に行っておきたい。またcodman-exの方法論も重要であり、GーH jtの可動性をいかに十分にしておくかが重要なため、scapulaを確実に固定し、軽く懸垂させるために重錘バンドを手首に巻き体幹を水平のまま前屈させ、十分にG-H jtを可動させる。いわゆるcodman-ex(stooping ex)のように上肢全体を振り子様に振ることはこの場合は不適切であり、状態に応じた方法を十分に考えて行う必要がある。重錘バンドについても手で握らせると余計な筋緊張が入るために手首に巻く方が良いと思われる。猪田先生よりこのような症例の一般的な治療の流れが説明されたが、最近ではvelpeau固定ではかえって変形を助長する可能性があるため、カラーアンドカフ法を行っており、早期からcodman-exを行うことで良好な成績が出せているとのことであった。上腕骨頸部骨折は老人には多くみられるため、経験する頻度も増えてくると思われるが、今回のように状態を把握した上で確実な治療が出来るようにしておきたいものである。                (文責:国立名古屋病院 岸田)

岐北総合病院 理学療法士 森井先生より、51歳女性右肘頭粉砕骨折、右股関節脱臼骨折、両膝膝蓋骨骨折の症例が呈示された。H7.7/11、traffic accsidentにて受傷、同日右膝蓋骨tension band wiring、左膝蓋骨gyps固定、7/18に右肘頭粉砕骨折ACEscrew2本.tenion band wiring、右股関節脱臼骨折にACEscrew3本.骨移植、直達牽引施行された。8/7Rt elbow Lt knee gyps除去、術後3wの8/9Lt knee full range獲得、Rt elbow flex 120゜ ext -65゜、8/14術後4wで直達牽引除去、8/19術後5wで端座位許可され8/23よりPT室にて治療を開始している。9/26現在術後11wでRt knee 120゜、術後10wでRt elbow flex140゜ ext -30゜ hip flex95゜ ER IR25゜である。 問題提示は肘の伸展制限、股関節の可動域制限が挙げられたが、時間の関係で股関節の可動域制限について検討した。股関節脱臼骨折は関節内骨折であり、解剖学的整復、強固な固定、早期運動療法が基本である。この症例の場合も臼蓋の後上方の骨折をscrewで止め、4Wの直達牽引後理学療法を開始している。この時点で理解しておくことは、骨折部位の正確な把握である。どの部位がどれくらいの範囲で骨折していたか、固定の強度はどうかという事で、荷重部との関係、ROM-exを始めるときのposition、stressのかけかた、方向が示唆されることが多い。この場合も早期は伸展位や、屈曲でも外転要素を入れる工夫により骨折部にstressをかけずに行うことが出来るし、gentleな筋力強化も同様である。さらに軟骨のremodelingを考えると、pulley等でstressを小さくし、数多く運動させることで良い方向へ進めることも重要である。また治療時、ptが訴える鼠径部の痛みはactiveでなく、passiveで出ることから腸腰筋の機能不全でcapusule等のimpingeが生じていることも考えられるため収縮を高めて確認することも必要である。屈曲制限については手術侵襲の確認、軟部組織の障害程度をDrから確認すること、capusuleについては屈曲のrangeを変えながらrotationをみていくことで情報が得られると思われる。一般に股関節はrangeを早期に獲得することが遅れることがあるが、退院後、訓練をしなくても日常生活において徐々に獲得されることが多い。これは和式の生活による使用頻度の問題が関係しているとも考えられるため、入院中に訓練時間や荷重開始後のADL指導も考慮してみることも良い。理想は荷重時期までに、full rangeと十分な筋力をつけておくことが望ましい。しかし、膝蓋骨、肘頭骨折など他の骨折があること、膝蓋骨の骨折がなくても股関節脱臼骨折の場合直達牽引を含め膝関節の拘縮を非常に作りやすい中で部分荷重2w前でknee 120゜は良い成績である。時間の関係上capusule のmobilizationなどの実技が出来ず残念であったが是非経過を報告していただきたい。最後に、この症例に限らず理論的にかつ効果的に理学療法を行う上ではDrとの綿密な情報交換が常に必要であり、そこで得られた情報をうまく治療に結びつけていくことが大切であることを再認識させられる。 (文責:国立名古屋病院 中川)