第50回整形外科リハビリテ−ション研究会報告
於:1996.4.28 国立名古屋病院

 今回は、第2回研修会として『整形外科における理学療法の考え方』をテ−マに研究会が行われた。内容は、はじめに「骨接合の理論的背景」を国立名古屋病院の岸田先生、中川先生に、次に「骨折の受傷機転と損傷組織の推察」を碧南市民病院の浅野先生、最後に「治療への展開−機能解剖の重要性−」と題し、平成医療専門学院の林先生にお願いした。
 骨接合の理論的背景では、各接合術の簡単な歴史、原理、長所短所などに説明が加えられた。詳細は資料に譲るが、大腿骨頸部内側骨折や不安定型などを除いて強固に固定されていれば、強度的に翌日からでも荷重、可動域訓練に耐えられるものが多く、術後2週ほど安静を図るのは、強度の問題より痛みの鎮静や、軟部組織の修復を考えているのが主な理由であることを理解しておきたい。臨床でも、接合術の理論や、手術手技を知っておくことは理学療法を進める上で欠かせない情報であり、習慣付けたいことである。
 骨折の受傷機転と損傷組織の推察では、外傷による受傷機転の捉え方を、症例を通して考えることができた。受傷機転を考えることは、骨折部周辺の組織の損傷を捉えることに留まらず、骨折部と離れたところの組織の損傷状態をも推察することにつながり、幅広い治療を行うことができる。例えば、コレス骨折で転倒により手を後ろについて受傷したことがわかると、手、肘、肩へと力が伝わったことが推察でき、骨折部周辺では、関節包、屈筋腱、骨間膜、関節軟骨などが損傷している可能性が考えられ、さらに周辺では肘関節の靱帯、肩関節の腱板機能、腰椎などに損傷が及んでいることが推察できる。骨折後の理学療法考えるとき、往々にして外傷の診断名(肘頭骨折、大腿骨骨幹部骨折など)にしか注意がいかず、そこのみを治療対象とすることが多い。しかし、受傷機転を考える習慣を身につけることで、局所的にも治療対象とする軟部組織が明確になり、さらに骨折部とは離れたところの組織にまで目がいくようにる。このことは、理学療法を行う上でとても大切な過程であるが、注意したいのは、この見方は、すぐ身に付くものではなく、習慣となるまでに訓練がいることであり、ここに難しさもある。 臨床への展開では、機能解剖の重要性を中心に肩関節、手関節、膝関節において症例を通して説明が加えられた。鎖骨骨折、肩鎖関節脱臼の症例ではC-Cメカニズムの理解と臼蓋上腕関節の可動性の維持を、コレス骨折の症例ではring-theoryの理解を、大腿骨幹部骨折、脛骨高原骨折の症例では膝伸展機構の理解を確認できた。しかし、これら機能解剖を臨床に結びつけることは難しく、C-Cメカニズムを理解しての肩甲骨を止めてのcodomam-ex、ring-theoryを理解しての舟状骨のmobilizatoin、伸展機構を理解しての四頭筋の効率良い収縮など、それぞれの臨床に併せて展開していくには、機能解剖の消化、受傷機転と同様に理論だったものの考え方とそれを習慣付ける訓練が必要となる。
 今回のテ−マである整形外科理学療法の考え方は、本研究会での基礎となるところである。この文中でも、ものの見方、考え方、習慣付ける訓練などの言葉を多く用いた。これは常に痛感するところで本当の意味での勉強は臨床の中で苦労しないと身に付かないことを忘れないようにしたい。
(文責:国立名古屋病院 中川)