第53回整形外科リハピリテーション研究会報告
1996.7.27 於:国立名古星病院

今回のテーマは手関節ということで、前半に平野総合病院 理学療法士 篠田先生より「手関節の機能解剖」を、後半に平成医療専門学院 理学療法学科 林先生より「手関節の機能解剖とその臨床」と題してlectureが行われた。前半は基礎的知識の整理として、手関節に関わる靱帯機能・関節運動学・舟状骨の運動学、column−theory、ring−theoryについて説明がなされた。靱帯にっいては、橈骨と舟状骨・月状骨・三角骨とを連絡する靱帯の機能の重要性を再確認した。又それは同時に治療対象の靱帯であるとも言える。関節運動学については、橈骨手根関節と手根中央関節での運動がほぽ1:1で認められるが、近位手根列には筋の付着が認められないことから、遠位手根列からの運動エネルギーが靱帯を介して近位手根列の運動を惹起させていることを確認し、舟状骨の運動学にて更にそれら手根列の運動に舟状骨の背屈時の水平化・掌屈時の直立化を確認した。更にそれら運動学の理諭的解釈として、column−theory、ring−theoryを確認した。これらの理諭は対立もしくは新旧の理論ではなく、手関節の運動が完了するまでの運動メカニズムをお互いが補強するように説明されており、この考え方は拘縮だけではなく、手根不安定症を考える上でも重要となるため、理解しておきたい。後半ではこれらの理諭を元に、実際に手根骨の触診、mobilizaionを行った。特に正確な手根骨の触診ができなければ有効な治療効果は望めない。そのためにも再度手根骨の触診を確認、実技ができたことは非常に有意義であった。手根骨が正確に触診できればmobilizationは自ずと出来てくると思われるため、正確な触診の習得が最重要課題であると再確認できた。各自常にその意識を持って、中途半端に終わらせることなく、確実な手技として獲得していきたいものである。

 総合上飯田第一病院 西山先生より25歳男性の交通事故による右大腿骨頸部外側骨折、右膝PCL損傷・右顆間隆起骨折・右脛骨外顆骨折の症例が呈示された。受傷後10日でHipに対してGamma nail試行され、PCL・顆間隆起骨折・脛骨外顆骨折については放置で大腿から足部までのcast固定を4週間行い、その後転院にてcast offの状態でリハが開始となっている。そのため受傷時や手術の内容、cast固定姿位等は不明であった。初期評価時のROMはKnee 0−10−30、ankle p−d 50−0−15であった。訓練は指示にて自動運動のみであった。6週よりPWB開始し、7週にて徒手的な治療を始めた。10週よりTENSを併用し11週現在でknee ROMが屈曲70でlag 10゜となった。検討としては膝のROM改善について行われた。出席者の意見としては、patella positionを確認し、Quadやsupra−patellar−Pouchの柔軟性を確認する必要性が挙げられた。PCL損傷・顆間隆起骨折からして関節内での出血はかなりのものと想像され、その上cast固定していることからもsupra−Patellar−Pouchの癒着は十分に考えられる。又gamma nailということでITTの影響も考慮する必要があり、更にX−p上で僅かにsaggingがあるようで、そのためにMCL・LCLの短縮状態が惹起され、それから来るROM制限も考え得るとの意見であった。今後の訓練としてはsupra−Patellar−pouch、Quadの癒着・瘢痕化を改善するような治療が必要であるとの意見であった。複合骨折であり、治療に難渋する症例ではあるが、一つ一つの原因を確実に追求し、それに対する治療を更に確実に行うことで良好な成績が生まれてくるということを再確認しておきたい。2ヶ月後の治療成績を報告してもらいたい。(文責:国立名古屋病院 岸田)