第54回整形外科リハビリテ−ション研究会
1996.9.28 於:国立名古屋病院 リハビリテ-ション科

 今回は、肩関節の機能解剖のテ−マに沿って前半を筋の走行と作用として千秋病院の浅田先生に、後半をその臨床を筋力の評価から平成医療専門学院の林先生にお願いした。筋の走行と作用では、肩周囲の筋を体幹に起始し肩甲骨に停止する筋、体幹に起始し上腕骨に停止する筋、肩甲骨に起始し上腕骨に停止する筋、肩甲骨に起始し前腕に停止する筋と4グル−プに分け、起始停止を確認すると共に、肩関節の各運動に関与する筋が復習された。また、回旋を例にとって、1st、2nd、3ndとpositionを変えることで、どの筋が働きやすいか、同じ筋でもどの部位が働きやすいかをあげて後半の導入とした。後半ではこれを受けて、筋力評価を行う上での応用、考え方が実技を交えて進められた。一般に行われている筋力検査では、G-H muscleとS-T muscleの総和としての筋力として現れる。この時、総和としては4、5の筋力があったとしてもS-T muscleを抑制する(scapulaを固定する)と3、3+とG-H muscleの筋力が低下していることがある。これはG-H muscleの筋力低下をS-T muscleで代償していることを表している。このようにscapulaの固定をうまく使うことでG-H、S-Tのどちらに筋力低下があるかを推察し治療に結びつけることができる。また、前半の応用として筋力検査では4、5と3以下でpositionが2ndから3ndに移り主動作筋が変わってしまうことがあり、この場合positionを変えず工夫することで目的とする筋力がより妥当性を持って評価する事が説明された。整形外科における理学療法では、可動域と筋力の改善が中心といってもよい。その中で、効率よく治療を進める上ではこのような評価や、考え方はとても重要であり、各自臨床で試行しながら自分なりの評価治療にできるよう心がけたい。                              (文責:国立名古屋病院 中川)

 泰玄会病院 禹先生より57歳 女性の上腕骨外科頚骨折の症例が呈示された。転倒にて受傷し、受傷後3週間desault固定し、固定除去後よりリハが開始となった。約3ヶ月間リハを行い、その後来院しなくなり、4ヶ月後に高いものをとる際の肩の外側の痛みと保持不能で再来し現在に至る。ROMはレジュメのごとくである。X-p上では受傷後に骨頭の上方移動がみられた。大きなROM制限は見られないものの、C.Cに対する治療をどうするべきかを検討した。ビデオにて症例の肩関節の運動にscapulaの動きなどが確認できた。フロアからはROM制限についてはDesault固定によるcapsule・C-H ligのshorteningが挙げられた。痛みについては、cuffの機能低下による骨頭の押し上げが肩峰下との間にimpingementを誘発することで起こっていると考えられた。cuffについては受傷時のX-pにて骨頭が上方移動されていることから、 受傷機転がおそらく転倒により手を突いて損傷されたと予想され、その時に同時にcuff injuryを起こしている可能性が高いと考えられるため、この症状がimpingementであると考えられた。これは高いところの物が保持でき無いという症状やビデオでの症例の肩関節運動におけるscapulaの過剰な上方回旋からもcuffの機能異常が予想された。治 療としてはG-H jointの可動域を拡大することと、cuffの機能を上げるためにcuff trainingを行うことが挙げられた。診断にはついていない場合でも、X-pやその他の臨床症状からcuff injuryの有無を確認する必要を感じた。lectureと内容的には合致していたため、比較的理解しやすかった。

 桑名市民病院 松本先生が担当している平成医療専門学院 3年 田中君より両側膝OAの患者について治療報告がなされた。OA診断時のROMは右0゜-0-120゜、左intactであったが、約2年半後の今回では左右共に0゜-0-100゜であり 、painが内外側裂隙後面及びpatella上方周辺にあった。X-p上ではF-T jointには硬化像程度で大きな破壊・変化はなく、P-F jointには外側亜脱臼が見られた。そこで膝後面の痛みはhamstringsの機能低下による半月板のimpinge と考え、hamstringsの機能を上げるべく、下腿内外旋を考慮したisometricにて消失したとのことであった。またpatella周辺については、亜脱臼によるgrooveの適合性の低下が上げられた。これについては、そもそも亜脱臼自体が、下腿の過外旋によるQ-angleの拡大にて引き起こされていると考えたため、hamstringsの活動性が正常化されることで外側へのベクトル低下が図られ、痛みが軽減したと考えた。約1週間の治療で正座が可能となっている。なかなかOAの診断だけではリハが開始されることは少ないが、本症例のようにconservativeに行うことで改善する症例が多く存在することを示唆している。しかし、今回の症例が成功したからといってOAすべてに治療を行うことが必ずしも有効であるというわけではなく、炎症症状や、OA変化の程度・部位等によって適応を考慮する必要があることも明記しておきたい。非常によく考慮され、優秀な成績が残せたと思われる。学生に指導する立場である我々も確実な治療ができるよう心がけたい。

 総合上飯田第一病院 西山先生より7月27日の研究会にて呈示・検討された25歳、男性、右大腿骨頚部外側骨折、右 膝PCL損傷、右顆間隆起骨折、右脛骨外顆骨折の症例の経過報告がなされた。前回の報告時で、受傷後約13週、Knee  ROMが70゜flexであった。検討していく中で、筋収縮が不十分であり、制限因子としては、patellar-pouchの癒着 、Quadの癒着・瘢痕化、MCL・LCLの癒着・短縮が挙げられた。それをもとに約2ヶ月間外来にてisometricを中心とした筋収縮をより長時間行い、patellaのmobilization、patellar-pouchに対するapproachを行った結果、現在97゜flex まで改善しているとのことであった。外来夜診での治療ではなかなか困難な面もあるとは思われるが、更なる治療に期待したい。今後とも研究会にて報告された症例については、極力こうした事後報告を行い、検討結果の正当性、治療の有効性、治療手技の確認と効果等を確認し、より確実なものとしてきたい。
(文責:国立名古屋病院 岸田)