第59回整形外科リハビリテーション研究会報告
1997.2.15 於:国立名古屋病院

 今回のlectureは膝関節屈曲制限に対する機能解剖と題して前半の基本的事項を市立伊勢総合病院の長縄先生にお願いし、後半の詳細な機能解剖について平成医療専門学院の林先生にお願いした。まず前半の機能解剖については、機能解剖として関節包・靱帯・筋・血管についての説明がなされた。特に靱帯では11個の靱帯について説明がなされた。MCL・LCL・ACL・PCLについては割と良く知られているが、その他の靱帯については聞き慣れない名前もあったかもしれない。詳細に理論を進めていく上では、必要な知識であり、まだこれ以外にも膝に関する靱帯や軟部組織は存在するため、何度も耳に入れながら理解していきたいものである。これら個々の組織の機能としての機能解剖をそれぞれに理解すると共に、更にはこれら靱帯と他の組織とのネットワークを理解することが重要であり、直接靱帯を触ることは出来ないため、如何に他の連絡する組織を有効に活用して意図する組織にストレスをかけていけるかが重要である。血管については今までのlectureではほとんどでてきていない為、理解しにくかったと思われるが、関節運動障害に関して重要な働きを有するため、是非理解しておきたい項目である。後半では実際に膝に関する重要な軟部組織を三次元的に捉えるべく深層から表層に向かって順を追って資料に書き入れることでそれぞれの軟部組織の位置関係を理解した。それぞれの名称や機能は理解していても、生体の位置関係は曖昧な部分があったため非常に有意義であったと思われる。これはただ立体的位置関係を理解するということだけに留まらず、骨折等の損傷後の修復機転に伴う周辺組織の炎症の波及・癒着に対して順序等を理解する上で非常に重要な知識である。これは膝に限らずすべての部位でいえることであり、今後このような視点で解剖を理解していく重要性が示されたと言える。実際に屍体解剖のスライドを見ながら確認できたが、スライドの関係上詳細が分かりにくかったこともあり、次回もう一度スライドを呈示していきたい。

 平野総合病院 篠田先生より44歳女性の左脛骨外顆関節内骨折(plateau骨折)・右膝PCL損傷・右半月板損傷の症例が呈示された。H8.7.27受傷、8.6左脛骨骨接合術施行(螺子固定;gyps固定)、8.9右半月板縫合術施行、8.20リハ開始、9.3gyps除去(屈曲10゜)、11.13屈曲90゜、12.4授動術施行(術中150゜)、12.6edema除去、quadの活動性up、SLR、icing等を中心に行い12.21屈曲105゜にてMCL部に痛みを訴えるようになり、1.8キシロカイン注射し屈曲120゜となったが、以降MCL部の痛み出現した。この経過での制限因子、今後の訓練内容について討論された。痛みがあるうちはこれ以上の進展は望めないと考え、痛みの原因を追究したところ、patellaを内下方へ押し下げることで痛みの減少がはかられていることから、外側の軟部組織(retinaculam、vastus lateralis等)の柔軟性の低下がMCLに対してtensionをかけているのではないかとの結論に達した。勿論それだけのストレスだけでMCLに痛みを誘発するだけのストレスは与えられないと考えると、受傷時にMCLに少なからず損傷があったと考えられた。実際にはこれ以降の報告もなされ、外側の対する治療を行った結果、痛みの消失と角度の改善が見られ、現在は140゜でintermediusに原因を残しているとのことであった。痛みの出現部位にのみとらわれることなく、様々なストレステストを行い痛みの誘発部位を限定していくことが重要であることが再確認できた。

 名古屋第2赤十字病院 加藤先生から23歳男性の左大腿骨骨幹部骨折・左下腿開放性骨折・左橈骨頭骨折・ 左上腕骨大結節骨折の症例が呈示された。H7.6.26受傷、7.11骨接合術施行(大腿・下腿共にplate固定)、7.12リハ開始、8.15左下腿皮膚潰瘍縫縮術施行、8.23大腿側抜釘・髄内釘による再接合術施行、10.26屈曲90゜にてリハ終了ENT。12.22骨移植目的にて再入院、12.25偽関節に対する骨移植施行、H8.1.7ENT、6.28再度抜釘・骨移植・髄内釘手術施行、術中manipulation施行し120゜屈曲可能であった。7.1リハ開始、8.17屈曲95゜にてENT、以降2〜3/W外来通院、現在屈曲95゜、patella上外側部に突っ張り感があるとのこと。今後の訓練について検討された。受傷から1年半以上経過しており、軟部組織の癒着・短縮が有ることは明白である。骨折によるものと、opeによるものがあり、ITT・vastusが中心であろうと思われた。現在でもまだX-p上骨癒合が不十分であり、困難な症例ではあるが、原因としては軟部組織の癒着が中心と思われる以上quad・add・ITTを中心とした筋活動を十分に出していき、柔軟性を向上させていくことが中心となってくると思われた。今後は年齢を考慮しても骨癒合を待って授動術もしくは関節形成術を行うことが予想される。現在の状態では可及的に治療を進めていくしかないと思われる。このような大腿と下腿の同時骨折はfloting kneeといわれ、予後も悪い症例が多いようであるが原因は同様なため、それに対して骨癒合を阻害しないよう注意して治療していき、授動術等の処置を行うにしろ最終的にはfull rangとなるような治療を目指していきたい。
(文責:国立名古屋病院 岸田)