第61回整形外科リハビリテーション研究会報告
於:1997.4.29 国立名吉星療鋳第1会譲室

今回の講演は、オットポック日本総代理店パシフィックサプライ(株)に御協力頂き、義士装具士でドイツマイスターでもある月城慶一先生に、大腿義足をテーマにお願いした。午前中、アメリカとドイツにおける坐骨収納型ソケット(以下IRCソケット)の歴史を背景にIRCソケットの概念がどのように生まれてきたのか説明があった。その説明を通して、坐骨支持型ソケツト(以下四辺形ソケット)とIRCソケットの各ソケットタイプの機能と特徴が示された。大腿義足のソケツト形状の変遷は、ソケットのもつ課題(1、断端のボリユームを正確に収納すること 2、断端にフィットして義足を懸垂すること 3、静的な力を伝達すること 4、動的な力を伝達すること)克服の歴吏であり、四辺形ソケットか、IRCソケットかという間題ではない。「適合の良くないIRCソケットは、適合の良い四辺形ソケットにはるかに劣る」という月城先生の言葉は、しっかり心にとめておきたいところである。最初に四辺形ソケツトの説明がされた。四辺形ソケットは、坐骨緒節を坐骨支持部で支持し、筋の運動を妨げることなく適度な圧力で断端に適合させることを考慮したソケット形状である、しかし、股関節以外に坐骨結節に支点があることで様々な問題が挙げられる。立脚期に中殿筋力は骨盤安走保持の為に高まり、ソケットが断端によって外側方向へ押しやられ、断端はソケット内で内転位を保持し切れなくなる。ソケット外側壁上縁は身体との接触を失い、坐骨緒節はその聞、坐骨支持都を支点にグリグリと前後左右に移動している。又、体重支持部がソケット後方にあり、骨盤を前傾させるモーメントが常に働く為立位姿勢のバランスが悪い。体重支持線と体重支持部が一致していない事から、切断者が立脚期に体幹を大きく義足側に側屈し、体重心をソケット上に移動しようとする特徴的な歩行のメカニズムが理解できた。四辺形ソケツトに対しIRCソケットは、坐骨結節を内側から、もしくは軟部組織が少ない場含は下方から包み込んでいる。全体の軟部組織は、水の入った風船にたとえられたハイドロスタティック理諭で支持され、スカルパ三角部の圧追を解放している。ソケットトップ面の形状は、A−P径がM−L径より大きく・坐骨結節と坐骨枝内側部、大腿骨大転子直下を挟み込み、大腿骨幹部の形状にそってフィットすることで荷重時の大腿骨内転位を保持している。又、体重支持線が股関節上にくる為、立位姿勢でのバランスが優れている事が理解できた。以上がIRCソケットの形状およぴ機能の特徴として説明された。午前中後半は、SlT−CAST採型治具により、IRCソケット採型デモンストレーションが行われた。S1T−CAST採型治具は、IRCソケットを製作するうえで、義肢装具士が長年の経験で獲得した採型テクニックを体系的に再現できる治具であり、IRCソケットのトップ面形状を決定するうえで最も重要な、正中面に対する坐骨結節内側面の角度と、前額面に為ける坐骨結節内側面と大転子直下の径(骨M−L径)と、坐骨結節直下のM−L径(軟都組織M−L径)の正確なモデル採型が可能になっている事が実際に確認できた。午後より力とモーメントの話があり、体重心と床反力の関係、各関飾のモーメントの働き方は初歩的なことではあるが、義足歩行や、ソケット形状と機能を理解する上で必要不可欠な部分と確認できた。その後、単軸膝継手と多軸膝継手の機構と機能の違いを理解する為に、物体の回転中心を求める事を図面上で行ってみた、そのうえで実際に、多軸膝モジユラーバーツ3R60と単軸膝モジユラーパーツ3R80を用いて試歩行を行った。3R60は、EBS機構と油圧シリンダーを備えた多軸膝継手で、踵接地期に瞬時に瞬間回転中心が上方に移動し、膝折れ防止機能が高まるものであった。しかもEBS機構により踵接地時に膝が15度屈曲し、ダプルニーアクションを再現していた。又、リンケージの長い多軸膝継手の副産物的長所として義足実効長が短くなる為、ゆるい登り坂、下り坂で機能を発揮していた。3R80は、円盤状の継手内に屈曲の為の油圧室と、伸展の為の油圧室をもつ単軸膝継手で、歩行速度に対応できるものであった。又イールディングニー機構の強い油圧抵抗で、階段を降りることも可能な優れた膝継手であった。最後に、「クラス分けシステム」の話があった。これは、装着者の体重と活動度(義足に対する機能的要求度)の基本的データーを用い、義肢装具士や理学療法士がモジユラーパーツを選択する際の手助けになるものであった。尚、月城先生は7月に渡独されオットボック社に戻られますが、再度最新の技術を我々研究会にて講演して頂ける事を願い、今後ドイツでの御活躍をお祈りいたします。(文責:(有)愛知プレース 佐橋)