第76回整形外科リハビリテーション研究会報告
於:1998.10.28 国立名古屋病院

 今回のlectureもテーマは、「股関節」であり特に筋力及び可動域制限がもたらす「破行」について行われた。前半に筋力・可動域についての機能解剖を平成医療学院 鵜飼先生にお願いした。骨形態学から始まり、靱帯の走行・各positionにおけるview・機能が説明された。特に靱帯については基本的に股関節伸展位にて緊張する。二足動物となったために起こった機能と思われた。そのため、股関節のpositionによって可動域が変化することを実体験した。実際の臨床場面でも、訓練時のpositioningが重要であることが示された。また、重力が及ぼす影響や、筋の作用などが説明された。股関節軸に対するpositonnにおいてどの筋が作用するかを確認する必要性を感じた。後半は実際の臨床場面においてみられるope後の破行について碧南市民病院 浅野先生にお願いした。破行の原因を挙げそれぞれに対して説明がなされた。特に今回は筋力低下・可動域制限に伴う破行が中心であるため、それらについて実際にビデオを見ながら説明がなされた。具体的な訓練内容も実際に行われていることの説明がなされた。特に股関節の場合、可動域や筋力に問題が無くても破行が生じることが報告されており、諸家により説明がなされている。骨形態学的に破綻を来している場合は原因が理解できるが、ただope後であるという症例については、説明が付きにくい。関節包を除去・処置する事による固有受容器破綻に伴う筋力ピークトルク発現時期の遅延を原因と挙げている文献もあるが、説明するには未だ不十分と言わざるを得ない。実際には、少なくとも可動域・筋力を正常な状態に復元することが我々の仕事であるため、それに対して様々な工夫を凝らした治療が必要となってくる。プーリーを使用するにしても、設置位置を変化させることで、股関節に対する動きの制限や抵抗の度合いを調節することが必要になってくる。また、前進歩行のみならず、後方や側方といった各方向を使い分けることで筋に対する活動刺激を変化させることなどが説明された。より破行を伴わない歩行が長期的には人工物の耐久性を向上させる一因にも挙げられる。また、脊柱や膝・足等他関節への影響にも関与すると考えられるため、臨床にて追求すべきテーマの一つとしていきたい。

 藤田保健衛生大学病院 作業療法科 乙川先生より24歳男性の右手完全切断の症例が呈示された。機械に挟まれての受傷であった。詳細はレジュメに譲るが、H8年に受傷し、tendon graft・手関節部を含めた骨折部のwire固定・尺骨神経の縫合・正中神経の再建が行われた。その後、H9年に抜釘及び手指に対する受動術・kapandji法・神経剥離術をそれぞれ順次施行した。結果現在、手指ROMがほぼ50゜〜90゜程度可動しており、筋についても2〜3レベルに回復してきている。問題は、可動域制限と筋力低下である。可動域制限については、固定による関節拘縮及び切断部での腱の癒着が挙げられる。これらについては、可及的にtractionをかけてのmobilization及び持続伸長が挙げられるが、持続的にかけると言うことは、今回の場合関節軟骨の脆弱化が危惧されるため、sprintに対しては適応や強度を含め注意する必要性が指摘された。また、筋力については、神経の回復が重要であるが、それ以外にもtendon graftしていることから、特にFDPの腱のexcursionに必要な距離が長掌筋のamplitudeでまかなえるかの問題が指摘された。wristが殆ど背屈出来ないことから、tenodesis actionが出来ないことからも今後物理的に困難である可能性が指摘された。状態としては落ち着いてはいるが、非常に困難な症例であり、症例数も少ないため、goalや成績がどの程度か評価しにくいが、現状としてトライ出来る部分があるため、今後の訓練の結果をもう一度研究会に還元してもらいたい。

 平野総合病院 長田先生より23歳男性の左股関節後方脱臼の症例報告がなされた。詳細はレジュメに譲るが、H10.9.3受傷、直達牽引開始。受傷後1W5Dにてリハ開始し、7W1Dの時点で座礼・しゃがみ込み・脚組・あぐら可能となっている。ROMも内・外旋以外は左右差がない状態となっている。約二ヶ月弱でこの成績は非常に優秀な成績であり、今後目標とするところである。特に直達牽引のため膝の障害が起こりやすいが、早期からのリハ・適切な治療にて早期回復が可能であるという事を示唆している。実際はなかなか早期リハをすること自体が難しい施設も多いと思われるが、これほどの成績が上げられるという事を理解させ、可及的に体質改善に努めたいものである。
(文責:国立名古屋病院 岸田)