第78回整形外科リハビリテーション研究会報告
於:1998.12.19 国立名古屋病院

 基礎的Lectureを平野総合病院 田中先生にお願いした。今回は膝関節の特に伸展機構について行われた。PF関節の適合性・patellaの運動学・大腿部の筋の配列構造・膝の前方の支持機構の構成・supla-patella pouchについてそれぞれ資料を用いて説明がなされた。特にpatellaの運動学は言葉上だけでは理解しにくいもので、各参加者も理解するのに時間を要した。三次元的に捉えるのは難しいので各自改めて確認して於いてほしい。特にfrontal rotationとcoronary rotationは通常なかなか注意しない動きであるが、ROMには重要な要素であるため確認しておきたい。これらの知識を確認した上で以下の症例を検討した。
 平野総合病院 小野先生より51歳女性の左大腿骨顆部骨折に対するplate固定後の症例が呈示された。詳細はレジュメに譲るが、ope後casting無しで3日後よりリハ開始しており、2週半で屈曲80゜・lag30゜であった。この症例について検討がなされ、提示者も行っていたことではあるが、edemaに対する弾包・ハドマー等の圧迫、setting・電気刺激による筋活動が中心に挙げられた。特に筋活動はlagが大きいため、ただのsettingのみでは無く、positionを考慮してより活動範囲の大きいpositionにてより筋活動を行わせることが重要であるとされた。また、CPMも行われていたが、これについては施設によって常備できないところもあり、また使用目的を考慮する必要があることを確認したい。検討では出ていなかったが、このような症例の場合、膝周辺にばかり気を取られないで、大腿部・股関節に関与する組織も考慮して治療を行う必要があり、股関節のpositionを考慮した治療等も考慮する必要性がある。今回の症例は、ope後casting無しで早期から行われているため、どのような結果となるかが注目される。治療自体は良く考慮されているため、数ヶ月後の報告を楽しみにしたい。
 桑名市民病院 赤尾先生より77歳女性の左大腿骨頸部外側骨折の症例が呈示された。Dynamic Martin Screw(CHSと同様)によるope後翌日よりリハ開始している。検討問題は約4週かかった膝の屈曲がより早期に獲得できないかと言うことであった。CHS後に膝関節屈曲制限が発生することはよく経験する。最終的には改善することが多いが、時間がかかることがある。Ope内容からしてITT・外側広筋に責任があることははっきりしている。特に外側広筋は骨膜下に剥離することから制限因子として重要である。また外側広筋とITTも近接しており、末梢部では連絡していることからも因子として重要である。いかに早期から両筋を活動させるかが重要であると考える。また、逆に早期から行えると言うことは、制限の無い状態から接していけるため術後翌日から側臥位にて股関節を安静にした状態で膝のみ最大屈曲を行うようにすることで膝屈曲制限を予防するといった方法も挙げられた。
 碧南市民病院 浅野先生より膝関節多発靱帯損傷の症例を通してlectureが行われた。症例は18歳男性の交通事故による右膝開放性脱臼・右膝蓋靱帯開放性断裂・右膝外側側副靭帯断裂・右後縦字靱帯断裂であった。Opeとしては二回行われているが、LCL縫合・腸脛靭帯ステープル固定・外側関節包縫合・膝蓋骨と頸骨粗面とをsoft steel wireにてループ上に伸展位で締結を行っている。術中膝屈曲は90度にて確認されていた。リハ開始して術後約12週で0-15゜-135゜となっている。X-p上patella bajaが見られた。当然steelにて膝蓋靱帯部は固定されているため、その部分は制限因子の一つに挙げられる。通常のようにpatellaよりも上方部分に原因を求めて治療を行っていくことが多い。当然評価してのことではあるが、今回の場合は膝蓋靱帯部が固定されていることを考慮することが重要となる。Steelを抜去する事で膝関節屈曲が増加すると予測される。どの程度の影響があるかは明言できないが少なからず影響があることは明かである。膝はmobilityとstabilityが大きく共存する関節であり、制限があるからと言ってどんどん屈曲を行わせることが必ずしも正しいとは言えず、その症例の状態を十分に考慮した上での治療が要求されることが再確認できた。
 榊原温泉病院 猪田先生より右足挫傷の症例が呈示された。電気のこぎりで内果後方部を切傷し、皮膚・脛骨動脈を縫合した。脛骨神経は切断されていたが縫合せず放置。リハ治療せず、術後6週半後にリハ目的にて外来受診している。当初は浮腫もあり、背屈-5゜、足趾は放散痛が強く治療が行えない状態であった。治療としては、浮腫に対する圧迫、足趾の自動運動、等尺性収縮、徒手誘導による背屈訓練が行われていた。最終的には背屈20゜程になり、歩行も疼痛無くでき仕事にも復帰できている。症例としては珍しく特に疼痛が制限因子として大きく関与していた。それに対する治療としてはよく考えられた内容を確実に行われていたと考えられる。結果としても良好な結果が出せている。平成医療専門学校 林先生より解説がなされた。足根管でのFHLと脛骨神経との一部癒着が考えられた。そのため足趾を伸展することで放散痛が出現したと考えられた。裏付けるように足根管部の柔軟性が増し、足趾運動が改善し背屈が増強すると共に放散痛が消失していった。特にこのような放散痛がある場合、PTは消極的になりがちであるが、Drレベルに原因を求めるだけではなく、今回のように軟部組織由来の放散痛も多いため、十分に考慮して治療を行っていくようにしていきたい。                 (文責:国立名古屋病院 岸田)