整形外科リハビリテーション研究会報告
於:1999.2.20 国立名古屋病院
 今回はのlectureは肩関節について、前半は社会保険四日市病院の柘植先生より肩甲骨の動きを
中心に行われた。基本的な肩関節の解剖を確認した上で、肩甲骨の運動学及び鎖骨の運動学につい
て説明がなされた。肩甲骨のリズムは通常肩甲上腕リズムとして二次元的にとらえられがちである。
しかし、肩甲胸郭関節は当然ながら円筒状の胸郭の上を平面の肩甲骨がスライドする形を取ってい
るために、三次元の動きが大きく行われている。理論的には理解していてもそれを臨床上の治療に
どう活かすかはなかなか難しいことである。特に肩甲骨を固定してのstooping exでは肩甲骨の固
定は意識しているがその時の肩甲骨のポジションが的確であるかどうか、細かく肩甲骨の動きを把握しながら行えているかといったことにはなかなか意識が回らないものである。そのためにも三次元的な肩甲骨の動きを理解する必要がある。そのためにも今回の内容は非常に重要なものであった。また、その動きとシンクロし非常に重要でありかつ理解しにくいものが鎖骨の運動学である。鎖骨の動きも十分に理解していくことが、鎖骨骨折等の超早期運動療法の方法論の基盤になってくる重要なものであり、再確認していきたいものである。後半は碧南市民病院 浅野先生より肩関節の可動域の捉え方として、可動域の評価の仕方とその落とし穴及び提案について説明がなされた。正確に可動域を計測することは非常に困難であるが、特に肩関節複合体として存在している関節運動をどの様に正確に捉えるかが問題である。外観上では同じ角度であっても内容はまるで違うことがあり得る関節である。それを様々な評価から十分に理解していくことが必要であり、そのためには上述したような基礎的知識及び様々な計測方法を駆使してより正確な評価を行っていく努力が必要である。

 碧南市民病院 加藤先生より48歳女性の右上腕骨骨幹部骨折の症例が呈示された。Ender釘のope後1週間より肘関節の運動のみでリハが開始された。固定はしていない。翌日Drにconsultしscapula固定でのstooping exを開始した。詳細はレジメに譲るがOpe後5週時点で屈曲145゜、abd125゜であった。検討項目はactiveおよびpassive ROM exまでの間に出来る訓練についてであった。検討結果としては、殆どがscapula固定してのstooping exであった。そしてその方法論としてよりリラックスさせる方法として側臥位で上肢を体側に固定してscapulaを操作する事があげられた。言葉で表現すると簡単であるが、実際に行うためにscapulaを固定する方法としてscapulaの固定位置、上肢の保持位置、筋緊張を落とす方法とその注意点が確認された。また、筋緊張に関して、ope後固定しておらず患者自ら肘屈曲位にて体幹の前にて保持していたとのことで、肘及び肩周辺の筋緊張を助長していたと考えられるため、それに対する指導もしくは三角巾の使用等を考慮する必要性についても示唆された。また、functional braceとして包帯による圧迫等も考慮する事があげられた。

 あずま整形外科 大須賀先生より36歳女性のRAでの左中指MP関節滑膜切除術、伸筋腱縫縮術施行の患者および62歳女性の左母指MP側副靭帯損傷(長掌筋腱を用いて尺側側副靭帯形成術施行)の2症例が呈示された。説明によると初めの症例はcentral slip部での伸筋腱断裂に対する縫合術後と同様に考えられる。よって縫合部を保護しながら関節運動を行うことが基本となる。先ずは伸筋腱と言うことから、wristおよびMPの伸展位保持があげられた。更にcentral slipということからDIPを屈曲することで更に緩めることが出来る。また、腱間結合の存在から他の指を屈曲位にしておくことで更に中指のみ腱を弛緩させることが出来る。そう言った基本的な安全肢位をとらせておくことでより安全に可動域訓練が出来ることが説明された。さらに、RAのボタン穴変形と言うことで、ただの断裂だけではなく、コラーゲン組織等の組織学的な変性等も考慮する必要がある場合があることが説明された。また、2例目はope後10週でMP50゜、IP55゜であり、結果としては良好であった。特に母指はCM関節での代償が大きいため、治療の時には正確に関節を固定し、狙っている部位の確実な運動を行う必要がある事があげられた。靱帯損傷に対しても同様にストレスをその方向にかけないように工夫しながら関節運動を行う必要がある。当然内側側副靭帯であるのでピンチをさせると外反ストレスがかかるため、行わせないようにするといった配慮が必要であることが説明された。               (文責:国立名古屋病院 岸田)