第83回整形外科リハビリテーション研究会報告
於:1999.5.15 国立名古屋病院

 今回のlectureは、MP及びIP関節の手指関節の形態学的特徴についてと題して、基礎をJR東海総合病病院 小島先生に、臨床応用を碧南市民病院 浅野先生にお願いした。基礎では、骨の形態学的特徴、関節の構造について詳しく説明がなされた。特に関節構造については、その特性を十分に理解しておく必要がある。関節包、筋腱のネットワーク、靱帯、その他の補助組織については理解しておきたい。特に、側副靭帯の各関節における特性は非常に大切である。MPでは屈曲位にて緊張するが、IPでは10゜から15゜屈曲位で最も緊張する。(IPの場合はどの角度でもある程度一定のtenionを保つとも言われている。)これは、臨床においては拘縮の治療に有用なだけでなく、急性期の固定肢位に関する考え方にも大きな意味を持つ。その他の組織としては、掌側板、副靱帯、手綱靱帯が挙げられた。掌側板は線維軟骨であり、過伸展防止の役割を果たしている。副靱帯は関節の両側に存在し、掌側板に付く。手綱靱帯はPIPに存在し、掌側板と両側にて強固に結合しており、過伸展防止の役割を果たしている。これらの項目を再度確認し、ROM制限の原因を追及するよう努力したい。後半は臨床として、これらの組織が各肢位でどう影響し、どう機能しているのかを考えることの重要性が述べられた。前半の基礎的な知識を持って実際に指を観察しながら各組織の特徴的変化を確認した。腱の滑走や特徴的な動きを自分の指と他人の指で比較しながら確認した(内容はレジュメ参考)。普段何気なく行っている行為も詳細に観察するとその動きの中に出現している特徴的かつ重要な現象が確認できる。それら現象の原理を理解することが臨床的応用につながることを理解できた。手指はとかく敬遠しがちな分野ではあるが、他関節同様に詳細な機能解剖を十分に理解して臨床に望みたいものである。

 JR東海総合病院 小島先生から67歳 男性の右小指基節骨骨折の症例が呈示された。受傷後1wで経皮pinning施行、包帯のみで特に固定はせずope後6wで抜釘し、リハ開始し、現在に至る。所見としては、IP関節の伸展制限が著名に存在している。ROM制限の原因と今後の治療について検討がなされた。意見としては他関節の影響を受けないことからIP関節自体の単関節性のものとしてIP側副靭帯・手綱靱帯・斜支靭帯の短縮、循環障害によるedemaが挙げられた。平成医療専門学院 林先生の説明によると、X-pから骨のatrophyが強く、ADL上使用頻度が少ないことが予測された。そのため、現在のように訓練後何とか屈曲できると言ったレベルでなく、先ずはactiveで充分に屈曲できるだけのROMを先に確保させ、そこから伸展に対してのアプローチを加えていくと言った意見が出された。具体的なアプローチとして、テーピングを使用した方法がデモされた。テーピングをWrist、手指屈曲位にて背側でテーピングし、患者には手関節背屈運動をactiveで行わせることで、テープを介して手指の屈曲を他動的ROM訓練できるようにした(tennodesis actionの応用)。伸展制限に対しては、スプリント療法について愛知ブレース 篠田先生から形状、強度、使用上の注意点等が説明された。持続的伸張が効果的であるとの意見であった。また、テーピングを使い、伸展制限が除去された状態でのactive assistiveな運動として、手指伸展運動時にIP関節に対して伸展補助できるようにしたテーピングの方法がデモされた。intrinsicを介助するように、MP・IP関節伸展位にて、テーピングの先を二股に縦割りさせたY字状のテーピングの先端部分をそれぞれ内外側から中節骨に巻き付け、IP関節軸の背側を通して手指背側に張り付ける。患者にはMP関節屈曲運動を行わせることで、IP関節の伸展が介助できるようにした。これら一連のテーピングテクニックは他関節に対しても有効であると考えられるため、一考の価値があると思われた。如何にactiveを上手く使って有効な訓練を行わせるかが重要であると再確認された。

 岐阜リハビリテーション病院 小野先生より51歳 女性 左大腿骨顆部骨折の症例報告がなされた。本症例は以前研究会にて症例検討された症例であり、当時膝屈曲90゜程度であったが、今回受動術が施行され良好な成績が出されたため報告がなされた。H11.2.12openにて受動術が施行された。術中角度は130゜であった。翌日より訓練を硬膜外麻酔を使用しながら施行し、約1週間で正座が可能となり、約3週後退院となった。術中所見にて、内側のpatella pouch付近の癒着が強かったことからいかに早期の筋収縮が重要であるかを再確認できた。当然受動術の必要性が無くなるように早期リハを確実なものとしていくことが急務であることは言うまでもないが、このような貴重な経験からそのような詳細な制限因子を追求・確認し、今後に役立てていくことが現在のPTとしての重要な使命であることを認識し、真摯に受け止めていく必要がある。
(文責:国立名古屋病院 岸田)