第84回整形外科リハビリテーション研究会報告
於:1999.6.12 国立名古屋病院

 今回のテーマは膝の外側支持機構である。前半が基礎編として東海産業医療団 中央病院 近藤先生に、機能障害について平成医療専門学院 林先生にそれぞれお願いした。基礎編では、先ず解剖学的構成要素及びそれらに対する機能解剖学的な説明がなされた。腸脛靱帯については静的安定機構としての役割が、大腿二頭筋については、付着部の詳細な形態が、膝窩筋については、特に腱部分が膝関節後外側の安定化機構としての役割が、LCLについては、半月板との結合が無いことが、外側広筋については、解剖学的位置関係が、外側膝蓋支帯については、外側広筋・大腿直筋・腸脛靭帯の各々の線維と連結があることが説明された。更に外側支持機構の破綻による異常動揺性の分類について説明がなされた。T型からX型まであり、各々に複合損傷における動揺性を表現している。これらをベースに後半では各組織のより詳細な機能とその破綻による機能障害についての説明がなされた。大きく膝を伸展すると弛緩する組織と屈曲すると弛緩する組織とに分け、各々について実際の屍体解剖所見を参照しながら進められた。各々の機能解剖学的特徴や臨床上の症状について説明がなされた。また、それら知識のみではなく、実際にそれらの組織を確実に触診する技術が要求された。特に臨床上では触診できない限り有効な治療はできないと考えられるため、再度確認しておきたいものである。更には、文献的に神経及びレセプター分布や動揺性の実験等の報告が紹介された。これらを元に外側支持機構について再度臨床上で確認していきたいものである。

 市立伊勢総合病院 古川先生より66歳女性の右大腿骨顆上骨折・下腿骨折(脛骨開放性骨折)の症例が呈示された。受傷後2.5週直達牽引施行し、plate固定施行。SCREWの固定性が悪かった。受傷後5.5週、ope後3週にてリハ開始となっている。約一ヶ月治療し、現在膝屈曲85度、伸展−10度、足関節背屈5度となっている。膝の屈曲制限の原因と今後の治療方針について検討された。X-p上顆上部の整復が不十分であり、顆部が後方へおじぎして、更に内側に大きく変移しているため、中枢骨片の骨皮質が顆部の中央付近にあるといった状態であった。検討の結果は、制限因子は広筋群・支帯・ITT・patellapouch等があがった。また、X-p上からすでに関節面が屈曲位にて変移しているため、少なくとも見かけ上よりは関節としては屈曲位になっていることが挙げられた。それらのことから屈曲に関しては限界に近いのではないかとの意見であった。可及的に大腿四頭筋の活動量を上げることや、patellaの動きを出していくことなどが挙げられた。今後の方針については、特にX-pの結果から、荷重時期を慎重に考慮していく必要性が挙げられた。骨皮質が連続性に欠けており更に顆部の突起部にて脛骨関節面と接触してしまうことによる関節破壊が危惧された。筋力を可及的に上げていくことは言うまでもないが、今後は加重に苦慮する事が示唆された。

 碧南市民病院 加藤先生より27歳男性の右肩鎖関節脱臼の症例が呈示された。受傷後右肩挫傷という診断で安静のみとし、受傷後1週後に松葉杖開始。その後右肩疼痛増強しX-pにて肩鎖関節脱臼診断され、受傷後2週にてphemister法施行している。C-C ligには問題がなかった。術後5日よりリハ開始。術後3週は鎖骨バンド固定予定との事であった。検討としては、肩鎖関節脱臼時に肩峰と鎖骨遠位端が理解する理由及び訓練の注意点であった。理解する原因としては、C-Cが問題ないとのことなので、肩胛骨が下方へ上肢の重さにより下制するが、同時に烏口突起を中心にC-Cの作用で下方回旋及び外転が発生し離開のベクトルが働くと考えられた。これは、同時に鎖骨の後方脱臼を誘発するものであり、C-C ligがintactであるにも関わらずV度に見えるのはこれが理由と考えられる。治療としては、肩胛骨を止めてのstooping exが挙げられた。今回の症例では、初期での診断に問題があったと考えられる。また、phemister法とphemister変法では、A-C ligの処置に違いがあるため、結果に差が出てくる可能性がある。特にA-C ligは非常に強固な靱帯であり、強固に縫合したにもかかわらず最終的に軽度脱臼気味になる症例を経験することがある。文献的には、早期から90度までの運動を許可するとあるが、これらのことを考慮し、絶対的に安静・固定が必要な部位と、運動・可動性の維持が必要な部位とを確実に考慮した理学療法が必要になってくる。そのためにも、肩胛骨を確実に固定したstooping exを早期から行えるような臨床を目指していきたいものである。                   (文責:国立名古屋病院 岸田)