第87回整形外科リハビリテーション研究会報告
1999.11.20 於:国立名古屋病院

 今回の表面解剖は足関節の外在筋を中心に行った。前方でTA・EHL・EDLを、後方でTP・FHL・FDLをそれぞれ走行を確認しつつpalpateした。前方では表層で脛骨骨幹部から外側にかけてTAが在り、その外側縁から更に外側にEDLをそれぞれ収縮させて確認しながらpalpateした。TAは比較的容易に確認できるものの、EDLはなかなか明確に触診できないようだった。EDLはTAを抑制しつつ単独に収縮させることがなかなか困難であることからなかなか特定しにくいようであった。EHLはそれらの深層に位置するが、比較的単独での収縮が容易であるため腓骨に向かって斜めに走る筋が触診できる。一方後方では、TPが内果のすぐ後下方を走っており腱が浮き上がってくるために比較的容易に確認できる。舟状骨を内果に最短距離で接近させるように運動させることで可能である。FHLはアキレス腱のすぐ前方で内果の約2横指下方にある踵骨載距突起をpulleyとしてその下方を通過し足底へと向かっている。筋腹の方向は腓骨に向かって走行しているため、斜めに触診できるが最深層に位置しているため確認しにくい。各々が解剖学的に明確であることから、症例を重ねていくことと、健常者にて十分に確認しておくことが重要である。

 下腿骨折に対するplate固定について松阪中央総合病院 熊谷先生にlectureをお願いした。下腿骨折の特徴、plate固定法の長所・短所、適応、手術進入路、手術手技、後療法を中心に行われた。骨折に対してはkuntscherが行われることが多いが、骨折の状態等様々な条件によりplate等の方法が選択される。plateでも特に今回症例検討で使用されたdynamic compression plateについて実際のplateを使って理論が説明された。opeでの理論的背景を十分に理解しておくことは特に超早期リハを行っていく上で重要である。必要以上に怖がらずに自信を持って行うためには必要不可欠な内容である。また、下腿骨折は骨癒合がしにくく、遷延治癒が発生しやすい部位である。整形外科の骨折治療の原則に沿って確実なopeが必要になる。gypsの有無や期間については様々な意見があると思われるが、我々にとってはgyps中からの訓練が重要であることは言うまでもない。そのための基礎知識として前半に行ったpalpationが重要になってくる。最後に下腿と前腕に多く発生するとされているcompartment syndromeについて説明がなされた。下腿については4つのcompartmentに分かれており、筋活動によりある程度予測がつけられるため、治療に際しては頭の片隅に置いておく必要があると思われた。

 大垣市民病院 木野先生より37歳 男性の右下腿骨開放骨折(Gustilo type VA)の症例が呈示された。詳細はレジュメに譲るが、opeについては他院で行われているため詳細はope記事でしか解らないが、受傷後開放創のみ縫合し、直達牽引施行している。受傷後2W1Dに骨接合術(骨移植)施行。術後6WよりPWB開始。術後10Wに転院となりリハを担当するようになったとのこと。その時点ではDF −20°、であった。今回DF−10°程まで改善したが、踵骨の内反もみられ歩行障害もみられていた。これに対してROM制限の原因とともに治療について検討がなされた。原因としてはTP・FHL・FDLを中心としたflexorの癒着、短縮があげられた。更には骨間膜やMCL等も関与していることが予測された。また圧痛があり、腫れもあることからcompartment syndromeの可能性も示唆された。訓練としてはそれら組織に対する治療があげられた。その際の考え方として、まずX-p上OA changeがあること、腓骨骨折が合併していないことからtibio−talarに過度のストレスがかかったことが予想される。また背屈制限が存在する状態で歩行をさせることで軟骨に対する過度のストレスを惹起することが予測される。当然軟骨は経過から不動の時間が長いことからも破壊が進んでいることがあげられ、注意が必要である。歩行に際しては補高を行い軸を前方に落とす工夫が必要であるとの意見が出された。当然骨折部での癒着が最大の原因であることは異論のないところであるため、いかに筋収縮を確実に行わせるかが課題となった。本症例からもいかにgyps時期での確実な選択的筋収縮が重要であるかが再確認できた。

 平野総合病院 横山先生より11歳 女性の右脛骨遠位端骨折(Salter-Harris U型)の症例が呈示された。詳細はレジュメに譲るが腰麻下に整復しgyps固定する。その後受傷後6Wでcast off後のリハ開始している。ROMとしては経過とともに改善してきているが、ankle PF時に母趾が伸展してきていた。VTRにてその状態を確認した。検討でもあがったが、最深層部にあり母趾に影響を及ぼす伸筋ということで、原因は明らかにEHLの癒着・短縮であった。ここで問題となったのはこの場合のみならず癒着か短縮かを可及的に区別する必要性である。癒着ではその部位よりも近位の関節のpositionでの変化は無いが、遠位関節のpositionには大きく左右される。また、短縮ではactiveにて腱の滑走があるが、癒着ではその部位よりも遠位では腱の滑走は理論上無い。そういったことで可及的に区別していく必要性がある。それにより治療法が変わってくるためである。今回の場合治療を行っていくことで改善がみられていることから、癒着が完全に完成されていなかったと考えられる。完全に完成している場合は、剥離術の適応となる。また、11歳ということで、成長期にある組織では見られることであるが軟部組織に限らず、制限因子となっている組織が経時的に見ると改善してくるといった症例を経験することがある。今回もそういった要素が含まれている可能性は十分に考えられた。意見として出されたもので、通常と違うものとしては、従来ならばcasting中の早期リハが挙げられるところではあるが、今回は骨端線損傷ということで、成長障害を誘発する危険性が考えられるため、早期のリハを行わなかったものと考えられるという点である。早期リハの重要性は枚挙にいとまがないが、盲目的に行ってよいわけではなく、各々の症例を深く考慮した上で行う必要性があるということを再認識させられた。        (文責:国立名古屋病院 岸田)