第88回整形外科リハビリテーション研究会報告
於:1999.12.11 国立名古屋病院

 今回のpalpationは肩関節周辺の特にrotator cuffを中心に行われた。先ず筋をpalpationする前にlandmarkとなる大・小結節、結節間溝、coracoid、acromio、A-C jointは少なくとも正確にpalpationする必要がある。骨ははっきりしているが結構出来ているつもりで間違っていたりすることがあるため、再度確認する必要がある。それらを基準にして筋を探していく。cuffが4つの筋から成ることは周知の事実であるが、関節軸を中心に考え、更に剖検結果より筋腱の幅から考えて一つの筋を一塊りとして考えるには無理があるといった観点から、各々を成分に分けて考える必要性が示され、更に各々の特徴的なpositionが示された。棘上筋は前後成分、棘下筋及び肩甲下筋は上下成分に分けて考える必要性が示された。この考え方はcuffに限ったことでは無く、すべての筋に対して関節軸との位置関係から考えるようにしていきたい。特にcuffはscapulaとの位置関係も関与するため正確な位置関係をイメージしながら行う必要がある。肩関節が何度ではなく、G-H jointが何度であるか考える必要性がある。あくまでも関節軸との関係であることを明記したい。その後は各筋を可及的により単独に収縮させうるpositionを理解しておく必要がある。特に内旋では肩甲下筋と大円筋と大胸筋と広背筋が絡んでおり、外旋では棘下筋と小円筋が絡んでいる。positonの変化と走行の変化を確実に理解しておきたい。大胸筋がより内旋モーメントを発生できるのは1st positionであり、2ndになるほど上腕骨長軸に平行となり水平内転へとベクトルが変化する。逆に小円筋や肩甲下筋は1stよりも2nd・3rdでより上腕骨長軸に対して直角になり内旋モーメントを発生しやすくなる。同様に棘下筋と小円筋も1stでは棘下筋の上部線維が中心となり、2ndにいくに従って下部線維から小円筋へと移行していく。そういったdynamicな考え方ができるようにしていきたいものである。

 lectureは腱板断裂に対する腱縫合術について蒲郡市民病院の金井先生にお願いした。腱縫合にも様々な種類が存在するが、今回は特にMcLaughlin法とFascia Patch法について説明がなされた。McLaughlin法は断裂した腱の断端を大結節に開けた穴に固定するものであり、言えば修復術である。一方Fascia Patch法は他の組織(今回は大腿筋膜張筋の筋膜)を使用し固定するもので、言えば形成術である。McLaughlin法は短縮が強いと不可能となるが、可能であればより早期からのリハが可能であり、筋力も十分に期待できる。しかし、短縮の程度により内転制限の出現が危惧される。Fascia Patch法の方は短縮が強い場合に適応されるが、腱と骨との間に組織が媒体として存在するために、リハが比較して遅れることや、所謂lagの出現が危惧される。lectureでは外転装具が使用され、その後三角枕を徐々に小さくしていく方法が紹介されていた。当然縫合部にはストレスがかからないように考慮する必要がある。拘縮予防の観点から考えると、棘状筋を含めた上方部の断裂が圧倒的に多いが、その場合passiveに挙上することは腱を弛緩させるだけでありさほど危険な操作ではない。G-H jointを充分に維持しておけば大部分の拘縮は予防できる。そのためより早期から外転装具上からのpassiveの挙上を行うことで比較的ROM維持は可能である。問題は、ROMで言えば内転であり、更に重要なものが筋力である。当然挙上に固定をしていることからも、内転制限の出現が危惧されるが、ope自体ですでにある程度短縮位になっている可能性もあるため、考慮が必要である。この際に、見かけ上の下垂位に翻弄されないようにする必要がある。必ずscapulaの位置を確認する必要がある。短縮位のまま下垂している場合は、scapulaが下方回旋している場合がある。見落とさないようにしたい。また、筋力については、特に三角枕で徐々に下垂位へと移行するときが重要である。組織的修復を基準に経時的に下垂位に持っていく場合があるが、下垂位から挙上できるだけの筋力が付いてから行わないと、結局挙上制限を作ってしまい、拘縮と筋力低下を混在させてしまう危険性がある。十分に考慮し、組織的修復のみではなく、筋力も含めた総合的判断の下にpositionを変化させていく必要性を再度確認しておきたい。

 岐北総合病院 森井先生より64歳男性の左肩関節脱臼、腱板断裂、腋窩神経損傷の症例が呈示された。詳細はレジュメに譲るが、受傷後すぐ整復はされているものの、そのまま固定・保存にてリハ開始されている。その後受傷後約10週後にMcLaughlin法施行され、ope後2週からリハ再開している。ROMは160゜とかなりできているが、activeでは挙上不可である。本症例の場合は様々なことを考慮する必要がある。ROMについては、lecture同様、可及的に挙上制限がないよう、受傷後から行う必要ある。しかし、脱臼していることから、前下方のcapsuleの断裂が考えられ、その部位の安静をはかる必要があるため、当初はstoopingで、特に水平内転及び内旋位を考慮して行う必要がある。opeまでに可及的にROM制限を作らないようにしておく必要がある。ope後は、0-position固定のため、そこからpassiveでの挙上にてROMを維持しておく必要がある。この場合、通常の場合とは異なり、挙上筋力を考慮しながら下垂させていくことは不可能であるため、組織的修復に合わせて経時的に下垂させていくしかない。そのため、将来的にも挙上制限の出現が強く危惧されるため、ROMの維持は確実に行っていく必要がある。筋力については、腋窩神経麻痺が存在することから、可及的に電気刺激を使用するなどの筋力改善の治療が必要になってくる。Drからは神経縫合か関節固定術を予定しているとのこと。リハとしては、可及的な麻痺に対するアプローチを行うと共に、他の筋を使っての代償動作獲得を模索していく必要がある。今回は神経麻痺が合併する非常に予後に難渋する症例であったが、少なくとも腱板断裂後の縫合術に対するリハの流れについては確認しておきたい。
文責(国立名古屋病院 岸田)