第91回整形外科リハビリテーション研究会報告
於:2000.03.18 国立名古屋病院

 今回のテーマは「肘頭骨折」で、palpationを平成医療専門学院 林先生に、整形外科的治療法を泰玄会病院 下川先生にそれぞれお願いした。palpationはROM制限に大きく関与する筋を中心に行われた。volar側ではbicepsよりも重要と思われる深層部に位置するbrachialisを、dorsal側ではtricepsを重点的に行った。brachialisを正確にpalpateするために、先ずはbicepsをlong・short headに分けて確実に理解しておくことが必要である。言えば、bicepsをpalpate出来れば、それ以外がbrachialisだと言える。また、より確実にbrachialisをpalpateするためには、bicepsをいかにrelaxationさせるかが重要である。MMT等でもsupinationがbiceps、neutralがbrachioradialis、pronationがbrachialisと教わることがあるが、そう言った画一的なことはあり得ない。全てのpositionで全てが活動する。その活動量を可及的にcontrolして、より単独に近い状態にしていく工夫が必要となる。そのための手段として、bicepsの活動量を可及的に抑制しbrachialisを強調するために、pronationしながら肘をflexする事でそれを可能にする。Tricepsも同様で、long・medial・lateral headを分ける必要がある。Longについては、可能であればshoulder ext positionをとることで除外できる。medial・lateralについては、まず解剖学的特徴を確認しておく必要がある。文字からは内・外側となってはいるが、実際はmedialが深層にあり、その上にlateralとlongがある。よってmedialが非常に重要となる。Volarでのbrachialisの働きをdorsalで行っていると考えられる。しかし、同様に単関節筋である以上分けることは事実上不可能である。そのためより活動性に差を持たせるために、肘屈曲位のstart positionにおいて、より外反を加えることでmedialを、内反を加えることでよりlateralを活性させていく工夫が必要である。特に骨折後のROM制限因子としてbrachialis・triceps medial headが非常に重要であることは言うまでもなく、早期よりこれらの筋を如何に確実に収縮させていけるかがその後の成績に大きく関与することを認識し、確実なものにしていきたい。
 整形外科的治療法についてはzuggurtungs osteosyntesis(tension band wiring法)・screwを中心に進められた。screwについては頻度が少なく経験もないため詳細は他紙に譲るが、固定性が良ければ問題なく早期よりリハが行えるものと思われる。zug法についても同様で固定性が良好であれば、早期からリハ開始できる。しかし早期から行うためにはzug法の原理を理解しておく必要がある。モデルを使用して説明がなされたが、骨折部に対して回転トルクがかかることで関節面に圧迫力が掛かり骨癒合を促進するものである。屈曲位でのactiveは圧迫力に変換されるが、伸展位でのactiveは離開力として働く可能性が強い。ope後は基本的にはcastingは行わず、シーネ固定にて、リハ時には除去して行える。癒着を充分に予防することで早期にROMを獲得できる。

 大桑病院 水谷先生より35歳 女性の右肘頭骨折の症例が呈示された。opeはチタンボルト固定であった。詳細はレジュメに譲るが、ope後3週でリハ開始となり、0-15゜-100゜であったものがope後15Wにて0-5゜-130゜となっている。屈曲はほぼ左右差がない状態であるも、extは5゜制限がある。健側は5゜程度は過伸展するとのことであった。検討の結果、伸展制限は前方capsule・brachialisのshortningが挙げられた。成績はよいのであるが、左右差を無くすよう更なる努力を期待するものである。

 八尾総合病院 OT 島崎先生より43歳男性の左肘頭骨折の症例が呈示された。詳細はレジュメに譲るが、zug法施行後2W程度でリハ開始されている。当初より1kgの重錘にて従重力的に屈曲を行い、6W後より体重負荷による屈曲を行っていたが、改善せずmanipuration施行。その後もリハを行うも現在の状態で0-20゜-90゜である。X-p上でも経時的にMCL部分に異所性骨化が存在していた。検討の結果、先ずはfirst choiceから少し過剰負荷が掛かりすぎていたのではないかとのことであった。もう少し筋活動を充分に出していくことも大切であると考えられた。今回は他院にて行われた後に転院してきており、拘縮が発生した後に担当していることもありfirst choiceについては言及できない。今後のリハとしては、異所性骨化を考慮しても筋活動を充分に出していくことと、mildに持続伸張を加えていくことが挙げられたが、限界があることも否めず、その場合は手術が考慮される。しかし手術にてROMが獲得できるという単純なものではなく、筋性の制限因子は除去しておく必要がある。capsuleやligamentはopeでrelease可能ではあるが、筋の短縮については延長術をしない限り対応できない。そのためにも術前から筋の要素を可及的に除外できるよう充分な筋活動を行い、柔軟性を獲得しておく必要があることが指摘された。異所性骨化は生体の正常な生理学的組織反応であり、その存在よりもその生成の過程に関与した治療者に問題があるということを再度認識し、適切な治療が行えるようにしていきたいものである。
(文責:国立名古屋病院 岸田)