第92回整形外科リハビリテーション研究会報告
於:2000.4.15 国立名古屋病院

 今回のテーマは大腿骨頸部骨折ということで、clinical palpationは平成医療専門学院 林先生が、整形外科治療法については国立名古屋病院 岸田が担当した。clinical palpationはITTを中心に行われた。ITTは大腿筋膜張筋から移行すると認識していた人が多いと思われるが、前方を大腿筋膜張筋、後方を大殿筋表層部から移行しており、更に中央では中殿筋の深層線維と連絡している。そのため前後からの動的制御を受けている。これらは肩関節の三角筋に類似した形態をとっていることから、股三角筋と呼ばれることもある。膝関節付近では深層の部分と外側retinaculumとが密に連結している。更にはVOLの起始部にもなっている。文献的には膝関節屈曲90゜辺りがtensionのpeakとなっていることが多いが、剖検結果から全体としては、100゜を境に全体的に弛緩してくる。それまでは屈曲するにつれてITTの上方線維が、伸展すると共に下方線維が緊張してくる。幅の広い線維であるだけに機能分離していることは想像に難くない。しかし、大腿部ではcondyleの存在を考慮する必要がある。condyleの形状からもITTの滑りが矢状面での動きのみではなく、前額面での動きも考慮する必要があるかと考える。三次元的に考えると、condyleに乗り上げている状態がどの様になっているのかを今後確認する必要があるかと思われる。palpationについては、比較的視覚的にも容易に観察できることもあり、さほど困難ではなかったが、股関節のpositonによる変化を実際の臨床でどこまで追求できるかが課題である。

 整形外科的治療法については、内側・外側を含めて全般的に行われた。代表的な物として、THA・人工骨頭置換術(monopolar・bipolar)・CHS・γ−nail(¥−nail・IMHS)・Ender nail・cannulated cancellous hip screw(multiple pinning)について説明がなされた。特に進入法を確認し、どの組織が侵襲されているのかを確認した。実際には侵襲された軟部固有組織を如何に柔軟性を保ちつつ炎症の沈静化を図るかが重要であり、opeのimplant自体はそれぞれが確実な方法で適切に施行されていればさほど問題ではない。各々の特徴的な部分を理解して、それに対して適切に対処していくことが重要である。例えば、THA・人工骨頭の脱臼、CHS・Enderでの膝関節ROM制限、cancellous screw・pinningでの免荷期間等である。これらは全て股関節疾患であり、ope後に膝関節障害が残存するのは好ましくない。適切な時期に有効な治療を施行していくことで、そのような事は予防できうる。今回はimplantの実物を準備できたため、実際に手に取り大きさや形、強度等を確認できた。これらの経験から同様のope後に対する対応が臨床上変化していけることを望みたい。

 岐阜市民病院 内藤先生から73歳 男性の右大腿骨頸部外側骨折に対するEnder nailを施行した症例が呈示された。opeについては通常のEnder法とは違い、三本とも骨頭内で三方向に分散するのではなく、三本の内一本を転子部で止めて、予め穴のあいている先端に螺子を通して固定するといった病院独自の方法で行われていた。これはdistal先端を締結しておくことで膝での逸脱を防止する効果を狙った物である。経過の詳細はレジュメに譲るが、問題点はROM時のcoxalgia、膝のROM制限及びpainである。X-p上骨頭内の二本のpinがほぼ同一方向を向いており、更に頸部の短縮がみられたものの、pinと骨頭先端のcortexとの距離はさほど変化がなかった。また膝内側condyleからender pinの先端が関節内に逸脱しているように思われた。これらから推察すると、先ずは骨折部の固定性が不良で、更に化骨形成が見られておらず、短縮していることから骨癒合が不十分の間々加重しておりそれが骨頭先端部ではなく、膝condyleの方で関節内に穿孔してしまっているのではないかと思われた。そのためROM時に骨折部が動くことでpainを訴えていると考えられた。膝についてもpatella内下方にpainを訴えていることや、ROM制限が残存していることから、Enderの先端が穿孔して軟部固有組織を深部から刺激しているものと考えられた。PTとして対処出来ることは、先ずDrにconsultしてpinの穿孔の有無、頸部の短縮及び骨癒合不全の有無を確認し、このまま荷重していくことの是非、ROMを進めることの是非を確認することであると考えられた。PTを進めていく過程において、少なくともopeが有効に行われていることが前提になってくる。多少の優劣は仕方のないことではあるが、根本的な部分についてはPTの力が及ばない領域が存在することは確かである。しかし、今回のようにPTがX-p等から得られる情報を確実に収集する能力を高めていくことは重要なテーマである。Drにconsultする際にどれだけの情報を持って望むかで方向性も変わってくる事を明記しておきたい。                     (文責:国立名古屋病院 岸田)