第94回整形外科リハビリテーション研究会報告
於:2000.6.17 国立名古屋病院
※テーマ:「膝関節」
※LECTURE 
@clinical palpation:retinaculum(PF lig;PT lig) 平成医療専門学院  林 典雄 先生
Aorthopedic surgery:創外固定             国立名古屋病院  岸田 敏嗣 先生
※症例
右膝関節開放性脱臼骨折(創外固定)・その他多発骨折    国立名古屋病院  西村 英亮 先生

palpationはretinaculumについて行われた。特に内外側に存在するpetello−femoral ligamant、patello−tibial ligamentの詳細な解剖所見を確認し、実際に触診した。PF ligは横走線維とも言われ、特に内側PF ligについてはpatellaの外側脱臼後の手術時に単に内側縫縮するだけでなく、この靱帯をしっかりと縫縮しないと再脱臼の危険率が上がるとの報告がある。膝関節運動においてpatellaはgrooveの中で移動することは言うまでもないが、それと同時にpatella自体も動きを伴っている。前額面上では外顆方向(外側)へ回旋(frontal rotation)し、矢状面上では下方へおじぎし、水平面では内側方向へ回旋(coronary rotation)する。こういったpatella自体の動きが阻害されてもROM制限や痛みの発生に関与すると考えられる。これらの動きを制御する要素の一つとしてこれらの靱帯が重要と考えられる。実際にはpatellaを顆部の曲率に沿って持ち上げることで容易に触診できる。個人差・variantによっては困難な場合もあり、どちらか一方のみしか確認できない人もあった。臨床上膝関節に障害がある場合、この靱帯を狙った治療を行うことも重要な選択肢の一つと考えられた。

Lectureは創外固定について行われた。IlizarovとOrthofixを中心に創外固定の利点・biomechanicalなデータ・注意点等が説明された。Ilizarovに代表されるようなフルリング式の固定は様々な方向に対応できることもあり、最近では主に小児の脚延長術や変形矯正術等に用いられることが多いようである。Orthofixに代表される一方向片側固定の場合は機器が小さく固定性は良好のため外傷の固定に使用されることが多いようである。最近ではprimaryに創外固定を選択することも増えてきているようであり、術後のリハに関与する機会が今後も増加することが考えられる。通常の内固定材との違いは外観のみではない。組織的に言うと骨折部の展開がない、もしくは直接骨膜や髄膜に大きな損傷を起こさないことで、骨癒合が期待できる。リハとしてはそれよりもcastingが行われないことの方が大きく関与することと考えられる。castingは一見ROM障害の一因子と思われがちではあるが、適切な期間(1〜2週)であればかえってedema防止の効果としては大きいと考えられる。逆にすぐに関節運動が施行できる創外固定の方がedemaを防止するための工夫が必要になり、充分な管理・リハがなされないまま安静時期を過ごすと、ROM制限が強くなるといった現症が危惧される。また、pinを経皮的に刺入しているため、皮膚由来の痛みが強く出現し、結果皮膚障害が発生したり、RSDに移行する危険性を含んでいる。特に創外固定の適応である関節周辺骨折では、結果的に関節固定が行われていることから、その状態で如何にして有効な治療を行うかを充分に考慮して治療する必要がある。

 症例は31歳 男性で現在受症後10ヶ月弱経過しており、膝屈曲65゜、伸展−10゜弱で、筋力は充分にあり、lagはさほど存在していなかった。今後の治療についての検討がなされたが、先ずX-pからMCL・ACL・PCL複合損傷が疑われ、alignment異常が見られた。状態からすると広範な軟部固有組織の癒着が考えられた。屈曲していくと後方関節部が衝突する可能性があるため、持続伸張する際には関節中心に対して回転運動が行われるように長軸方向へのtraction・内旋・脛骨近位部の後方滑りを誘発するような3点牽引を行う方がよいといった意見が出された。また筋活動を挙げるために電気刺激を併用したり、癒着に対して超音波・バイブラ等物理療法の応用が挙げられた。最終的には関節受動術・形成術が考慮されるものの、靱帯の状態を考えると、ROM改善の代償としてinstabilityの出現が示唆された。軟部固有組織の癒着を逆説的に考えると、機能的代償の結果とも考えられる。つまりは靱帯性支持組織が欠損しているための生体反応として発生していると考えられ、この癒着のおかげで歩行に対しても安定性が得られている可能性が示唆された。それらを考慮すると、ROMのみに着目しないで関節機能として広く見た場合に盲目的に受動術を行うことが適応となるかが問題となった。年齢も若いためADL上制限が強ければ考慮するであろうが、充分なinformed consentが必要であろうとの意見であった。     (文責:国立名古屋病院 岸田 敏嗣)