第99回整形外科リハビリテーション研究会報告第99回整形外科リハビリテーション研究会報告
於:2000.11.6国立名古屋病院

テーマ『股関節』
※lecture
@clinical palpation:梨状筋および大腿方形筋  平成医療専門学院 林 典雄 先生
A股関節疾患患者の関節モーメント       蒲郡市民病院   金井 章 先生
※lecture
@右変形性股関節症(THR施行)       桑名市民病院   松本 正知 先生

palpationは梨状筋、大腿方形筋に対し行った。梨状筋は仙骨前面から大転子上縁に走行し、大腿方形筋は坐骨結節外縁から大転子下部及び転子間稜に走行している。人体解剖所見によると、一般に坐骨神経は87.5%が梨状筋の下方から抜け、大腿方形筋など他の深層外旋六筋の上を乗り越えていく。破格として、12%が梨状筋の間を貫通し、0.5%が梨状筋の上方を通過する。ただし、こういった破格であっても生まれつき梨状筋症候群を有しているわけではなく、何かの原因があるためそれを契機として発症したと考える方が適切である。梨状筋は外旋六筋の最上部に位置するため、触診では大転子やや上方(頭方)から後方に向け触れにいく。梨状筋は厚みがあるので殿筋群の下でコロコロと触れることが出来る。股関節外旋運動をさせ、収縮を確認する。大腿方形筋は走行を考え、大転子後方に手を置き梨状筋同様に股関節外旋運動を行わせ収縮を感じる。梨状筋は軽度屈曲位で、大腿方形筋は伸展位にてリズミカルに収縮させることにより、SLRが改善する事も確認した。これは両筋の筋緊張が低下し坐骨神経への圧迫が低下するためである。

股関節疾患の歩行分析にはいる前に、ビデオ「Normal
Walking」にて正常歩行を確認した。歩行周期と歩行に関連する用語について再確認した。また、歩行における力のモーメント(内部モーメント、外部モーメント)や筋の収縮様式を確認した。股関節疾患患者では、股関節の各運動方向へのモーメントや床反力の波形などからOAと正常歩行との違いを比較し、さらにTHA後にはどうなるのかの説明があった。一般に、臨床では目でみて歩行分析を行うことが多く、力学モデルに置き換えた解析はなじみの少ない参加者も多かったと思われるが、大変重要な内容であるので、1つ1つのデータをもう一度見直し、股関節疾患における歩行の特徴を理解する必要があると考えられた。

症例は右変形性股関節症にてTHAを施行された70歳の女性であった。詳細はレジュメに譲るが、検討事項は歩容改善の可能性についてである。本症例は、特に誘因なく股関節痛が出現したため入院となった。X-p所見上、診断名には上がっていないが大腿骨頸部骨折が認められた。痛みはこの骨折が原因であると考えられた。歩容を悪くしている歩行時の股関節伸展制限については、改善が困難との見解もあった。その理由は、元々この症例は関節を固定した状態にて歩行していたと思われ(そのためOAでも痛みがなかった)、そういう意味でこの歩容は受傷前の元通りの歩容といえるからである。その反面、関節が動く状態になったため、歩容が改善しても良いのではないかとの考え方もあり、その際の原因としては、筋力は問題なくても、筋出力の出方(peak
torqe発生時期など)や収縮スピードの問題などが挙げられた。本症例の歩容がもし改善するなら、その目安としてデーゼ(arthrodesis
関節固定術)をTHAにした場合が参考になるが、筋萎縮や固有受容器の消失などのため、回復するまでに3〜5年を有すとのことであり、長期的視野で対応する必要があることが示唆された。

(文責:平成医療専門学院 鵜飼建志)