第108回整形外科リハビリテーション研究会 報告
2001.11.17 於:名古屋中小企業振興会館

テーマ:肘関節(上腕骨顆上・顆部骨折)
clinical palpation:肘関節周辺   碧南市民病院  浅野 昭裕 先生
lecture:肘周辺骨折   桑名市民病院  松本 正知 先生
症例呈示:肘MCL損傷・尺骨後方脱臼   桑名市民病院  実習生 権上 和彦 君
     左上腕骨顆部骨折   碧南市民病院  加藤 康吉 先生
     右上腕骨顆部骨折   碧南市民病院  浅野 昭裕 先生

 palpataionは先ず肘関節のX-pを見た後での正面・側面の絵を各自で描いてみた。なかなか詳細に書くのは難しく、骨のイメージを持って治療することは非常に重要であり、全ての関節について同様にイメージを正確に持てるようにしていきたいものである。触診については内外顆、肘頭、腓骨頭をランドマークにして、筋を中心に行われた。どのような肢位にすると各部の筋収縮が特化できるかを筋電図で確認した結果を基に説明された。中でも上腕筋を触診するときに、通常二頭筋長頭を弛緩させるために肩関節屈曲位で行うとされているが、今回はactiveにて伸展させ、その状態で前腕回内位にて肘屈曲させるといった方法が紹介された。相反抑制を応用した方法としておもしろい方法であった。これに限らず、様々な方法で各筋線維を特化して収縮させる肢位を研究していくことが良好な成績を出す上で不可欠であると再認識させられた。まだ、内側頭を特化させる肢位が今一つ無いため、各自確認してよりよい方法を探し出していくよう更なる努力を期待したい。

 lectureは先ず骨関節の形態の説明、X-pの読み方などが説明された。その後顆上骨折の分類について説明がなされた。Salter分類、AO分類が図と共に説明された。学会ではAO分類が主流となってきているとのことであり、全てを記憶する必要はないが、その分類法の存在を知り、内容を確認できるような状態にしておくことは必要であると思われた。また、手術方法についても説明がなされた。当然症例ごとに選択され、Drによっても違うためどの方法が最適であるかは言及できないが、様々な方法が存在するということは確固たる主流となる方法論は未だ存在しないと考えられた。しかし、術後のリハを考慮して、骨折の治療基本である早期運動療法のための強固な固定というのは根底に流れる考え方としては共通している。肘関節は術後ROM制限の残存が多いとされており、今後のリハの在り方が問われる関節であることが伺われた。軟部組織に対する知識、技術は当然ではあるが、術後のストレスをtherapistがどのようにcontrolしながら治療できるかがポイントになると考えられる。早期であればあるほどその考え方が重要になってくる。これらの知識を各自で整理して、今後の治療に活用していきたいものである。

肘伸展位で手を着いて受傷した、MCL付着部剥離、尺骨後方脱臼の症例が呈示された。OpeはAOLのみ結節縫合し、POL、capsuleはそのまま放置した状態で前腕回外位、肘屈曲60゜にてcastingされていた。固定は4週から5週にてcast offし、内外反抑制装具を考慮して、スポーツ復帰は半年後との方針であった。呈示された時点ではまだcasting中のため、その状態で可能な治療を行っていた。現在の治療内容の確認やcast off後の治療が検討された。現在の内容についてほぼ問題がないとのことであった。今後予測されるROM制限に対する可及的予防がなされていると考えられた。意見としては、筋の収縮に対して筋自体の柔軟性を目的とするものであれば、可及的に筋線維を選択的に収縮することを目的に他の筋を抑制する必要があるとは思われるが、筋収縮を介してcapsuleや靱帯の癒着を予防する、soft tissue mobilizationを目的としているならば、逆に抑制しない方が伝達力としては強くなるとのことで、対象組織によて、目的によって使い分ける必要性が認識させられた。off後については、逆にPOLを放置したことがROM制限にどの程度影響があるのかに興味があり、今後の経過を追っていただきたい。今回はX-pが無かったため詳細は解らないが、尺骨後方脱臼、伸展位受傷といった観点から橈骨頭、腕橈関節、橈尺関節といった部位についても考慮する必要性が挙げられた。受傷機転等を考えることが必要になってくると思われる。通常とは多少違った固定になっていると思われるが、固定肢位の背景を考えることも必要である。

 報告として11歳、12歳の上腕骨顆部骨折症例が報告呈示された。各々AO分類13-C1.3、13-C2.2であり、pinning、plate、screwによる固定がなされていた。両症例共に整復が不十分な状態で、上腕骨alignmentが後方にshiftしており、X-p上ある程度制限は予測される状態であったが、治療を進めていった結果、2〜3ヶ月後の時点で、X-p上骨alignmentに変化が見られ、後方へshiftしていた末梢骨片がより正常な位置に向かって前方にshiftしていた。当然ROMについても改善が見られた。今回の症例が成長期であったことが大きな要因であったと予測されるが、このような骨alignmentの変化が細胞レベルで可能であれば、ROMに対する目標や方法、経過観察期間に考慮する必要性が示唆された。年齢の限界等今後明らかにしておくべき項目はあるが、少なくとも実際にalignmentの変化が存在する事実を認識することが必要である。今後はこの変化が自然治癒的に発生するものなのか、ROM訓練やADL等での肘屈伸運動ストレスがトリガーになっているのか、明らかにしていかなければならないと思われた。今後は各自特に成長期の症例を担当する機会があれば、このようなことを念頭に置いて治療をしていきたい。
                                               (文責:国立療養所鈴鹿病院 岸田)