116回整形外科リハビリテーション研究会報告

2002.09.28 於:名古屋法律経済専門学校

lecture   膝関節周辺の疼痛の見方   吉田整形外科病院   林 典雄 先生
     変形性膝関節症について
   碧南市民病院  藤田 里美 先生
                   高浜市民病院  藤井 亜美 先生
症例   変形性膝関節症       吉田整形外科病院   林 典雄 先生


 lectureは先ず変形性膝関節症について行われた。X-p上の変化や、FTAの計測など基礎的な分類、状態の説明がなされた。OAは本邦では内側型が多いが、欧米では外側型の方が多いなど、地域性もある。内側型(O脚)については骨・関節alignmentが重要になってくる。前額面前額面上の膝関節内反変形ではないことを理解しておく必要がある。必ず3次元的変形の理解をして当たらなければならない。特に下腿および足部のalignment、動きは重要である。その上で解剖学的に半月板、側副靱帯、鵞足、周辺靱帯、周辺軟部組織の理解が必要である。また、立位姿勢や歩行の分析を行う目も養う必要がある。治療においては、手術として骨切り、人工関節、insoleが説明された。骨切りについては種々の方法が説明されたが、適応年齢が比較的若い症例となる。関節面を触るのではなく、重心線を制御することが主目的であることを理解する。人工関節については関節そのものを置換する。そのためROMについては基本的には制限因子は周辺の軟部組織となる。元来存在していた軟部組織の破綻に加え、手術侵襲で損傷された組織を加えて考慮していく。そのため手術手技のある程度の理解が必要になってくる。insoleについては外側ウェッジ、内側ウェッジ、アーチサポート等存在するが、3次元的alignmentを理解した上で、最適なものを選んで処方していく必要がある。以上の病体、評価、治療について説明がなされた。
 疼痛の見方としては特に圧痛を中心に行われた。圧痛部位が関節裂隙といった曖昧なものではなく、組織を詳細に分けて行くことが説明された。組織的には内側側副靱帯、滑膜および関節包、半月板およびcoronary ligament、fatpad、鵞足が挙げられた。より単独に分類するためにそれぞれ部位を変えていく。靱帯については当然関節包、半月板と重なるため裂隙では判別が困難となるため、大腿骨および頸骨の付着部付近において確認する。滑膜および関節包については半月板と連絡しているが、少なくともMCLの前縁、膝蓋靱帯の後縁の間の裂隙中央を狙って行う。半月板およびcoronary ligについては脛骨関節面上縁からcoronary ligと半月板の付着する部位を狙って行う。半月板由来の痛みは多くの場合が外側縁のcoronary ligとの付着部あたりが主因であろうという見解から行われているとのことであった。鵞足については完全に関節とは離れているため比較的容易ではあるが、構成筋をそれぞれに分けてストレッチ等刺激を加えて鑑別することも指導された。より詳細な疼痛原因を診断することで運動療法の効果をより高いものにしていけると思われた。各自実際の症例に立ち返り確認していきたい。

 症例は変形性関節症が呈示された。gradeWで内側関節裂隙は無く、FTAも大きく一般的にはTKA適応であったが、鏡視下半月板切除術を施工した症例であった。術後ROM制限と疼痛が増悪してしまった症例であった。理学療法を施工していく中で、X-p上内側の関節裂隙が再獲得され、疼痛も軽減傾向にはあった。歩容も改善傾向にあった。検討としては何故X-p上の変化が起こったのか、どういった治療を選択していくか等がなされたが、こういった症例の経験が無くフロアからの意見は出なかった。治療としては主に鏡視下手術で侵襲を受けたfatpadを中心とした組織に対して行われた。insoleも処方して治療を行った結果、半月板とcoronary ligを由来とする疼痛の発生が手術にてある程度排除された状態で、手術後の疼痛を除去することで疼痛管理が改善して荷重線が移動された結果裂隙が再獲得されたのではないかという推論にいたった。しかし、限界は存在するため、今後疼痛が完全に管理されてTKAも施工せずこのままADLが改善するとは言い難く、可及的に行っても困難な場合は手術適応となる症例であった。この症例でもそうであったように、手術侵襲が少ないというイメージである関節鏡操作が実は侵襲が大きく、疼痛やROM制限の重要な制限因子を発生させてしまうことを理解しておく必要がある。また、それに対する理学療法手技も重要であり、技術を磨く必要がある。特にOAの保存療法については再度詳細な評価を行い、治療を施工して成績を上げていきたい。 


文責:国立療養所鈴鹿病院 岸田 敏嗣