119回整形外科リハビリテーション研究会報告

2002.12.8 於:名古屋法律経済専門学校

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整形リハ研では、常に機能解剖、病態生理などを理論背景に、症例を通して理学療法の考え方を提示してきた。今回は、「膝関節運動中に生じる痛みの解釈と対策」としてシンポジウム形式で、座長(吉田整形外科 林)、シンポジスト(碧南市民病院 浅野、桑名市民病院 松本、掖済会病院 坂野、吉田整形外科 赤羽根、国立鈴鹿病院 岸田)により討論が進められた。痛みは、治療における大切な情報源であり、この情報をいかに解釈していくか、ある刺激に対しての痛みの増減、出現部位の変化を捉えてどう解釈できるかが重要になる。以下に、拘縮と痛みを時間経過で分類した捉え方をもとに各時期で内容をまとめてみた。

◇ 3つのphaseの考え方

この研究会では、考え方の重要な因子として時間の捉え方を強調してきた。受傷から拘縮が始まる24週を境に、それまでを腫脹・痛みのコントロールを中心とした時期、24週は癒着防止を考える時期、そして、それ以降のできた拘縮に対する治療の時期である。林は、この時期を3つのphase(時期)に分け説明している。

@ early phase                         (早期)

A adhesive phase                   (癒着期)

B contractive phase                (拘縮期)

early phaseEP:早期)は、受傷後から2週で、まだ癒着の生じない早期である。この時期は、損傷による炎症に手術侵襲による炎症も加わり、病理的には炎症期から修復初期にあたる。損傷組織の安静、腫脹及び痛みのコントロールを図りながら可及的に進めることになる。浅野は、皮膚に由来する疼痛として皮膚の伸張性の低下、皮下での癒着が痛みとして十分可動域制限になることを指摘し、皮膚の可動性維持が重要であるとしている。創部が過敏になっているこの時期は、極力皮膚に張力がかからないようにすることが大切である。adhesive phaseAP:癒着期)は、2週から4週で、周囲組織との癒着(adhesion)・軟部組織自体の伸張性の低下(shortening)が始まる重要な時期である。この時期は、浮腫(edema)対策を徹底して継続するとともに癒着・伸張性の低下が考えられる組織には固定性を考慮したうえで可能な限り動きを出させる必要がある。具体的には、筋自体の収縮性(amplitude)、靱帯・関節包などの伸張性、皮膚・筋・靱帯・腱の滑走(excursion)を筋収縮によって維持すること、また固定性により筋活動が制限されるときは、他動的伸張・滑走を加えて維持を図ることになる。収縮させたい筋、伸張・滑走を出したい軟部組織を特定し選択的な治療が必要となる。
contractive phaseCP:拘縮期)は、4週以降で拘縮ができあがる、もしくはできあがった時期である。この時期は、拘縮を取りに(剥ぎに)いくこと、言い換えると、もう一度組織を壊して可動域を獲得しようとすることになる。したがって、組織の反応としての炎症(発赤、発熱、腫脹、痛み)、癒着という過程を伴うこと、また再獲得した可動域は筋の活動が不十分であり、rebound(戻り現象)が生じることに注意する必要がある。拘縮が考えられる組織を可能な限り触診し、緊張を確認しながら治療することが大切で、安易な伸張は拘縮をそのままにその周囲で不安定性を作ることにもつながる。短縮した筋は自動運動・伸張などを使い活動性を高めて筋節の数を増やし、靱帯・関節包は直接伸張を加え、また獲得した可動域はreboundに注意し、治療回数、頻度、安静を考慮する。拘縮を取りたいのか、他で代償して可動域を獲得したいのか目的を明確にした上で、選択的治療を大切な情報源となる痛みを解釈しながら治療にあたる必要がある。

(文責:東名古屋リハ学院 中川)