121回整形外科リハビリテーション研究会報告

2003.2.15 於:名古屋法律経済専門学校

lecture   肩関節・肘関節脱臼       藤田保健衛生大学病院  中図 健 先生
     肘関節後方関節包ストレッチ
   吉田整形外科病院     林 典雄 先生
症例   肩関節脱臼骨折         藤田保健衛生大学病院  竹岡 千里 先生
     肘関節脱臼骨折
          

 lectureは先ず肩関節脱臼についての基本的内容が説明された。脱臼においては基本的には外傷性と非外傷性が存在する。原因により考え方が異なってくることもあり、左右差や他関節の可動性、既往歴やスポーツ歴等を確認して軟部組織の状態を把握することが重要となる。外傷性の場合は明らかな外傷歴があるが、非外傷性の場合は必ずしも既往は必要ない。外傷性の場合を反復性脱臼、非外傷性のものを習慣性脱臼と最近では分類している。脱臼の場合はただ関節がはずれるというだけではなく、合併症も存在する。多くは骨折、筋腱断裂、神経麻痺等である。それら合併症の有無によってもその後の治療方針に違いが出てくる。外傷性脱臼においても再脱臼率についても20代以下が多く30%程度あるといわれているとのこと。活動性の問題や固定期間にも左右される。脱臼時の軟部組織の状態によってcapsular detachment typeとcapsular tear typeがあり、前者の方が再脱臼の危険性が高い。その他観血的療法についても説明がなされた。肘関節についても脱臼の受症機転が説明された。合併症については成人では単独脱臼の方が多いとされ、頻度としては尺骨鈎状突起・橈骨頭骨折の頻度が高いとされ、小児は脱臼骨折が大半を占めるとされ、上腕骨内上顆骨折・外顆骨折の頻度が多いとされていると説明された。また外側尺骨(尺側の場合もある)側副靱帯の断裂による後外側回旋不安定症の説明もなされた。尺骨の外側の安定性を考慮すると何らかの形で靱帯様組織による安定化機構が存在すると考えられると思われた。
  palpationについては今回は治療の要素が中心となった。肘関節脱臼・骨折後の屈曲制限に対する治療として後方関節包のストレッチが行われているが、再度詳細に解剖をみてみると、後方関節包の緊張には特徴があって、両サイドの関節包が先に緊張を起こし、最終的に中心部の緊張があがり全体として緊張すると行った機能解剖学が解剖写真にて視覚的に説明された。よって両サイドに対する選択的治療が必要となってくる。そのため各方向を考慮した、ベクトルを考えながらの関節運動が説明され実際に行ってみた。出席者の中ではなかなかイメージが付きにくかったようであるが、今回の場合に限らずすべての治療において詳細なベクトルを考慮したより正確な方向を考慮した治療が求められており、実際の臨床においても常に念頭に置いて治療していきたい。
 22歳 男性の左肩関節脱臼骨折の症例が呈示された。階段から転落して受症。バストバンドのち三角巾固定を行い、受症後約7週後に作業療法開始。研究会当日が初日であったため、詳細な検査ができていなかったが、屈曲85度、外転60度、1st外旋10度、内旋70度、2nd外旋・内旋0度、3rd外旋60度、内旋0度であった。痛みは上腕骨後外側にあった。詳細はレジュメに譲るが、まだ治療を開始する前の状態で、これからどう治療していくかが検討課題であった。X-p上では前下方に脱臼し大結節の骨折がみられた。現在では骨癒合はみられた。フロアからはまだpassが入りきっていないこと、腱板機能が不十分であること、関節包の損傷後による癒着等が挙げられた。脱臼から考えると前下方の関節包に対するアプローチが挙げられるが、時期的なことなどを考慮すると下方や後方といった組織の柔軟性低下に伴う骨頭の変異が考えられ、それがさらに前下方の組織に対するストレスの増悪につながっていると考えられた。骨折についても腱板による剥離骨折ではなく、臼蓋との直達による骨折と考える方が良いとのことであった。具体的には軟部組織に対する治療を行うことでG-Hの動きを出していくことが肝要であるとのことであった。肩胛骨との関係などを考慮して詳細な評価を行いながら治療のターゲットを絞っていくことが重要であると思われた。脱臼という状況に惑わされずに現状の関節機能を評価するように心がけていく必要がある。

 28歳 男性の左肘関節脱臼、左橈骨遠位部粉砕骨折、左尺骨骨幹部骨折の症例が呈示された。創外固定および骨移植plate固定が行われていた。肘屈曲120度、伸展-15度、前腕回内60度、回外15度、手関節背屈30度、掌屈15度であった。今後のリハについて検討された。肘関節の屈伸については制限が少なく、maxでの痛みがそれぞれ後面、内側上顆付近と前面の突っ張り感があることから深部軟部組織(筋や靱帯、関節包)と考えられ、現在と同様に丁寧に組織を狙っていくことで今後も順調に改善していくものと考えられた。特に大きな問題にはならないと思われたが、どちらかというと前腕の回外、手関節の可動性の方が問題と思われた。手関節についてはplateの位置が関節にかかっているようでそれも制限因子の一つと思われたが、それ以外に手根骨のalignmentが崩れていることが原因と考えられた。回外制限については骨幹膜も大きく関与していると考えられた。手関節や前腕についてはかなり難渋すると予測されるが、可及的に軟部組織の柔軟性を獲得するよう治療を進めていくことが肝要であると考えられた。ADL上回外や手関節の可動域制限は大きな阻害因子ではあるが、needと治療効果判定を適時行い治療を進めることも必要となってくる。治療に難渋する症例の場合のゴール設定は非常に困難なテーマではあるが、我々も十分に考慮して行く必要があることを感じた。

                      文責:国立療養所鈴鹿病院 岸田 敏嗣