123回整形外科リハビリテーション研究会報告

2003.4.19 於:名古屋法律経済専門学校

lecture   肩関節不安定症について     吉田整形外科病院   田中 幸彦  先生
     肩関節周辺palpation    
  吉田整形外科病院   林 典雄 先生
症例   肩関節不安定症(関節鏡手術)  岐阜大学付属病院   田中 和彦  先生
     肩関節脱臼           松阪中央総合病院   熊谷 匡晃  先生
          

 lectureは先ず肩関節周辺のpalpationを行った。肩鎖関節、肩峰、大結節、小結節、棘上筋について行われた。新人が多く参加していたため、基礎的な内容を確認した。骨のランドマークを触診するだけでも意外と難しく、できると思っていても正確に触診できない場合もある。棘上筋はイメージよりも大きな筋であり、意外と幅広く僧帽筋の下で触診できる。軽く外転して収縮を確認した。また、内旋、外旋にて緊張する線維が異なることをイメージする必要がある。簡単に言うと内旋でより後方線維が、外旋でより前方線維が緊張する。これは棘上筋にかかわらず、関節運動軸をまたいで存在する筋や靱帯、その他の軟部組織は運動軸との位置関係で緊張度を変化させることが評価、治療において非常に重要であることを確認できた。肩関節不安定症についてのlectureでは定義、考え方の変遷といった基本的なことから、治療法に至るまで説明がなされた。用語も様々に存在し、混乱のもとになっていることも理解できた。用語の理解もさることながら、目の前の症例の症状を詳細に理解することが肝要である。ただ”ゆるい”というだけでは治療に結びつかない。どの方向に、どのような条件で緩く、それがどう変化するのかを診ていくことが重要である。例えば下方への緩さもneutralで引き下げるのと、内旋で引き下げるのと、外旋で引き下げるので原因部位が異なってくる。それらを解剖学的に理解しておくことが重要である。
 
  25歳 男性 loose shoulderの症例が呈示された。既往歴に交通事故があったが、肩関節に対する受症の有無は不明。その後肩関節疼痛出現し、肩関節亜脱臼と診断された。abd80度で亜脱臼あり、passiveでのROMは問題がなかった。筋力は2〜3と低かった。円背で両肩が前方に下がり、顎が前に出た状態であった。手術は関節鏡視下にプローベで軟部組織を焼く方法が取られた。手術内容をビデオにて確認できたので、初めての人でもイメージが比較的つきやすかったのではないか。焼く方法も色々とあるようだが、詳細は文献に譲る。今後の手術後の治療について検討された。関節の固定性は比較的確保されているとは思われるが、姿勢や肩胛骨のalignmentを考えると関節の問題よりも肩胛骨のalignmentを改善させて、肩胛骨の動きを十分に出すこと、筋力についても肩甲胸郭関節における筋力が重要で、臼蓋上腕関節にも大いに影響を与えると考えられた。基本的には臼蓋上腕関節における柔軟性はもともとが緩い状態なので、opeにおける影響と固定による影響が考えられるが、opeの状態からopenに比べて早期に行えることなどから、逆に過剰な動きを出さないように局所安静を保ちながら動かすことが重要になる。ウエイトを肩甲骨の動きに置いてもいいのではないかと思われた。また、ただ緩いだけでは病院を受診することは少ないと考えられ、痛みが出現するかどうかがキーポイントになるのではないかと考えられた。その場合、痛みの由来を評価しておくことが重要で、必ずしも”緩い”ことが痛みと直接関係があるかは疑問である。姿勢等から胸郭出口症候群を筆頭とした牽引型神経症状の方が中心であったとも考えられる。その場合、術後は関節運動もさることながら胸郭のalignmentに注意しておく必要があるのではないかとの意見が出された。症例を純粋に現象、症状で捉えて評価していくことは非常に難しいことではあるが、心しておきたいことである。

 42歳 女性 左腱板断裂、左上腕二頭筋長頭腱断裂、左肩OAの症例が呈示された。約16年前にglenoid osteotomy施行。昨年疼痛出現し、ADL支障あることから今回ope施行。今回は腱板深層に断裂見られたため、pull outにて骨に固定した。術後は外転装具装着。経時的に外転角度を下げていき、現在屈曲140度、外転90度、水平内転30度、内外旋40度であった。今後の治療について検討された。まず、注目すべき事は、今回の手術前のROMである。屈曲120度、外転90度と制限が残存していることである。結果的に術中所見では腱板深層断裂であり、縫合をしているのであるが、これはあくまでも軟部組織の機能再建であり、ROM制限に対しては特に効果のあるものではない。また、痛みが出現したことが今回の手術のきっかけであるが、腱板断裂のみが痛みの原因であったのかは再考する必要があると思われた。ROM制限の原因因子を探ることで痛みの原因が見えてくる可能性が示唆された。しかし、今回はすでに手術を施行されているため、対処する必要はある。当然腱板縫合から考えて内転制限、水平内転、結帯等が制限されることが容易に想像できる。上方部分の軟部組織に対して柔軟性を出す治療が必要と思われる。しかし、術前から残存していた制限因子は未だ存在しているため、対処する部位としては広範になると思われる。少なくとも現時点で術前の角度を超えていることから、今後は術前の制限因子に対する治療が中心となってくることが予想される。いわゆる拘縮肩の治療になってくると考えられた。可及的に術前にROM改善の治療を施行することができればまた違った進め方も考えられると思われた。原因を詳細に分類して整理することが重要である。”手術”に惑わされないようにすることも必要であることが理解できた。
                                       (文責:国立療養所鈴鹿病院 岸田 敏嗣)