124回整形外科リハビリテーション研究会報告

2003.5.17 於:名古屋法律経済専門学校

lecture   ACLの基礎           国立療養所鈴鹿病院   岸田 敏嗣 先生
     ACLの機能解剖と鏡視下再建術
  浜田整形外科・内科クリニック 阿部 友和 先生
症例   両側ACL損傷(関節鏡手術)   浜田整形外科・内科クリニック 阿部 友和 先生     右膝蓋靱帯断裂         平針かとう整形外科   岡西 尚人 先生
          

 lectureは人数の関係でpalpationができないため、今回から代わりに基礎的運動学・機能解剖学を行うこととなった。今回はACL損傷ということで、ACLを中心とした膝関節の機能解剖・運動学について説明がなされた。CDソフトによる視覚的にバーチャル関節運動による説明が行われた。正確かどうかはさておき、より視覚的に実感できたと思われる。特に関節運動に伴う靱帯の誘導やその時に発生する靱帯の捻れなど比較的詳細な機能解剖が視覚的にイメージできた。靱帯については損傷後に膝関節の不安定性が惹起されることは周知の事実であることから、関節の安定性に重要であるといったことが挙げられるが、同様に忘れてならないのは、関節のいわゆる正常な関節運動の誘導が行われていることである。大腿骨と脛骨の詳細な運動を規定しているのが靱帯であることも理解しておきたい。再建術後は関節の不安定性が改善したかという事のみではなく、関節運動がより正常に誘導されているかといったことにも着目して治療をする必要がある。それは術後に必発すると言われるOA変化に大きく関与すると考えられる。軟部組織のバランスが関節運動には非常に重要であることを理解しておきたい。
 詳細なlectureはACLの機能解剖と鏡視下再建術について行われた。先ずはACLの靱帯の解剖学的、機能解剖学的特徴について説明なされた。強度については30度屈曲位で最大ストレスを示すことが挙げられ、術後の治療のリスク管理に重要なデータである。ACL損傷後に出現する不安定性についても、前方不安定性というのが有名であるが、もう少し詳細に前外側回旋不安定症(Antero-Lateral Rotatory Instability:Dynamic ALRI)と捉えられていることについて説明がなされた。ACLは前方移動と内旋において強いストレスがかかる。そういった事実から前方不安定症のみではなく回旋不安定性についても十分考慮する必要があることが説明された。再建術については、素材について自家腱、人工靱帯、同種腱、hybridと様々な物が使用されていることが説明された。自家腱についても膝蓋腱、半腱様筋、腸脛靱帯等があり、それぞれに一長一短があることも説明された。再建については脛骨、大腿骨の骨孔の位置がIsometoric pointにあるかどうかで予後が左右されることが説明された。また、術後リハビリテーションにおいても早期リハが叫ばれているが、リスク管理と積極的治療とのバランスが非常に重要で、再建靱帯の安定性を妨げないようにしながら、かつROM、筋力といった相反するストレスを加えていく難しさが説明された。靱帯損傷術後のリハはそのバランスを維持しながらも高いレベルでの結果が要求されるため、非常に注意を要することが実感できた。ACLには筋(特に内側広筋とハムストリングス)との神経的な連絡、関節覚のレセプターといった重要な器官でもあることを理解しておく必要があることが提示された。これらは最後のパフォーマンスに大きく関与するため、そういったアプローチについても要求されることを理解しておきたい。

 29歳 男性(サッカーインストラクター)の両側ACL損傷が呈示された。今回は左が問題として挙げられたが、左はH13年に膝蓋腱Bone To Boneでopeされており、今回胡座位から立ち上がれない、伸ばした後に膝が曲がらないといった愁訴があった。ROMは5度過伸展、屈曲125度、MMT4レベルであった。テーピング後は愁訴が軽減するとのことであった。このlockingを除去する方法論と、ope適応があるのかどうかなどについて検討された。意見としては、lockingが半月板由来なのかどうか、主眼をどこに置くかが問題となった。半月板損傷が存在することは十分に考えられるが、症状においてopeすることで消失するかどうかは何とも言えない。少なくともROM制限が残存していること、筋収縮が不十分で膝のみならず下肢全体に影響が出ており、歩容においても骨盤に至るまで破行が見られる。先ずは筋力というよりも筋活動を上げていくこと、柔軟性の獲得によるROMの改善とそれに伴う関節運動の再現性の確保、が挙げられた。過伸展も見られることから靱帯のtensionも多少looseになっていることも考えられた。またBTBの問題点として膝蓋腱部の疼痛が挙げられたが、可動性と柔軟性を十分に維持することで疼痛はコントロールできるということで、経験者からも説明があった。手術自体が他院で行われたもので、正確な情報が不十分な状態で今回の愁訴を治療していることで困難な部分もある。当然手術情報は重要で、かつ術後早期からのコントロール下での治療が重要である。今回のような軟部組織の柔軟性については初期治療が重要であるため、今回の症例から学ぶことは多いと思われた。今回はdisuse、二次的因子に対する治療が多分に含まれていることがより難渋にしていると考えられた。

 22歳 男性(アメリカンフットボール選手)の右膝蓋腱断裂の症例が呈示された。既往歴に左ACL損傷、右膝蓋靱帯1/4切除が挙げられていた。今回は膝蓋骨の付着部付近で完全断裂しており、両側膝蓋支帯も断裂していた。opeは縫合し、更に膝蓋骨と脛骨粗面に骨孔をあけ、半腱様筋を通し靱帯周辺を補強しソフトワイヤにて固定した。現在は両側支柱付長下肢装具で0度〜45度の制限付きで低周波を行っているとのこと。現在ope後3週2日経過していた。今後のリスクを考慮した理学療法について検討された。今回の症例ではまず考慮することは今回の受症にも大きく関与していると考えられるが、膝蓋靱帯自体の強度が数年前から低下していた可能性が高く、変成していたと考えられた。今回の断裂もそれがベースにあると考えた場合、縫合した靱帯のみでは強度に不安があり、補強しているとはいえ通常よりも注意を要すると考えらえた。通常の場合でも膝屈曲は伸展機構の柔軟性を十分に獲得した状態で行う必要があるため、筋緊張の抑制、膝蓋骨を下方へ誘導しながらの屈曲、activeにて屈曲させることでハムストリングスの活動からくる相反神経抑制を活用することが挙げられた。また、ワイヤーを除去した後で膝蓋骨高位になった症例の紹介があり、ストレスのコントロールの難しさが示唆された。また、ワイヤー固定をしていることで固定の陰でstress shealdingとなることで修復靱帯の強度発現の時間的遅れが発生するため、注意が必要となる事が挙げられた。当然膝蓋下にストレスがかからないことから膝蓋下脂肪体等軟部組織の強度や癒着の心配が発生することも考えられた。まだ他院で入院中であり、今後直接担当してからどのような経過をたどるか再度報告を期待したい。
                                       (文責:国立療養所鈴鹿病院 岸田 敏嗣)