132回整形外科リハビリテーション研究会報告

2004.03.27 於:日本医療専門学校

症例 膝蓋骨骨折           平針かとう整形科    岡西 尚人 先生
   肺癌術後肩関節拘縮      守山整形外科クリニック  阿部 友和 先生
     両膝蓋骨亜脱臼症候群          岐阜市民病院病院       臼田  正史  先生         右肩関節前方脱臼             松阪中央総合病院       小原  史嗣  先生

 症例1 32歳男性。tension band wiring施行し、11日後リハ開始となる。初期時ROM0〜20度、約4週間後の時点で0〜95度、lag10度程度であった。施行してきた治療の検証と今後の方針について検討された。疼痛と筋収縮不十分な状態から各グループとも疼痛管理と浮腫管理が重要との意見であった。それぞれが悪循環の因子であることから早期から対処する必要性を確認した。ピントラブルについてはさほど感じないとのことであったが、侵害刺激の一因になる可能性もあるため、そういった場合は治療上工夫する必要がある。膝蓋骨骨折は関節内骨折であり、出血・炎症の波及は広く膝関節全体に影響を及ぼす可能性はあるが、丁寧に行えば特に制限が生じる疾患ではない。疼痛管理と浮腫管理でかなりの部分をカバーできる。治療上の工夫としては、ピントラブルを避けるために、膝蓋骨上方部の皮膚をたぐり寄せるようにして、皮膚の緊張をゆるめた状態で屈曲させることが指導された。また文献上屈曲30度未満の伸展状態での筋収縮はzugが効かないと言われており、SLR等筋収縮は注意が必要である。また、筋のリラクゼーションが必要との意見も一致しているが、方法論として軽い抵抗をかけて自動屈曲させることで相反性に抑制をかけながら行う方法が説明された。膝蓋支帯の断裂の有無によって屈曲の刺激量を考慮する必要があり、X-pにて確認して固定性とともに確認の上進めていく必要がある。zug法の理論を理解しながら行っていきたい。

 症例2 49歳男性。肺癌opeについては詳細な記事は無く侵襲がどの程度どの部位にあるかは不明であった。診断として頸肩腕症候群も挙げられていた。主訴は疼痛、シビレ感であった。頸部、斜角筋等の筋緊張亢進、肩胛骨alignment異常(前方突出、下垂、外転)、ROMは屈曲55度、G-H35度、外旋10度/10度、外転40度/20度、筋力は4minus〜3レベルであった。今後の対処について検討された。多くのグループが疼痛に対しての対処を考慮するとの意見であった。夜間痛も存在することから姿勢や肢位を検索していくとのことであった。臨床としては物療や薬物、注射等も併用して対処していくとの意見が出された。またTOSの存在も危惧されることからISTmuscleの筋力活性化も考慮していくことが挙げられた。疼痛があるため筋のリラクゼーションが困難ではあるが、物理的に関節の可動性を得るためにも短縮位となっている筋のリラクゼーション・ストレッチを疼痛のない範囲で行っていくことも必要ではある。診断から予後がどうかということも今後を考慮すると重要な因子にはなる。現実のADL上ではROMよりも疼痛管理の方が重要となると考えられた。先ずは疼痛の除去のために三角巾等固定するなど疼痛軽減の方法論を見つけていくことが重要と考えられた。実際に肩胛骨を他動的に挙上することで疼痛が軽減するとのことから優先的に試行していくべきとの意見であった。リハとして対処可能なものと無理なものを確実に分離し、無理なものについてはDrに相談し依頼する。可能なものについては可及的に対処していくことが重要である。しかし、結果が伴わない場合にこの判断を誤る可能性もあるため、知識・技術をより洗練させていく努力をしていく必要もあることを明記したい。

 症例3 29歳女性。7歳頃から数回亜脱臼の既往があった。今回右のみElmslie-Trillat法(膝蓋腱付着部移行)を施行し、術後1週よりリハ開始しされた。現在屈曲145度(左165度)、伸展0度、股関節外旋30度、内旋35度で、筋力は3程度、膝伸展にて膝蓋骨内側周辺に疼痛訴える。その他再現性のある疼痛部位が数カ所あった。伸展時の疼痛の解釈、筋力、階段昇降障害について検討された。各グループからの意見としては、筋のバランスが悪いこと、付着部の位置が変位していることから来る筋収縮の障害が挙げられた。また伸展機構の柔軟性が低下していることが主原因と考えられるため、ストレッチ等柔軟性改善が必要とのことであった。また膝蓋骨のalignmentのみならず股関節の可動性も重要であり、特に過内旋が問題で、女性に多いが、その結果から来るknee-in-toe-outのalignmentがQ-angleの増強を惹起して脱臼傾向が強くなる可能性があるため、確認が必要とのことであった。また、一般でも多く見られるものに外側広筋の柔軟性低下が挙げられ、選択的に十分なストレッチを行うことで疼痛等の改善が見られることが多いとのことで、実際に評価およびストレッチのデモが行われた。可及的に保存の状態にて施行して変化を見てからopeを考慮できるようなシステムが構築できるようにしていきたい。知識・技術の向上が我々に要求されていると受け取り、更なる努力が迫られていると考えたい。

 症例4 22歳男性。snowboad injury。現地にて整復し3週間三角巾固定。現時点で屈曲90度、1st外旋5度、肩胛骨での代償運動目立つ。三角巾中部および上腕二頭筋長頭腱に圧痛があった。今後行うべき治療について検討の予定であったが、時間が不足していたため、デモにて行われた。ROM制限は存在するが、この時期としてはさほど問題があるほどではなく、逆に筋や軟部組織の感触から拘縮に移行するような状態ではないと判断された。この時期は腱板を中心とした筋の活動性を挙げて、柔軟性を向上させることでROMは改善してくると思われた。屈曲についてはanterior pathのため比較的前方組織の伸張刺激がコントロールできるため、早期から内旋、水平内転の状況で屈曲方向の運動は行っても大きな問題はないかと思われた。外旋については伸張に組織の修復を待ってから行うようにする必要があり、時期的には8週から12週程度のspanで回復するように行うことで十分と考えられた。三角巾固定についても、最近では秋田大学が外旋に固定を提示している。文献等でエビデンスを理解しておきたい。今後のリハにも参考になるかと思われた。上肢に対する負荷については3ヶ月は安静にした方がよいと考えられた。脱臼の場合は軟部組織の破綻が主原因のため、組織の修復が最優先されるべきで、邪魔をしないように可動性を維持することが求められる。運動学的、機能解剖学的にストレスを理解して治療を進めていくようにしていきたい。

                                      (文責:国立療養所鈴鹿病院 岸田 敏嗣)