142回整形外科リハビリテーション研究会報告

2005.05.21 於:名古屋法律経済専門学校

症例1 49歳 男性 右上腕骨頚部骨折、右大腿骨骨折、右下腿骨折、右足関節脱臼骨折(Lisfranc関節脱臼、舟状骨・立方骨骨折)、左足関節骨折
 
 交通事故による受傷で受傷後約5週でリハが開始されていたが、皮膚移植もあり現在でも右足関節に対しては行っていない状態であった。現在の状態は右肩屈曲40度、外転35度、外旋0度、内旋60ど、肘屈曲140度、伸展-15度、右膝屈曲100度、伸展-5度、左足関節背屈10度であった。今後の治療についてフロアで検討された。検討項目が多いこともあり、グループ別に担当関節を振り分けて検討してもらった。肩班の意見としては通常の頚部骨折としてstoopingや弱い筋収縮にて柔軟性を上げていくことで対処していくことが挙げられた。把持する部位等技術的に難しい部分もあるが方向性に異論はなかった。ただstoopingをするのに両下肢損傷で立位が取れないこともあり工夫が必要になることが予想された。膝についても通常の顆上・外顆骨折に対する治療として考えればよいとのことで、骨折部位から膝蓋上嚢や中間を中心とした広筋群に対する収縮による柔軟性の促進とpatellaの可動性の拡大を狙った治療を行うことで改善が見込めるとの意見であった。足関節については左は関節部の骨折ではあるものの、整復は行われており、狙いはTP、FHL、FDLを中心とした足根管に関与した筋の柔軟性、滑走性を上げていくことが中心になるとのことであった。ただ開放創があったため皮膚の安静をある程度保証した中での治療となるため、通常よりも制限が出てくることが手技的に困難性があることが示唆された。右については現在まだ治療許可が出ていないため期間的には拘縮の程度が高いことが予測されるが、それよりも何より足根骨が骨折、脱臼していることから機能的には全廃することが予測されるので、今後荷重が始まったときに大きな問題となることが示唆された。関節を含めて線維性に拘縮ができて治療は困難になると考えられるため、疼痛に対する対処を考慮していく必要があり、insoleが中心となると思われるが、通常の場合と違い技術的に高度であるため今後注意を要することが必要となる。今回の症例は非常に難渋すると予測される症例であり、こういった症例に対する治療をどう進めていくかというのが単なる知識、技術だけではないプラスαの部分、いわゆる臨床力、総合力が求められる症例であり、こういった症例に対しても十分に対処できるだけの臨床力を身につけるように今後も自己研鑽していきたいものである。

症例2 31歳 男性 左肩関節関節唇損傷(鏡視下Bankart修復術)

 転倒にて受傷。翌日受診し、診断はついたものの約3週間放置。その後受傷後3週半で手術施行。術後3日目よりリハ開始。術後7ヶ月弱で拘縮のためjoint distension施行。して現在に至る。現在の状態は屈曲140度、外転115度、1st外旋10度、2nd外旋30度、3rd外旋-25度であった。内容は振り子運動、isometricを中心に治療を行っていた。術後より疼痛が強く、なかなか治療に乗れなかった経緯があった。各グループで検討した結果、原因はG-Hの拘縮が主体であることが挙げられた。G-Hでの動きがVTRからでは50度程度で動きが肩甲骨優位となっていることが見受けられた。そういった意味では拘縮肩に対する治療と同様に考えていくことでいいのではないかとのことであった。当初の疼痛も現在は軽減傾向にあり、治療は可能な状態であるため、先ずはG-Hを狙って筋から十分に柔軟性を出していくことが求められる。初期治療を難渋させたのが疼痛であり、その解釈が必要であったと思われる。受傷機転から考察すると腱板から肩峰下滑液包由来の疼痛と考えるのが妥当ではないかと思われた。よって初期の三角巾固定の時期により安楽な姿勢を積極的に模索することが先ずは重要であったと思われた。軽度外転位の方が疼痛軽減に繋がった可能性があるため、安静の本来の意味と目的を再確認しておく必要があると思われた。特に初期は疼痛コントロールが重要となってくるため、細心の注意を払いたい。病院単位でクリティカルパスを導入して行われているところも増えてきてはいるが、パスありきではなく、本来の目的に目を向けておく必要性があることと、パスがある場合は無い場合よりもコミュニケーションが重要で、随時正確な評価の下に臨機応変に対処できる知識と技術が求められることを再確認しておいて欲しい。
 

                           (文責:独立行政法人 国立病院機構 鈴鹿病院 岸田 敏嗣)