146回整形外科リハビリテーション研究会報告

2005.10.15 於:日本医療専門学校

症例1 4歳 女性 左脛骨骨折後母趾伸展制限
 
 テレビにぶら下がりバランスを崩して下腿前面にテレビが落下して受傷。3週間ギプス固定後、その後シーネにてそのまま歩行。受傷後7週目でリハ開始となっている。ROMは最終的には足関節は左右差無く、圧痛や神経症状も無かった。母趾のみ足関節底屈位にてMTP伸展40度、IP伸展0度、背屈位にてMP伸展0度、IP伸展-80度であった。制限因子の検討と治療方針について検討された。各グループからは長母指屈筋の癒着および短縮が原因として挙げられた。また成長期と言うこともあり、母趾伸展障害のため跛行が出現し、足部に対する変形やアライメント異常を惹起する可能性があるため、補高やインソール等を考慮するといった意見も出された。癒着か短縮かの問題については、足部での腱の滑走の有無が必要であるが、確認されていなかったため、詳細は不明確ではあったが、その他の所見から癒着の可能性が高いことで一致した。部位としては足関節の角度に左右されていることからも足関節よりも近位にあることは明確である。骨折後の出血から炎症修復課程の中で癒着が惹起したと考えられた。当然ながら短縮であれば持続的な伸張刺激にて改善していく可能性は十分にあるが、癒着の場合は剥がれるかどうかということになり、3ヶ月集中して剥離を目的とした治療を行い、改善傾向が見られなければ、剥離術を考慮した方が成長期といった年齢からも妥当であろうとのことであった。今回は受傷後かなり時間が経過していたため、致し方ない部分があるが、早期のギプス固定中の足趾の運動が如何に重要であるかが再認識される症例である。テノデーシスアクションや部位別の筋の収縮や腱の滑走を詳細に確認しておくことが重要である。今回の症例から基本に回帰することを痛感させられた。
 

症例2 30代  男性  投球障害肩

 数年前から投球時に違和感有り。昨年からは70%程度の投球でも疼痛を感じ、数カ所の整形外科、スポーツクリニックを受診。X-p上は問題なく、innner muscleの強化指導をどこでも行われていたが、変化が見られなかった。今月に受診されたとのこと。評価としてはNeer・Hawkins(+)、疼痛はないがクリック有り、painfull arc(-)、accerelation phaseでの肩峰下での疼痛、違和感があり、1st外旋にてscaplaのwinging(+)、90度外転位でのscapulaは明らかに外転位、上方回旋角の不足、僧帽筋中部・下部の筋力低下、1st外旋45度、(健側80度)、2nd外旋90度(100度)、3rd外旋5度(60度)、retruct制限有りの状態であった。以上から原因と対処法について検討がなされた。各グループからはG-HのROM制限および胸鎖関節・肩鎖関節の制限が残存していることから、それらに対する治療が必要であるとの意見が出された。また、評価からcuffの筋力は維持されているが、僧帽筋の筋力が低下していることから、疼痛の主原因は肩甲骨のdynamic alignment異常に由来するものと予測された。肩甲骨が十分に上方回旋および内転しないことから肩峰下にストレスが集中し、疼痛が発生していると考えられた。改善するにはROMの改善とIST muscleの強化が必要であることで一致した。cuff trainingは当然重要ではあるが、投球障害肩=cuff trainingとなりがちであるため、詳細な評価をより正確に行うことが重要であることが示唆された。文献的にもcuffの出力は肩甲骨の角度に依存するため、全体的な評価を確実に行うようにしてきたい。

症例3   右肩鎖関節脱臼

 肩鎖関節脱臼の保存症例が呈示された。検討ではなく、肩甲上腕リズムの確認をビデオにて行われた。実際に肩鎖関節の連続性が絶たれた状態での肩甲上腕リズムにつては報告が無く、想像の域を出なかったため、非常に興味深い報告であった。詳細はビデオで確認していただくとして、少なくともG-Hの可動域制限が無い状態でないと正確なリズムはわからないため、今回も多少拘縮のためリズムに影響が出てはいたが、それのみではなく、個人差が大きいものだと思われる。少なくとも脱臼した状態でも、痛みが無く、拘縮が無ければADL上の制限は比較的少ないこともわかった。年齢、環境、職業、趣等様々な因子から治療法を洗濯していく必要性がある事も理解できた。

                           (文責:独立行政法人 国立病院機構 鈴鹿病院 岸田 敏嗣)