147回整形外科リハビリテーション研究会報告

2005.11.19 於:日本医療専門学校

症例1 30代 男性 左上腕骨頚部骨折(Neer分類W型3part骨折)
 
 自転車にて転倒し受傷。保存にてベルポー固定。一ヶ月後三角巾に変更。医師によるCodman訓練開始。6週で三角巾除去。自宅での訓練のみで経過観察。約8週の時点で改善困難と判断され週2回のペースでリハ開始となる。初診時、屈曲90度(G-H40度)、外転40度(30度)、1st外旋15度(-5度)、内転0度(-20度)であった。疼痛も棘上筋、肩甲下筋、小胸筋、大円筋に圧痛あり、背臥位で対側に上肢を置くことができない状態であった。受傷後7ヶ月半で屈曲165度、外転160度、外旋60度、結滞Th10レベルで終了となった。検討としては昨日予後、所見の取り方、治療法の選択と是非、治療効果について検討された。各グループから意見が出された。骨形態が変化していることからも大結節の通過障害があるかどうかは確認しないと判断が付かないが、VTRで見るとある程度通過はしていると判断できる。受傷からcuff損傷は必発と考えられるため、肩峰下の癒着や機能障害、夜間痛は容易に想像できる。そこからも肩峰下の組織に対するプローチが重要となる。リズムが崩れていることもあり、ISTに対しても評価していく必要がある。治療としては先ずは夜間痛に対する対処が優先されるとのことであった。そのためのテクニックとして軽い収縮が行われるが、今回のような場合は前方の癒着が強いと考えられるため、棘上筋後方から棘下筋にかけてアプローチすると効果が高いとのことであった。効果については明らかに理学療法を行った効果と考えられ、自主トレのままでは夜間痛の除去や、G-Hの改善は困難と思われた。リズムや筋力については自主トレでも可能と考えられるため、選択的に行う必要がある事や、時期を考慮した治療が求められると考えられる。今回の結果は非常に良好な結果と思われる。最後に担当による具体的な治療のデモが行われた。
 

症例2 60代  男性  左下腿骨折

 飲酒後側溝で足を踏み外して受傷。他院にて手術(脛骨:髄内釘上下横止め、腓骨:K-wire髄内釘)施行し、術後3週で関連病院転院。その後術後12週の時点で外来として転院し、更に3ヶ月後に担当した症例であった。経過は術後4週で1/3PWB、6週で1/2、8週で2/3、12週でFWBとなっていたが、疼痛が強く跛行が強いため片松葉の状態であった。医師からも骨癒合が悪いことから指示が出されていた。そのためセーフスも使用されていた。疼痛は骨折部にあり、当初は接触するだけで疼痛の訴えがあり、触れない状態であった。ROMは左右差は大きくはないが若干見られた。腫れもあり、筋出力も深部屈筋群に低下見られた。荷重時の足部変形も強く、2週間ほど前に足底板作製、夜間装具作製をし、疼痛や歩行の改善が見られた。歩行についてはVTRで確認し、足底板も画像にて確認した。その状態で今後どのようにして治療を進めていくかが検討された。骨折部の疼痛が存在することからも骨折部の遷延治癒が考えられ、刺激が加わっていることが想像された。そのためにもdynamizationの目的で上方部の横止め螺子を抜去する事で癒合を促進することも考慮できたらとの意見があった。跛行が強いことからも片松葉ではなく両松葉にして荷重線を正しくコントロールする事が必要であったこと、もっと早期に足底板で疼痛をコントロールする事が重要であったのではとのことであった。現在の足底板後の歩容が改善し、疼痛も改善していることからもより早期に対処することが重要であっただろうと考えられた。ROMも左右差がさほど無い状態ではあるが、歩行分析からはまだ残存していることが示唆されていた。骨折部に考慮した方法論を考慮した治療が求められる。遠位骨片を後方から支持する事で疼痛が消失するため、その状況での筋の滑走やストレッチを行うことが示された。また足底板についても歩行分析から、骨折部で荷重時に外旋が見られ、toe outが強い状態であったため、先ずは踵接地時に不安定にならないようにサポートし、アーチを保持しながら、後足部の回外を出すために載距突起の下で支持し、更に母趾の活動を抑えるためにMTPにかかる程度に支持し、WX趾の活動を活性化するために中足部を支持することで歩容が改善するであろう事が説明された。骨癒合の経過に合わせて治療を進める事に異論は無いが、疼痛や歩容等状況を見て判断しながら全荷重許可が出さされていても両松葉を選択するなど、経時的な流れにのみ合わせた治療は問題があることを考えていきたい物である。

症例3  30代 女性 PCL付着部骨折

 伸展受傷と思われる脛骨後方のPCL付着部骨折である。シリンダーキャストで保存療法となった。7週と3日でリハが開始された。8週までは免荷、その後13週でFWBとなっていた。ROMは0-10-140で筋力は3+レベルであった。荷重や正座の許可が出ていない状態での治療になっため、最終可動域での強い刺激は与えないように考慮して行った。骨癒合が不十分であると考えた場合に、如何に治療を進めていくかを検討した。意見としては屈曲制限であることから、伸展機構の柔軟性の向上、MCL・LCLの柔軟性の向上、半月板の可動性の向上、生理学的な関節運動の再現と、PCLを保護するために内旋を制限した屈曲を考慮するといった意見が出された。最終的には実際の治療と注意点について説明がなされた。それによると骨折部に負担をかけないようにするために、屈曲90度程度で下腿の内外旋を行うことで脂肪体を含めた軟部組織の柔軟性を維持すること、伸展機構の柔軟性を維持することを中心に行い、全荷重許可が出る時期に合わせて深屈曲を行った。開始時から容易に屈曲していたことから逆に制限をしながら進めたとのことであった。PCLに最も負荷がかかるのは伸展位と正座と考えられるため、骨癒合が完全になるまでは避けることも考慮しなければいけないと考えられた。生理学的な深屈曲の関節運動学を理解することが重要であり、それに伴った評価が詳細に行えるかが問題となるため、再確認していきたい。

                           (文責:独立行政法人 国立病院機構 鈴鹿病院 岸田 敏嗣)