150回整形外科リハビリテーション研究会報告

2006.2.18 於:名古屋法律経済専門学校

症例1 50代 男性 左上腕骨骨幹部骨折、左手デグロービング
 
 工場のベルトコンベアのドラムに巻き込まれて受傷。上腕骨は髄内釘横止め施行、中指・環指断端形成術、小指切断術施行。皮膚については移植は行わず、縫合のみであった。小指は中手骨頸部骨折部にて切断施行。環指は中節骨中央部で形成、中指は指神経切断のため縫合し、中節骨中央部で形成。術後1週でOT開始。手指、肘、肩ROM訓練施行するも、前腕筋挫滅強く、母指のみわずかに屈曲できるのみであった。術後3週の時点でPTも開始された。肩・肘のみ訓練行う。所見としては浮腫は著名、前腕・三頭筋の挫滅が見受けられた。ROMとしては肩屈曲150度、外転80度、外旋1st25度、2nd30度、3rd75度であった。肘は屈曲120度、伸展-10度、回内10度、回外40度、手指MP40度、PIP60度程度であった。今後の治療および今回のような疾患に対する注意点等が検討された。手指についてはOTのため情報が少なく想像の域を出なかったが、肩については痛みが肩峰下と三頭筋長頭にあり、更に小円筋付近に電撃痛があるとのことからQLSを考慮した評価が必要で、さらにはシビレ等からもTOSや腕神経叢症状を評価する必要が示唆された。肘については骨折部での筋の癒着・滑走性低下が考えられるため、三頭筋内側頭、上腕筋を狙った治療が必要とのことであった。ただ肩、肘については直接挫滅したわけでは無いとのことなので、比較的早期に改善が見込めることから、より早期のADL獲得のためにも重点的に治療をしておく必要がある。手関節・手指については挫滅も強く、皮膚が落ち着くまでは積極的な治療ができない部分もあり、時間がかかることが予測された。当然腫れが強いことからも循環管理が重要となる。こういったデグロービングのような場合は腫れも血管再生には重要な経過であり、通常の腫れを引かせるように行うと血管再生や皮膚の正着を阻害する危険性もあるので極めてマイルドに行う必要性が説明された。以前のレクチャーも参考に程度を考えて行うことが求められる。感覚障害も存在するため、手指の機能的回復は長期的展望に立って行っていく必要がある。PTOTが分けられていることが多いので、情報交換も重要であることが確認された。デグロービングの経験が少ないが皮膚の正着を優先した状態での機能回復が求められる症例であるため、時期に合わせた適切な処置が求められる。再度結果の報告をお願いしたい。

 

症例2 50代  女性  右大結節骨折

 レクチャーに合わせて症例が呈示された。一般的な骨折であり、現在の治療手技や知識をまとめるために検討された。治療としては棘上筋の収縮が早期に入ると変位する可能性があるため避けること、ROM維持のためstooping−exをpositionを考慮しながら行うこと、筋のリラクゼーションを行うこと、肩峰下に入りやすいパスを見つけること等が挙げられた。実際には通常のstoopingのみではなく、伸展方向にも行い肩峰下組織を十分に出すことができるように考慮した治療が行われていた。結果的には165度で結滞動作も可能であった。考察として大結節骨折を二通りに分け、大結節上部が引っ張られている状態と今回のように縦割れした状態では予後が違うといった報告がなされている。経時的には縦割れの場合は非常に難渋し治療期間が長期化する傾向にあるとのことであった。レクチャーでも触れられていたが、post rotational graidでは大結節は肩峰下に入り込む。ちょうど結節間溝が関節上結節に近づくような動きを見せることから、その動きを阻害する肩峰下の組織の柔軟性が重要な意味を持つと説明された。その問題が解決する方法論が確立すれば肩関節可動域制限に対する成績と治療期間の短縮が期待できる。3次元的な解釈を踏まえて是非追求していきたい内容である。

 

                           (文責:独立行政法人 国立病院機構 鈴鹿病院 岸田 敏嗣)