154回整形外科リハビリテーション研究会報告

2006.8.19 於:中部リハビリテーション専門学校

症例1:肩関節拘縮に対する関節鏡視下手術予定の症例  40歳代  女性

 受傷機転は、バレーボールの試合で右肩にアタックを受け、その二日後に自らアタックを打った際に肩に痛みが走った。Aクリニック受診し、打撲と診断。痛みはあったが生活は可能であった。その後痛み増強しBクリニック受診し、MRIにて関節水腫してきされ、安静と注射、患部以外のマッサージを受けた。しかし疼痛増強したため、仕事を休む。ADL上支障出てきたため、Aクリニックを再度受診。MRIにて腱板部分断裂の診断を受けた。電気、プーリー指導されるが改善せず、数回にわたり医師より強制的に徒手矯正を受けた。その後更に疼痛増強したため、この状態で受診しリハを担当した。初期時安静時痛、運動時痛共に強く、夜間痛も数回目を覚ますほど存在していた。ROMは屈曲70°、G-H40°、外転30°外旋0°圧痛は方周辺に広くあった。週5回でリラクゼーション、マイルドなストレッチを中心に施行。1ヶ月でTOS症状、夜間痛、運動時痛は著減した。2ヶ月で可能な範囲で復職したがROM制限は残存した。現在屈曲100°、G-H70°、外転65°、外旋10°であった。そのため拘縮に対して関節鏡視下手術を二日後に受ける予定で、2週間ほど入院してOTを受けてから外来にて再度担当する予定である。今後如何に対処していくか、初期治療の検討を行った。初期に対しては安静が上手くできていなかったと考えられた。初期の痛みが中心の時に上手く三角巾や枕等を使用し、炎症を沈静化することが重要であったと考える。その後腱板を中心にリラクゼーションと滑走性を改善させることで大きなROM制限はできなかったのではないかと予測された。今後の予防として、姿勢や体格からISTを活性化し、オーバースローに耐えられるリズムを再構築しておくことも必要と考えた。今回の現状からは、治療としては間違っていなかったと思われる。ROM自体はもはや出来上がってしまっている状態なので、非常に時間のかかる状態であることは間違いなく、その対処として今回関節鏡手術は時間的配慮からも適切であると思われた。しかし、現実的には全て完全に原因を除去することはできないと考えられるため、術中所見をしっかりと確認し、情報をもらい適切に治療していくことが必要となる。術後は早期にADL上問題がない状態にしていくことが重要。バレーができるかどうかは何とも言えない。最終的な状態を評価して指導していく必要がある。術後の最終的結果を再度報告してもらいたい。

症例2:右鎖骨骨折 14歳代 女性

 自転車を運転中車に接触して受傷。AO clavicle hook plateにて固定し、翌日よりリハ開始となった。術中所見としては靱帯損傷は認められなかったとのこと。術創部に安静時痛があり、肩関節を動かすと防御性収縮出現。僧帽筋上部および中部線維、大胸筋鎖骨部に圧痛がある。姿勢は脊柱は右側屈位、肩甲骨外転、下方回旋になっている。医師の処方は3ヶ月間は90°までに制限するといったものであった。現在stoopingを行ったが痛みがあったため背臥位にて可能な範囲での治療を行っているとのことであった。今後の治療を術式の考慮を含めて検討された。受傷機転については詳細には解らなかったが、後外側からストレスが抜けたと考えられた。痛みについては術直後であることもあり、安静時痛も時期的には仕方がないと思われる。年齢的には拘縮を考慮するよりも炎症の早期沈静化と余計な防御収縮を避けるためにも安静期間をある程度取ってもいいのではないかと思われた。三角巾を付けた方が痛みはコントロールしやすいとのことなので、stoopingについても三角巾を付けた状態で行うことが推奨された。医師の処方として3ヶ月間90°というのは問題があるが、少なくとも鎖骨を動かさないようにすることと、正常な肩峰下の状態をわざわざ手術でhookをかけているので、あまり動かすと腱板やbursaを傷つける可能性があるので考慮する必要がある。年齢的にはplateでなくても経皮pinningと鎖骨バンドでも可能ではなかったかという意見もあった。また痛みや鎖骨の固定を考慮した治療を行う上で、痛みは重要なサインではあるが、その痛みの原因は評価しておく必要がある。ポジションを考え、痛みの少ない状態で、有効にG-Hを鎖骨の動きを完全に抑制した状態で行える状況を作ることにつきると思われた。立位、坐位、背臥位とそれぞれ重力や脊柱のアライメントの変化にて肩甲骨の位置関係が変化することを考慮して治療をしていくことが必要である。そういった意味ではG-Hを正確にコントロールするための経験としては非常に有効な症例である。確実な治療を行うことで自身の技術の幅を広げていただきたい。

症例3:右膝蓋腱断裂、右膝蓋骨骨折、右大腿骨顆部開放骨折(軟骨損傷)、右鎖骨骨折、左橈骨遠位       端骨折歳代    30歳代  男性

 バイク走行中転倒して受傷。肺挫傷、血気胸のため呼吸器外科入院となり、整形的対処を行ったのは受傷後約2週後となった。手術は腱を縫合し、ソフトワイヤーでpatellaを固定した。その後ブレース固定とした。その後リハは術後20日で開始となっている。今回は時間の関係上膝について検討された。現在の治療としては浮腫除去、patellaを引き下げてのquadの軽いsetting、内外側広筋の徒手的滑走改善を行っているが、patella内側上縁の痛みが強く、思うように進んでいない状況であった。ROMは屈曲25°伸展−5°であった。今後術後4週から膝のROM訓練が開始され、8週後にワイヤー除去する予定である。ROM訓練が開始になることを踏まえて今からどう対処し、如何に進めていくかが検討された。一致した意見としてはinfrapatellarに対するストレスを加えないようにコントロールすることが重要であるとのことであった。そのためにもpatellaの引き下げを確実に行うことが求められる。またこのストレスをかけないようにするためにもsuprapatellarの柔軟性を十分に出していくことが重要になる。またpatellaや皮下のglidingを改善することが重要となる。ただ今回の場合は受傷後の経過が長いこと、感染はないが長期間異物が体内に存在していたことから炎症の長期化が懸念され、循環動態も悪かったと予測された。そのため筋の線維化等器質的な変化が予測され、柔軟性に大きな制限が出る可能性が示唆された。そのため最終的には授動術等を考慮せざるを得ない状況になる可能性が挙げられた。また状態によっては形成術が必要になる可能性も有り、その場合は筋力に影響が出る可能性も示唆された。ただ、少なくとも伸展制限は今後のことを考えても除去しておいた方がいいため、安全性もあるため積極的に治療していくことが必要との指摘があった。また、膝は時間がかかる可能性があるため、ADL上を考えても上肢の損傷に対する治療を確実に行い、最終的に早く膝に集中できる状態を作ることも一つではないかとの意見であった。非常に多発外傷で状況も不利な状況であり、治療に難渋することが予想に難くないが、この状況で如何にできることを確実に行うかが求められる。今後の結果を期待したい。  
         (文責:国立病院機構東名古屋病院附属リハビリテーション学院 岸田)