156回整形外科リハビリテーション研究会報告

2006.11.25 於:愛知産業貿易館西館9F第3会議室

症例1:右足根骨開放脱臼骨折(Gastilo VB)、踵骨剥離骨折 20歳代 男性


 ローラーに挟まれて受傷。整復のためpinning施行。その後整復不良のため螺子固定およびillizarov固定を施行した。整復位の保持は良好であった。ope後翌日より荷重は許可されており、MTPの動きと内外反が規制された。ここまでの情報でグループにて評価項目と治療計画を討論してもらった。出てきたのは足関節のROM、浮腫・腫脹、疼痛、感覚の検査を行うことが挙げられた。荷重については許可はあるものの痛みを見ながら経時的にかけていくことが挙げられた。次に初期評価から治療経過、最終結果を呈示してもらい、内容の検討を行った。治療が認知運動療法で行われ、実際には徒手的には触っていない状態で自主トレが中心であったため、経験の無い先生が多く具体的なイメージが付きにくかった。結果的には非常に良好であったため、特に否定的な物はないが、シビレの解釈と消失の解釈、筋の伸張性の評価と改善の解釈が難しかった。フロアからは通常の方法論として、痛みのない範囲での軽い筋収縮、ストレッチ、荷重に対しては中足部を保護するためのインソールが必要との意見が出された。最終的には中足骨のアライメントが非常に良好な状態で保持されているので、長期成績が問題となってくる。活動性も高いことから、中足骨は正常でも機能的に崩れる。しかしそれは正常な靱帯が機能しているからこそである。今回の症例では靱帯は破綻しており、alignmentはいい状態にあるが、それを維持しているのは靱帯ではなく、線維化された肉芽組織であり、いわゆるdeseの状態である。荷重により緩んでくることは十分に考えられる。靱帯と違い緩んだものは元には戻らないためアーチが崩壊していく。結果疼痛が増強し、歩行障害が出現する可能性が高い。そのためにも良いalignmentの状態で完全に中足部が強直化するようにストレスシールディングが必要となる。そのためのinsoleが必要で、それは技術的に難しい。ただのアインラーゲでは不十分であるため、十分に吟味する必要がある。少なくとも1年は装着するように指導したい。また、中足部にストレスがかからないように足関節のROM、MTPのROMを確実にすることが重要であると考えられる。まだまだ解釈が分からない事象は多いが、可及的に追求する姿勢と、良い物を解釈しながら上手く取り入れていく姿勢が求められると思われた。

症例2:右大腿骨骨幹部骨折 80歳代 女性 

 転倒にて受傷。髄内邸横止めにて固定。4日後にリハ開始となるもHDRSが低く反応が悪いため脳外科コンサルトした結果慢性硬膜下血腫の診断となり急遽血腫除去術が施行されたため実際のリハは術後2週程度遅くなった。その後の反応等脳症状は特に問題はなく通常の治療に乗って行われた。先ずはope、現病歴等の情報を元に討論を行った。フロアからはROM、MMT、腫れ、痛みの評価を行うことが挙げられた。その後初期評価の情報を元に治療について検討された。フロアからは受傷より軟部組織損傷が考えられることから広筋群の滑りを出して、lope侵襲による筋出力低下とlagを除去するための筋トレが出された。その後治療経過、内容、結果が呈示された。最終的には正座可能で、歩行も自立して終了していた。術後荷重は6週間後に行われるのが通常であろうが、より早くROMを獲得したいと考えて進めていくケースがあるが、時期として急がなくても、軟部組織の修復等を考慮して6〜8週程度の中で最終的に確実に獲得できるようにコントロールすることも必要である事が示された。ROMの改善をこちらで時期としてコントロールできることは非常に高度ではあるが長期的に、組織的に修復機転を邪魔しないような考慮が求められると考えられる。全体としてはスタンダードな症例で一連の治療の流れが確認できて良かった。最後にこの症例にそのまま当てはまるかは別として注意点がレクチャーされた。X-p上大腿骨の彎曲が無く、真っ直ぐな髄内釘が挿入されているため、骨折部が合致しない状況になる場合があり、遷延治癒になるケースが経験されているとのことで、X-p上で仮骨形成を確認してから正座をさせた方がより安全であろうとのことであった。ROM中の痛みも骨折部に訴えていたことからも慎重に行う必要があることが説明された。

症例3:両側アキレス腱炎 40歳代 女性

 既往歴として7年前に左アキレス腱炎を罹患していた。セルフストレッチ後に徐々に痛みが増強した。ダンスを行っているが最中は痛みを感じないが、終了後痛みが強くなり、その後歩行障害が出現したとのことで他院にてマッサージ等を行い更に増悪した。その後受診しリハ開始となった。この状況で検査について検討した。フロアからはROM、圧痛、alignment、多関節の柔軟性の評価が必要との意見であった。その後安静時のアライメント、歩行時の動画、フットプリント等の情報が呈示された。この症例の場合後足部の回外が見られ、high archが見られたことからアキレス腱の外側に外側にストレスが蓄積されていたことが予測された。それに対してinsoleの処方が行われて動作時痛や腫れはは消失した。その後約3週間通院されなかった。本日受診した状態では圧痛や腫れがその時から見ると増悪していた。そのため今後どう対処するかを検討した。passiveでのROMでは痛みの再現性が無く、しゃがみ込みと階段降段時に痛みがあったことからsoleusの柔軟性を高めること、アキレス腱の圧痛の詳細な評価を行うこと、補高を行うことで対処することが挙げられた。最終的にはinsoleにて効果は出ていることから、主婦というADL上の特徴を考慮して、室内履きとしてinsoleを処方しないと効果が半減するとの意見が出された。補高をしながら上手くinsoleを常時使用できる環境を整えて、疼痛コントロールを行い、消失してから積極的なストレッチ等の柔軟性向上を図る方が得策ではないかとの意見であった。本症例のような保存例の治療は非常に難しく、しかし裾野が広いため柔軟な発想でかつ確かな知識と技術を持って行っていくことが求められる。このような症例をじっくりと丁寧に診ていける環境を大切にしていきたい。
            
       (文責:国立病院機構東名古屋病院附属リハビリテーション学院 岸田 敏嗣)