158回整形外科リハビリテーション研究会報告

2007.1.27 於:愛知産業貿易館西館9F第3会議室

症例1 70歳代男性。RA,TKA後感染、右膝皮膚潰瘍

 5年前にTKA施行。1年前から腫脹・発赤・熱感あり抗生剤にて対応。一度沈静化したが約半年後に再燃。TKA抜去目的にて入院した。術前は屈曲15°、伸展0°。MMT屈曲伸展共に3レベル。TKA抜去し、術後6日目より免荷歩行開始。CRP陰性化してからpatella動かすも可動性悪かった。Quadの収縮もpatellaを動かすほどではなかった。そのまま膝関節が存在していない状態で約100日後にrevision施行となった。術前角度は40であった。オペ所見としては、麻酔科での膝可動域は変化なかった。PF関節及び膝関節内は瘢痕組織で固定されており、除去した。その後受動術を施行し、100°の屈曲で膝蓋腱付着部付近の大部分が脛骨付着部より剥離した。その後TKA設置し、内側の支帯、筋膜を縫合し張力を維持し、屈曲90°弱の状態で終了となった。Ope2週で屈曲70°、伸展0°、lag40°となった。この症例について検討がなされた。経験者が少なく、特にこのようなシビアな症例は経験がなく結論には至らなかったが、少なくとも術中角度以上に動くことは困難であること、revisionまでの数ヶ月周辺軟部組織の短縮が容易に想像でき、伸張性の低下が惹起されていること、感染による瘢痕化、線維化による柔軟性の物理的な低下が考えられることからも、ROMの改善を前面に出すのは得策ではないと考えられた。問題はADLlagが大きいことで、歩行ができても支持性に問題があり、collapseを起こすと骨折の危険性も出てくるので、装具等どう経時的に対処していくかが課題となった。こういったレアな症例はなかなか報告がなく、暗中模索で行わなければならないため、非常に難渋するが、今回の症例を1つの指標として今後は対処していきたい。

症例2 30歳代男性。JRA現役騎手。左肩甲骨頸部骨折

 レース中に馬の骨折にて転倒し受傷。バストバンド固定にて保存。二日後よりPT開始。指示は肩関節以外のROM訓練、筋力維持であった。初診では左小指、環指にシビレがあったが、数日で消失。肩甲帯に浮腫、熱感、腫脹あり。棘下筋に圧痛、左胸郭に安静時痛が存在した。肩以外のROMは正常であった。呈示時点のROMは肩屈曲10°、伸展15°、外転45°、内転−5°、1st外旋20°、内旋80°、棘下筋と大胸筋停止部に圧痛。肩甲帯のretractionがみられた。トップレベルの選手で、機能の完全な復帰と早期レース復帰を望んでいる。今後どう進めていくかを検討した。意見としては、棘下筋を中心とした筋のリラクゼーションを図るための軽度な筋収縮、痛みのでない範囲でのstoopingが挙げられた。固定についてはzero-positionの意見もあった。X線上からは大きな動揺性はなく、転位もさほど大きく問題となるほどではないと判断された。また、早期から行うばかりではなく、確実に治療することが長期的に見て選手生命には大きく関与するのではないかとの意見もあった。最終的には固定については三角筋でもバストバンドでも痛みが出ない状態であればさほどこだわることはないのではないかとのことであった。経験者からも肩甲骨骨折はさほど機能障害が残存することはないため、早期に慌てて行う必要はないとのことで、痛みや神経症状、特に場所から考えてQLSを考慮してチェックしていくことが重要とのことであった。頚部骨折であったが、臼蓋骨折等関節に直接影響のある部位ではないので、時期を考慮して他の理学所見に注意を払いながら勧めていくことが肝要であるとのことであった。

症例3 30歳代男性。右上腕骨内上顆剥離骨折

 転倒して受傷。約4週ギプスシーネ固定。その後リハ開始。開始後1週で再度転倒し疼痛増悪のため再度2週間シーネ固定施行。その後リハ再開。その時点で圧痛あり、屈曲80°、伸展−30°であった。その後外来にて継続し、受傷後約4ヶ月の時点で屈曲110°、伸展−5°で、圧痛は残存していた。原因と今後の治療について検討がなされた。意見としては原因の大部分を占めているのが筋を中心とした軟部組織の柔軟性の低下であるとの意見で一致した。屈曲制限については三頭筋でも内側頭を中心に狙った柔軟性の改善が求められた。伸展については上腕筋を狙っていくことで一致した。疼痛のコントロールも柔軟性を獲得する上では非常に重要であり、リラクゼーションを如何に得るかが鍵である。ROM訓練中の痛みが内顆付近にあることから、尺骨神経由来の痛みも考慮する必要があるとの意見があった。神経のストレッチによる痛みが悪循環として防御性収縮を惹起して経時的に軟部組織の柔軟性低下を招来してしまう可能性が示唆された。実際に神経の可動性の改善と共に症状が消失した経験が紹介され、今後のアプローチの方向性の1つが呈示された。尺骨神経については、肘屈曲、前腕回内、手関節背屈にて伸張される。今回の症例でも屈曲時に回内した方が疼痛が増強されていたことからも可能性が示唆された。解剖学的には三頭筋表層の筋膜にarcade of Struthersという膜が存在し、通常では圧迫することはないが、尺骨神経が三頭筋内側頭の活動及び肘屈曲により挙上されることで圧迫される場合がある。この膜も7080%に見られるとされている。神経由来の疼痛といった所見も今後は考慮する必要がある。基本的にはスタンダードな症例で、修復過程と時期、治療によるストレス等を考慮して適切な時期に適切な強度の運動を正確に組織を狙って行うことが肝要であると確認した。肘は文献によっては異所性骨化の好発部位で、消極的になりがちではあるが、結果論的に議論するのではなく、原因論的に検証するよう心がけていきたい。

症例4 20歳代男性。左上腕骨近位部巨細胞腫に対する人工骨頭置換術

左肩に痛みがあり接骨院に通院。半年後に堤防から転落し、骨折と診断されたものの、別の病院にて巨細胞腫が発見され手術となる。リハも終了していたが、その後徐々にROM低下、筋力低下を認め、生検の結果、腫瘍再発していたため、11月に人工骨頭置換術を施行した。3週間は三角巾固定にて外旋禁止で他動運動のみ施行した。その後70°で外転装具に変更し、筋力に合わせて徐々に降ろしていった。現在の状況は、屈曲が他動85°自動(20°)、伸展40°(50°)、外転35°(90°)、1st外旋10°(30°)、G-Hでは屈曲40°、外転60°、外旋40°、内旋40°であった。筋力は伸展3、それ以外は1であった。感覚障害、圧痛、放散痛等は見られなかった。肩の人工骨頭の経験者が少なく、また原疾患からレアな症例であったため、意見を聞いてみた。人工骨頭置換術後の一般的な成績は130°程度を目安に行っていくことが多いと思われるが、成績は腱板の機能再建が重要なため、どれだけopeとして腱板機能を再建できているかにかかっている。それをベースにリハとしても運動学的機能再建を目指していく。今回は外転装具でコントロールされているが、角度調節については筋力として十分に挙上できる能力が確保できてから降ろしていかないと拘縮ができてしまう。また筋力の低下が強く見られるため、如何にアプローチしていくかが問題である。また筋力についてもG-H制御とISTに分けて考慮していく必要がある。

症例5 30歳代男性。若年性RA、両側リウマチ性股関節炎

 5年ほど前から股関節痛増悪し、2年程度はほぼ寝たきりの状態であった。3年前より疼痛の沈静化と共にROM制限が増悪し座位・歩行困難となった。手術希望で昨年末左THA施行した。術前では右股関節は強直、左も屈曲20°程度、外転20°程度、外旋10°程度であった。筋収縮は触診できる程度。歩行は独歩可能で、膝の屈伸や足関節の動きのみで行っていた。座位も股関節伸展のままで行っていた。THA施行し術中屈曲90°、伸展10°、外転30°で脱臼感もなかった。オペ所見からは意外と通常のTHAと変わりがなかった。その後パスに沿ってリハ行い、最終的には屈曲80°、伸展−10°、外転25°、内転−10°程度であった。歩行補高をして安定して可能となった。検討課題として可動域制限の考え方、骨盤の傾斜の改善、歩容等が挙げられた。この症例についてもレアなため、意見を交換したが、現状においては良好ではないかという意見や、補高の高さが高すぎるのではないか、またロッカーバー等工夫するところもあるのではないかとの意見が出た。また骨盤や脊柱側彎については、現状では困難だが、現時点で可動性がどの程度有り、代償等が可能な状態なのかを評価する必要がある意見が出された。また、膝の伸展制限が存在することから、積極的に改善を狙った治療をしてみてはどうかとの意見も出た。全体のalignmentをどう捉えて、1つ崩すことでの影響を考慮していく必要があるとのことであった。また、現時点で骨盤や歩容の評価を考えて、どうこうするのは時期尚早で、一旦退院にする予定になっているが、先ずは続けて右のTHAも行うべきではないかとの意見が出た。どうしても強直の右股関節の影響が全体に影響することは明白で、他を改善しても結局右股関節を代償する形で適応するため、その後に右THAを施行してから再度構築していく必要が出てくると考えられる。膝についてもTKAを含めて将来的に考慮することもあり、関節として機能する状態を作らないと全体がまとまらない可能性があるとの意見であった。歩行等全身のalignmentに影響が出る事を考慮してDrとの意見交換ができていくことも必要になってくると思われた。           
       (文責:国立病院機構東名古屋病院附属リハビリテーション学院 岸田 敏嗣)