159回整形外科リハビリテーション研究会報告

2007.2.17 於:テルミナ名古屋9階会議室

症例1 70歳代 女性 股関節周囲炎

数年前から腰痛、殿部痛出現、腰椎椎間関節症の診断のもと運動療法を施行していたが、2月初旬から右鼠径部〜大腿前面に誘因なく疼痛出現してきた。初診時所見はPatrickは骨盤固定下で大腿部痛、非固定で鼠径部痛、Fribergは骨盤固定下で大腿部痛、非固定で臀部痛が認められた。圧痛は仙腸関節と臼蓋に沿った部分にみられ、それぞれ圧迫時に、仙腸関節は臀部に放散痛、臼蓋の方には大腿部に放散痛がみられた。腸腰筋、内転筋群、小・中殿筋、大腿筋膜張筋などの股関節周囲筋に圧痛がみられた。PLFTest120°、Ober(+)、Thomas(+)、立位、歩行時には腰痛、殿部痛、股関節運動時には大腿部痛がみられた。股関節の発症機序、今後の治療について検討された。考えられる神経症状と実際の症状とに乖離がみられ、正確な診断が困難であった。神経症状であれば臼蓋に沿った圧痛は考えにくく、仙腸関節の症状においても同様であった。もともと腰痛はあるため、仙腸関節症状は今回の股関節痛以前から訴えていた内容であり、股関節周囲炎であれば安静時痛や歩行時痛等関連した症状が出てもおかしくはない。今回は結論が出せなかった。現在フォロー中であるため、再度詳細に評価し、治療した反応を元に診断をレトロスペクティブに考えていくことになるかもしれないが、今後のためにも参考となるよう情報を詳細に再度報告していただきたい。

症例2 棘上筋完全断裂(広範囲断裂);Mclauhlin法・acromioplastysynovectomy

 転倒して手をついて受傷。注射と物療、運動療法実施するも疼痛、運動不可のため受傷後約4ヶ月後にope施行。外転装具にて他動挙上開始。術後4週で三角巾へ、6週で固定除去し自動運動開始。受傷後約22週、ope6週で転院で外来フォロー開始した。初期時は屈曲他動120°;自動40°、外転75°;25°、外旋75°;40°、MMT僧帽筋中部・下部2レベル、前方・肩甲骨面・側方共に1レベルであった。圧痛は棘下筋、小円筋にあり、ADL制限が強かった。プログラムとしてはリラクゼーション、ROM訓練、筋力増強訓練を中心に行い、現在屈曲155°;70°、外転75°;40°、外旋75°、結滞L2レベル、MMT僧帽筋中部・下部4レベル、前方・肩甲骨面挙上3マイナス、側方挙上2マイナスであった。抗重力運動ができていないこと、ROM制限があることについて今後の方針が検討された。問題はROM制限が残存していることで、先ずはROM制限を除去することが最優先で行われるべき内容であるとの指摘であった。Opeについてはopenで行われているため、深層部分が十分に修復されていない可能性もあり、出力が低下することが報告されているため、よりスムーズな運動が行える環境ができていないと筋にかかる負荷が多くなるため相対的に運動の遂行が困難になることが考えられた。そのためにも先ずはROM制限を除去することが肝要であると思われた。また外旋制限があることで上腕二頭筋のdepressorとしての機能が働かないため、その機能を期待するためにも外旋制限が除去される必要がある。損傷は棘上筋になってはいるが、多くの場合は棘上筋の下方から棘下筋の上方にかけて広範囲に断裂することが多いことから、肩峰下から後方にかけて十分な引き出しが行えるだけの柔軟性があった上で、収縮を誘導する必要がある。内転制限も予想されるため、腱板の引き出しが十分に行えるだけの柔軟性を確保することを主体に進めていくことで一致した。

症例3 10歳代男性  橈骨遠位部開放骨折、尺骨茎状突起骨折、豆状骨脱臼、Guyon管症候群:創外固定

 野球でダイビングキャッチしようと上からグラブを出した際、クラブに固定された状態で体を前方に投げ出し、背屈・橈屈強制され受傷。X線にてminus varientVISI変形がみられた。8日後創外固定+pinning施行。Ope5日でリハ開始。約4週で抜釘。初期評価では鷲手症状、環指・小指に強いしびれ感が存在した。ROMは掌屈60°、背屈−50°、回内70°、回外−60°であった。現在では背屈他動40°、自動30°、回外他動75、自動60°、尺屈30°、橈屈10°であった。手指屈筋群、小指球筋、手内筋、母指内転筋に萎縮がみられ、豆状骨から有鈎骨にかけてTinel徴候がみられた。MMTでも23レベルで、握力は10kg程度であった。プログラムとしては低周波、ROM訓練、筋力増強訓練を行っている。ROM改善と筋力について検討がなされた。ROMについては皮膚の影響が多分にあるとの意見であった。またx線上で見かけ上のDISI変形が見られることからもRSL靱帯を狙った治療も有効ではないかとの意見であった。また手根骨の動きを考えて上手く橈尺屈運動を使いながら、時間をかけて行っていくしかないと思われた。回外についてもスプリント等考慮する必要があるかと思われた。麻痺についても創外固定の影響が出たことも考えられるため、何とも言えないが、少なくとも麻痺に対しては低周波等対症療法が中心となってしまうため、先ずはROM制限を除去して、supple jointにしておくことが先決と思われた。まだ若い症例で、今後を考えると十分な処置を行っていかないといけないため、詳細な評価を基に治療を進めていく必要がある。筋による制限もまだ存在していることが予想されるため、広く対処を求められる。先ずは使える手にするべく治療を進めていき、経過を報告してもらいたい。

(文責:国立病院機構東名古屋病院附属リハビリテーション学院 岸田 敏嗣)