162回整形外科リハビリテーション研究会報告

2007.5.19 於:IMY8階会議室

症例1 50歳代 男性 左肩関節筋移行術

 本症例はハシゴから転落して左肩関節脱臼にて3週間整復固定した。その後リハを行うもROMの改善が得られず、左上腕外側に知覚鈍麻出現。左腋窩神経麻痺と診断され、受傷後約半年後に左腋窩神経剥離術及び腱板修復術施行。その後も状態変化無く、更に半年後遊離腓骨神経移植術を施行。その後もしびれ感持続したため、更に14ヶ月後に頚椎椎弓形成術を施行。その後も挙上困難継続したため、更に7ヶ月後(受傷後約3年)に筋腱移行術施行し、外転装具にて固定にて術後リハを開始し現在に至っている。移行は大胸筋鎖骨部の起始部を内側に移動、僧帽筋上部を骨付きで上腕外側部へ移行、広背筋付着部を小円筋の上から上腕骨後外側部へ移行した。それぞれ内転・内旋、屈曲・外転、外旋を期待してのものである。現状では屈曲他動110°・自動55°、外転120°・60°、外旋60°・40°、内旋15°・5°である。感覚もしびれ感や違和感、知覚鈍麻が残存している。今後のアプローチとゴールについて検討された。フロアからはROMの可及的な改善や筋の再教育、肩甲胸郭関節での動きをhyperにすることによるADLじょうの活動性の向上や、下垂位での活動性が挙げられるような特に回旋を中心とした動作の強化などが挙げられた。非常にレアな症例で、経過も長く、このような場合は選択枝として関節固定術が選択される可能性が高いが、今回の場合は、インフォームドコンセントにより動く事を期待しながらも、最終的には固定術に近い結果しか得られないことも理解して行われた多少特異的な手術である。結果的には0°〜60°程度の動きが出せて、下垂位での回旋は許されるので補助手的な活動は可能であるため、固定術よりは活動的に有利に働いていると考えられる。結果としては文献を検索しないと正確なところは分からないが、印象としては満足のいくものと判断された。今後の方向性を含めて、目標の一つになるため、症例としてまとめて報告することを勧めた。期間が長期に渡っていることも結果を左右する一因子である可能性があり、初期の段階での治療も回顧して可能性を追求しておく必要はあると感じた。

症例2 30歳代 男性 JRA(強直股関節に対する両側THA

 本症例は2月の定例会で検討された症例で、前回は左のTHAを施行した時点でのもので、今回は反対側の右THA施行後の呈示である。状態の詳細は2月の報告に譲るが、今回は左の状態がほぼ維持されている状態での手術となった。ROMとしては外転15°、内転10°、屈曲60°、伸展−10°程度であった。現在の歩行は松葉杖を使用しているが、歩容としては術前に比べて良くはなっている。体幹の可動性は出ておらず、骨盤が右挙上・後方回旋しており、見かけ上脚長差が存在するため、補高を行っている。補高無しでは右踵が挙上してしまう。当初大腿前面のしびれ感が出現したが、経時的に消失した。これについては鼡径部での大腿神経のentrapmentと考えられた。今後の治療方針について検討された。フロアからは可及的にROM拡大には務めること、筋力の回復を狙うこと、体幹の可動性が低いため、体幹に対するアプローチが必要であること、またそれに伴う筋力や荷重面の変化に対応できる状態を確認しながら行わないと活動性が反って低下する危険性があることを考慮する必要があることなどが挙げられた。この症例もレアな症例であるが、股関節強直例が約半年でこの状態に変化させられるという意味ではTHAは非常に効果のあった手術であると言える。JRAと言うことで経年的に出来上がってきた強直であり、関節周辺組織や筋は変性が著しいと考えられ、ただ関節を弛緩するだけのTHAで可能なのは動きと疼痛緩和だけなので、そう言った意味では関節機能としてはこれから時間をかけて行っていかなければいけないと考えられる。当然体幹も全身の代償等に合わせて変化してきている物であるため、時間がかかると思われる。狙うのは椎間関節や筋になってくることは間違いない。骨盤の可動性、alignmentから臼蓋側は左右差を持って設置されていることがX-pから読み取れるため、骨盤のalignment変化による荷重線の変化がどう影響するかも考慮しながら進めていく必要がある。筋については通常でも1年近くかかるとの報告もあり、特に原疾患が強く関係するような場合は、そういった意味でも経時的観察が必要になってくる。今回の症例については本人の満足度も踏まえて結果的には良好であったと思われる。また歩容からも股関節に注目するだけではなく、肩甲帯からも体幹に対するアプローチを考えていく視点を持つことが指摘された。様々な角度から評価してアプローチができるようにしていきたい。

症例3 10歳代 男性 右疲労骨折後のシンスプリント

 本症例は野球選手で、活動中右下腿に痛みが出現し、約2ヶ月安静後疼痛軽減したが、部活再開と共に疼痛増悪した。発症後約4ヶ月で受診し右下腿疲労骨折と診断された。その後疼痛部位に注射施行し、疼痛は軽減した。X-p上では骨折は治癒しているとの事であった。MRIではT2脂肪抑制強調画像で脛骨中央部に高信号域が見られた。理学所見でも同部位に圧痛があり、筋の圧痛は見られなかった。ROM制限は認めず、脛骨疼痛部位を中心に遠位を外旋及び外反させると疼痛増強し、内旋及び内反にて軽減した。痛みもheel contactの瞬間で出現し、更にtoe offにてまた出現した。疼痛の発生機序とインソール治療について検討がなされた。フロアからは踵骨回外にて下腿外旋ストレスがかかり疼痛が発生していると考えて、踵骨の回旋をコントロールすることで痛みを軽減させるようにしていくことが挙げられた。実際の動画では踵骨が回外しているとまでは言えなかったが、左右差としては回外方向に振っていると考えられた。実際の患者の訴えでは回外すると軽減し、回内すると発生していた。通常のパターンとは逆の症状であったため、解釈に苦慮した。しかし、インソールを工夫しても症状が消失せず、最終的には回内誘導で痛みはコントロールできていた。実際の訴えと、アライメントとインソール処方に関して考えさせられた症例である。フロアでの解釈としては左右差としてみると回外傾向と捉えられるので、通常のアライメント異常に準じた処方で最終的には改善が見られたと解釈された。ある意味色々とトライアルをして結果を検索していくしかないのかもしれないが、少なくとも現象、訴えは真摯に受け止め、こちらの解釈に当てはめないようにしなければならないことは重要ではあるが、経時的に詳細な評価を行っていくことが重要であることを再認識させられた。特にインソール処方に関しても、今回のようなタイプは難しいので、我々も研鑽していかないといけない事を再認識する必要がある。

(文責:国立病院機構東名古屋病院附属リハビリテーション学院 岸田 敏嗣)