165回整形外科リハビリテーション研究会報告

2007.11.10 於:東桜会館第2会議室 

症例1 10歳代 男性 左橈骨・尺骨骨幹部骨折

本症例は、サッカー中に転倒し、受傷。開放骨折であった。他院にてエンダー釘による整復固定術が施行され、Gyps固定となった。4週後に抜釘、シャーレ固定となり、さらに5週経過後に来院された。初診時には、前腕の回外−5°、手関節の背屈45°と制限があり、握力は左10kg/右20kgと低下していた。深指屈筋等骨膜に付着する筋群の反復収縮、スプリントによる持続的回内、骨折部付近の瘢痕・癒着のRelease等を実施してきた。回内40°、握力は左15Kg/右20kgという問題が残存しているとのことであった。橈骨が掌側かつ内側凸に変形治癒した中で回内可動域獲得は可能かどうか、骨間膜の影響、変形が生じた原因と予防法が検討された。筋個別の伸張性や筋力を評価して制限因子を再確認すること、骨変形がありPRUJ・DRUJの適合性や可動性を確認しながら進める必要性があるとの意見が出された。回内方向への透視所見では、骨同士の接触はなく、軟部組織による制限が考えられた。骨間膜は橈骨・尺骨の位置関係を保つ役割を果たすが、直接の制限とはなりにくく、骨折部での深指屈筋や長母指屈筋等の起始部と骨間膜での線維化が起った可能性が考えられた。長軸方向への伸張性だけでなく、transverseへの伸張による形状の変化によって運動に対応できることが重要であるため、十分なamplitudeを持った筋収縮とdirectなtransverseへの伸張が良い方法と考えられた。骨の変形は手術方法の選択等が要因となった可能性も考えられるが、詳細がわからないため言及できない。変形に対してPRUJおよびDRUJが位置関係を保っていることから、関節の不適合は双方で少しずつ負担していると考えられた。骨端線もみられる若年者のため、骨がリモデリングされる中で変形が修正されていくことも期待できる。そのためにも軟部組織の正常化を図り、しっかりと筋を使える状態にすることが重要であると考えられた。現状だけでみると瓶の蓋を開ける動作等の他はADL上の制限はないとのことであるが、長期的な視野に立って十分な機能回復が望まれる症例と考えられた。

                    (文責:伊賀市立上野総合市民病院 猪田 茂生)

症例2 20歳代 女性 左大腿骨遠位巨細胞腫
 本症例は平成17年頃から歩行時に左膝部に疼痛が出現し、平成18年12月に左大腿骨巨細胞腫と診断され、腫瘍掻爬と人工骨充填術施行された。大腿筋膜張筋・外側広筋を切開し、骨膜を露出させた。骨皮質は約3cm欠損していた。骨膜・骨皮質を約3cm×4cm開窓し掻爬、大腿骨遠位は約5mmほど関節軟骨が内側より確認されたが、関節内への突出は認めず、磁性体混入人工骨を充填された。術後2日後からPT開始し、術後4週目には一旦膝屈曲full range可能となったが、術後5週目に創部が離開し術後6週目には創部からの膿と熱発を認め、平成19年2月に病巣郭清術を施行された(人工骨を取り除き抗生剤を充填した)。再度術後2週目よりPT開始した。現在は術後9ヶ月経過で屈曲140°、全荷重の状態である。日常生活では階段降段時に大腿骨遠位中央部に疼痛が出現するということで、治療としては大腿四頭筋筋力増強、大腿四頭筋・大腿筋膜張筋のストレッチがなされていた。屈曲可動域獲得のために事前に筋活動を高めると大腿遠位中央に鋭い疼痛が出現し、その後は圧痛も認めるということであった。ビデオでは膝最大屈曲時に下腿外旋位が確認された。検討内容としては、更なる屈曲可動域の改善は可能かということとその際の治療法、痛みの原因と治療法についてであった。フロアからは屈曲制限の原因も疼痛の原因も中間広筋・膝蓋上嚢の滑走障害、外側支持組織の伸張性低下が関与しているのではないかと指摘された。中間広筋の滑走障害に対しては長軸方向の動きだけではなく、横軸方向の動きを引き出すことが重要だとの指摘があった。いずれにしても膝関節運動時にPF関節の運動軌跡が乱されていることで出現してくる現象と捉えられる。下腿の位置を変えての階段降段や、膝最大屈曲位で膝蓋骨の位置を変えてみるなど、いくつか条件を変えて運動時痛の変化を抽出して治療ターゲットを絞り込んでいくことが必要と思われた。感染が関節内と関節外の違いについて治療法に違いがあるのかというフロアからの質問について、関節内の場合は滑膜炎が発生することで軟骨の脆弱化が生じ、疼痛にて関節運動ができないので不動による更なる軟骨脆弱化が起きる事が予想される。運動療法としては低負荷高頻度の刺激を与えていく必要があり、積極的な運動はCRPの値が0.2から0.3にまで落ち着かないと危険であることが指摘された。また、締めとして感染後の成績として屈曲140度は素晴らしいということでかなり高い次元の検討内容であることが示された。
                    (文責:平針かとう整形外科   岡西尚人)

症例3 60歳代 女性  左大腿骨内側顆骨折・後十字靭帯断裂(保存)

本症例は下り坂を自転車走行中、後方から自動車に接触され転倒、受傷した。まず受傷機転が検討され、転倒の際、膝をつき直達外力により左大腿骨内側顆骨折、その後自転車が左下肢に乗りかかるような状態になったことにより、膝関節屈曲位で下腿に外旋が加わったことで、後十字靭帯が中央部で断裂したものと推察された。MRI上後十字靭帯は中央部で断裂していることが確認された。受傷後3週はギブス固定、受傷後5週より理学療法が開始となった。PCL断裂は理学療法開始後posterior sagging(+)であったことからMRI施行により確認された。受傷後7週よりPCLサポーター装着下に10kg/週で荷重開始となり、受傷後9週目現在20kgPWBとなっている。理学所見として左膝周囲に浮腫(+)、posterior sagging(+)、knee in傾向、ITTlig及びVL tightnessが認められた。膝関節屈曲125°、伸展0°(股関節屈曲位)、背臥位では膝関節軽度屈曲位となる。圧痛は膝関節内側裂隙に認められ、膝関節屈曲125°付近で膝外側と後外側に疼痛が出現するとのことで、Ely test 左(++)、Thomas test 左(+)、Ober test 左(+)であった。まず、PCL断裂に関して、保存でPCLが自然再建されることは考えられないことから、基本的にはPCLを考慮する必要はないと考えられる。ただPLRI(後外側不安定性)が認められることから@鵞足炎の確認し、A股関節・膝関節の屈曲拘縮を改善していくこと。荷重面の関節内骨折であることから、B荷重は慎重に、特に最終伸展位での荷重に注意し、tapingや膝装具でPLRIに対応しながら進めること、DPLSposterior lateral structure)のトラブルが想定されること、popliteus compartment syndromeなどに考慮し、insoleなどで下腿を内旋誘導するのも1つの方法ではないかとの意見も出た。また荷重が進んできた段階から、ECKCでの膝関節伸展を促すことで、PLRIの安定化を図り、膝関節のnormal tradkingに近づける。F膝関節のroll back mechanismPCLは関与しないとの報告もあり、膝関節屈曲において膝関節後方での支点を形成する工夫(何かものを挟むなど)、GPCLhamstrings complexに考慮した理学療法の展開も必要との意見もあった。本症例に限らず、今回のような症例では、荷重の進行とROMに焦点が当てられがちであるが、膝関節の関節内骨折においては経過の中で、二次的に変形性膝関節症に移行することも考慮した上で、膝関節運動の軌跡を如何に正常に近づけるか、拘縮治療をしっかり行った上で、静的・動的Alignmentに関して徒手的なアプローチに捉われず、insoleや装具も含めた理学療法の展開が必要であると考えられる。
                                            (文責:大阪医専 小野志操)

症例4
  10歳代  男性  野球肘

 本症例はピッチャーとして能力の高い選手である。投球中に右肘関節部の疼痛が増強したために、来院した。エコーにより右MCLの不正像と内側上顆の剥離骨折を認め、投球の中止と投球フォームの是正を含めた運動療法が開始された。今回はJobeの分類を用いて投球相が検討された。また治療前と治療開始4w後の投球フォームがビデオ撮影により比較された。治療前ではaccerelation期において肘下がりスタイルが若干目立った。肘下がりは、肘関節の外反トルクが増強するため、内側支持機構に過負荷が生じ、今回肘関節部の損傷を招来したと考えられた。治療開始4w後では、肘下がりフォームが是正されていた。しかし、症例は肘下がりを意識しすぎたためか、Take Backが大きくなり、いわゆるLate Cocking期に肩関節の過伸展が増強していた。またaccerelation期においては、治療前、肘伸展が上手く使えていたのが、治療開始4w後では肩関節の内旋が増強し、さらにクロスステップが指摘された。治療開始4w後も、これらの要因により肘関節の外反トルクが完全には是正されていないと様々な指摘を受ける一方で、ボールを持って投球すると、比較的上手く一連の投球ができていたので、実際の投球とは必ずしも一致しない事の認識も重要である。機能学的なレベルについては、エコーによりMCLの不正像と内側上顆の剥離骨折部は治癒されていた。また肘関節周囲組織の機能障害のみならず、肩甲帯周囲筋として重要な役割を担う僧帽筋中部線維、下部線維のweakness、肩関節後下方の関節包、腱板などのtightness、さらには体幹、股関節、足関節を含めた柔軟性の欠如を認めた。これらの要因は結果的に肘下がりスタイルの助長や肘関節の外反トルクを増強するため、運動療法の実施により早期に改善することが望まれる。実際の臨床においては、技術的要因と機能的要因が複合的に混在され、その結果、関節に機能障害が生じる。このため、理学所見や画像所見を見極め、得られた情報から詳細に分析して指導ならびに治療を実施する必要がある。これらの統合と総合的な解釈が本症例において重要であると考えられた。
                                        (文責:吉田整形外科病院 赤羽根 良和)