174回整形外科リハビリテーション研究会報告

2008.11.15 於:パシフィック栄久屋大通駅前店 

症例1 40歳代 女性 ACL損傷後、右後足部(踵骨)外側にしびれを呈した症例
 

現病歴は1月に左ACL断裂し、他院受診。保存療法を選択され、2月に当院にて理学療法を開始した。10月初旬に誘因なく右後足部外側にしびれと疼痛が出現し、その後症状が増悪(しびれ出現から3日後には知覚検査にて左の2 /10 )し他院にて腰部・右膝のMRI検査、下腿近位から遠位にかけて末梢神経伝導検査を行ったが原因不明と診断された。既往歴は16年前に左ACLPCLMCLLCL損傷、6年前に仙骨骨折、人工じんましん、現在左膝腫瘍の経過観察をされている。趣味はスポーツでスキー・テニス・エアロビクスなどである。しびれの所見を中心とした理学所見が示された。SLRにおいて足関節底屈位では80°(左も80°)でしびれは出現せず、底背屈0°では20°で後足部外側に放散痛を生じた。また足関節背屈での変化では、膝伸展位での背屈は5°(左は10°)にて放散痛が軽度出現し、膝屈曲位の背屈では20°(左25°)では放散痛は出現しなかった。Tinel signは陰性であった。後足部外側の皮膚を滑らせるとしびれは増強し、後足部回外でも増強した。歩行ではtoe offでしびれを生じた。圧痛は梨状筋・膝窩筋・腓腹筋・長短腓骨筋・後脛骨筋・長母指屈筋・長指屈筋・脛骨内側・踵骨外側に認めた。坐骨神経の滑走訓練後の症状の変化は認められなかった。テーピングやInsoleはじんましんの発症が懸念され、本人の拒否があり実施できない状況であった。フロアの意見をまとめる。しびれは腓腹神経の外側踵骨枝が関与している末梢神経障害という見解でほぼ一致した。発症した要因として左膝の不安定要素により二次的に生じた可能性、人工じんましんによる皮下組織の癒着、膝窩レベルでの障害などの意見が挙がった。再評価として末梢神経の損傷を確定するために発赤・熱感・発汗異常、エコー下での神経の滑走を評価すること、膝窩レベルの評価を行うなどが挙げられた。治療としては腓腹筋・ヒラメ筋・深層屈筋・腓骨筋のリラクセーション、皮下の滑走性を獲得するアプローチなどが挙げられた。また、荷重位で踵骨のcontrolをしなければ改善が難しいことが予測され十分なムンテラをし、Insoleを処方したほうがよいのではとの意見があった。二次的に生じたと考えるのであれば左膝の不安定要素を改善すべく、減量などの全身control装具の検討も視野に入れるべきとの意見があった。検討後、提示者がその後の経過を示された。外側踵骨枝の皮下での滑走性の改善、下腿後面の軟部組織の柔軟性が改善され背屈可動域の拡大およびしびれの改善を認めSLRの左右差も消失し、ADL上の問題はなくなったことから末梢神経障害であったことが明らかとなった。誘因なく生じたしびれについては解釈が難しく、中枢性か末梢性を明確にする必要性があり、他の所見と理学所見を丁寧に確認することが重要であることを再認識した。また、皮膚の問題によりテーピングやInsoleが使えない本症例のようなケースに対し機能解剖学的な要素でどこまで改善できるかを考え治療を工夫することが臨床の場面では重要であると考えられた。
                     (文責:城北整形外科クリニック 森田竜治)


症例2 10歳代 男性 4腰椎分離すべり症

1年半マエから左腰部痛が出現し、第4腰椎分離すべり症と診断をされ、ダーメンコルセットの処方と下肢タイトネス除去を実施。その後来院しなくなり、約1年後に歩行200mくらいで両下肢に張りと疼痛が出現するようになり再び来院、そのころには分離は完成し、L4/5の狭小化と動揺性があった。その後一旦リハビリには来なくなり、2ヶ月前から再々度リハ開始となった。なお、上記で来院した病院はすべて同一だが、途中他院にて分離部ブロックを施行され一時症状は軽減したとのことであった。検討項目は病態の解釈、今後の治療方針についてで、いくつかの小グループに分かれディスカッション様式にて検討を行っていった。理学療法所見としては、SLR70度・左70度にて下腿後面痛が出現し、しゃがみこみ動作にて下腿前面痛が出現、足関節周囲筋の反復収縮やランニングなどで下腿全体に張りや疲労、疼痛が出現という所見であった。下腿前面痛であるが、発表者は前脛骨筋のコンパートメント症候群を疑っていたが、症状に左右差がないことから、別の病態も考えられるかもしれないという意見も見られた。しかし、立位時に後方重心が見られ、重心を戻すために前脛骨筋が持続収縮をしており、それが原因となりコンパートメント症候群を発症したのではという意見も見られた。また、過負荷の場合は両側性に症状があらわれることもあるという意見もあり、血圧も上肢より下肢の方が最高・最低共に30mmHgほど高いことから、本症例もコンパートメント症候群の可能性が高いのではないかと考えた。また、しゃがみこみ時の下腿前面痛はコンパートメント症候群に加え、第4腰椎分離すべり症が原因で腰椎の可動性減少が生じ、腸骨に対しての仙骨の前傾(おじぎ)が減少し後方重心となり、重心を前方に移動させようとして前脛骨筋が過剰に収縮をし、疼痛が出現するのではないかという意見も見られた。下腿後面痛であるが、発表者は坐骨神経症状を疑っていたが、SLRの制限が少ないことや、大腿後面に症状が見られないことから坐骨神経症状と考えるのは難しく、膝関節後面での筋のれん縮や神経の滑走障害をもう一度細かく評価しなおす必要があるのではないかと考えられた。今後の治療については、まずは末梢症状からのアプローチで一致し、前脛骨筋へのストレス除去を目的としたインソールの処方や補高。コンパートメントの除圧に対して、足関節をしっかりと底屈した正座などが有効的ではないかと考えられた。中枢側の問題と末梢側との問題が関連しているのか、それとも個々に別々の病態なのかをしっかり鑑別するために、丁寧な評価と機能解剖学的な知識は必要不可欠なのだと再認識することができる、有意義な症例検討であった。                       (文責:佐藤病院 原 哲哉 )

症例3 30歳代 男性 橈骨遠位端骨折

転倒し左手を着いて受傷。受傷肢位は左前腕回外・手関節掌屈位であった。同日ギプス固定(保存療法)がなされ、受傷後3週よりリハビリ開始となった。検討項目として@受傷機転が掌屈回外位で、橈骨遠位骨片がなぜ背側に転位したか、A可動域訓練を行う際、手根不安定症に注意する点、B今後の理学療法の進め方、が挙げられた。@については、橈骨関節面の月状骨と接する部分に陥没が生じており、軸圧が加わって橈骨遠位が背側に転位したとの意見がでた。Aについては、SL50°で、舟状・月状骨間に圧痛所見もあることから舟状・月状骨間はやや不安定な印象をもつが、まずは癒着の生じやすい伸筋腱の滑走を十分促したうえで手根不安定症を評価すべきとの意見がでた。Bについては、骨折部にストレスが加わらないように徒手的に固定し、 Radiocarpal jtを動かすこと。Radiocarpal jtから動かすのが怖いなら、Midcarpal jtから動かすとの意見がでた。                       (名古屋スポーツクリニック 永井 教生)