177回整形外科リハビリテーション研究会報告

2009.3.14 於:東桜会館

 症例1 65歳女性 上腕骨近位端骨折

平成21年1月21日スキー中に転倒受傷、2月17日までベルポー固定、その後は三角巾固定、3月3日から運動療法開始となった症例である。既往歴として脳梗塞があったが、麻痺などの症状は出ていない。現在施行している運動療法として、座位で机の上に肘をついて臼蓋上腕関節の求心位を得た状態で、セラプラストをちぎったり、ペグを用いた運動療法を計40分ほど行うことと、背臥位にて徒手的に臼蓋上腕関節を求心位に保ちながら自動介助運動を行っていた。現在ROMは肘関節伸展−20°、肩関節屈曲100°、1st外旋20°、内旋70°、scaption45°外転位外旋30°、内旋60°、3rd外旋70°、内旋−20°です。肩関節屈曲最終域では、上腕近位外側に疼痛が出現するが、rotator cuffの圧痛は軽減している。筋緊張は高い方なため、三角巾の方法を工夫して上肢全体の緊張軽減を図っていた。骨折部の安定は透視にて確認しているが、患者の不安感が大きく、下に抜けそうな脱臼不安感を訴えている。検討項目は、肩関節機能予後について・三角巾を外すタイミング・具体的な治療法についてされた。三角巾を外すタイミングとしては、フロアーから、肩関節の屈曲MMT4レベルあれば、許可しているとの意見があった。またADL上、少しずつ外すようにしていくということも言われた。あと三角巾の吊り方の工夫は必要であり、本症例では首から吊っていたため、肩から吊ったほうがよいのではないかという意見もでた。治療としては亜脱臼へのアプローチとして肩甲帯の安定化を図っていくことが重要だと考えられた。肩甲骨が下方回旋位になっており、棘上筋の効きも悪くなるため、まずは肩甲骨を上方回旋位に固定できるようにIST muscleのex’sを行っていくことが必要である。IST muscleがうまく使えない場合などは、clavicle bandや8の字に包帯を巻くなどで姿勢をよくして、働きやすい状態をつくる工夫の意見もでた。骨折は大結節の上方転位というより骨頭が下がっており、骨頭の突き上げ力がかかって折れたのでは、という指摘があり、肩峰下での上方支持組織の癒着についても治療の対象としていかなければならない。また肩関節屈曲90°くらいから自動で挙上できない患者さんに、背臥位で上肢を90°挙上位にしてそこで小さい円を描くように運動をすばやくさせる運動を継続させることで、あがるようになったとの意見もあり、臼蓋上腕関節の求心位を得た状態での運動の工夫が必要だと感じた。(吉田整形外科 近藤 照美)

症例2:橈骨頭粉砕骨折・内側側副靭帯損傷

 40歳代の男性で、一年前の3月にバイクにて転倒し左橈骨頭骨折(Morrey分類 typeV)・
内側側副靭帯損を受傷した。橈骨頭は粉砕し大きく3つの骨片に割れおり、また一部骨欠損を認めた。MCLは上腕骨側で剥脱していた。受傷9日後に橈骨頭に対しては観血的骨接合術とMCLに対してはsuture anchorが施行された。術後4週目から外来での運動療法が開始された。当初は、肘関節屈曲90°、伸展−40°、前腕回内30°、回外20°であった。運動療法は上腕筋や上腕三頭筋内側頭の収縮訓練を中心に進め、前腕回内外に関しては自動運動のみ行っていた。術後16週目から肘関節伸展と前腕回内外の可動域訓練を積極的に行っていた。途中前腕回内時に肘関節橈側にclick音と疼痛が出現したため、それ以降は、前腕回内以外の可動域訓練を継続し、本年2月下旬には肘屈曲120°、伸展−20°、前腕回外40°、回内20°であった。click音と疼痛の原因については、回内時にプレートとLCLが擦れることにより生じていると推察されていた。骨折部の安定が得られた時期を待って、本年3月初旬に抜釘術と同時に受動術が行われた。橈骨頭周囲は瘢痕組織で占められており、この瘢痕組織を剥離することで回内45°、回外90°の可動域が獲得された。抜釘術3日後で肘屈曲103°、伸展−25°、前腕回外60°、回内22°であり、疼痛により可動域が制限されている状態であった。今の時期やれる事・禁忌事項、注意点、肘屈曲・伸展、前腕回外・回内の可動域のゴールと改善のポイントについて検討がなされた。前腕の回内外に関しては、抜釘術時に橈骨頭周囲の瘢痕組織を剥離したことで可動域が拡大していたので、LCL complexを中心に伸張性の維持・改善を目指すべきと思われた。今は術後の炎症期に当たり、腫れや熱に伴う組織内圧の上昇が生じていると思われicingや圧迫などの処置を重点的に行い、可及的に術中可動域の維持を心掛け剥離後の再癒着を予防する必要性が指摘された。さらには、剥離した組織が具体的にどこなのかを確認できれば再癒着予防の治療にとって有益な情報になると思われた。肘屈曲・伸展に関しては、レントゲンから得られる情報として上腕骨小頭の屈伸軸より橈骨の長軸線の位置が後方にずれているので、可動域が制限されやすい状況にあるとの解説がされた。それを踏まえて、上腕筋や上腕三頭筋内側頭の伸張性や柔軟性を獲得するために更なる筋収縮を高めていく必要性が指摘された。また、長橈側手根伸筋も屈曲制限因子になり得るとの説明がされた。また、禁忌事項としては、抜釘後の再骨折の危険性があるため、当分は橈骨頭の操作は愛護的に行うべきとの意見が出た。注意点として、前腕の回旋運動は橈尺間が密着していることが必要であり、不用意な回旋は遠位橈尺関節のルーズニングが生じる可能性があるためバンドなどで圧迫する必要性が指摘された。経過が長く可動域制限の原因も複数因子が複雑に関与していると思われ、ひとつひとつ丁寧に評価し治療を展開していくことが求められる症例と思われた。            (文責:平針かとう整形外科 岡西尚人)

症例3 60歳代 男性 肩関節周囲炎と診断された症例

  本症例は何年も前から右肩疼痛があり、1か月ほど前から特にエピソードなく右肩の疼痛が増悪した症状で来院した。既往歴として50歳代での両肩関節周囲炎があり、特記事項としては尿酸値とCRPが基準値を超えている点があげられた。
理学療法所見として、ROMは右肩水平内転(105°)、2nd内旋(10°)、3rd外旋(30°)、結帯動作(Th10レベル)にて制限や左右差を認め、MMTでは僧帽筋中・下部線維が3レベルと筋力低下を認めた。動作時痛は右肩水平内転と2nd内旋時に見られ、圧痛は棘上筋(大結節付着部)・上腕二頭筋長頭腱・肩甲下筋・小円筋・QLS部に認められた。また、夜間痛もあり、これは肩挙上位にて就寝すると軽減されたとのことであった。整形外科的テストでは、Neer・SSPテストが陽性で、Painful arc signは屈曲90°以上、外転60〜90°にて認められた。
検討項目は疼痛の解釈と、具体的な治療内容であった。
フロアーでのグループディスカッション後の意見では、肩峰下滑液胞や棘上筋などの肩峰下での炎症や癒着による疼痛や、SLAPや腱板・ISTの弱化、肩峰下組織のtightnessなどの複数の原因による骨頭の支点形成不全による運動時痛が原因ではないかという意見があげられた。治療としては、SLAPについての評価を再度詳しく行うこと、肩峰下組織に対してリラクゼーションや拘縮除去、支点形成に対してカフトレーニング・僧帽筋中下部線維を中心としたISTへのアプローチを行い、肩甲上腕関節の安定化を図ることなどがあげられた。
肩関節周囲炎は臨床にてよく遭遇する病名であるが、その症状は拘縮や疼痛、筋力低下など様々みられ、また、その原因となっている組織も筋、関節包、滑液包、靭帯など様々である。本症例の検討は、臨床にてその様々な症状、原因を解釈するための知識や技術を身につけるためにも、非常に有意義な症例検討であったと考えられる。                                       (佐藤病院 原 哲哉)