179回整形外科リハビリテーション研究会報告

2009.5.16 於:名駅モリシタ名古屋前中央点

 症例1 右外側広筋断裂、左外側半月板損傷を呈したハンドボール選手

 20代女性、右投げの実業団所属選手である。ポジションはサイド、競技歴は14年である。現病歴はH20.2左膝関節のねずみの切除術と右半月板切除術を施行し、同年5月に右外側広筋の横断裂に対して縫合術を施行した。H21.3左膝関節痛の再発のために当院受診となり、4月から理学療法開始となった。5月にスクワット時に右外側広筋の再断裂を呈した。既往歴には平成16年に右膝関節ACL再建術を施行した。初診時の理学療法評価は右膝関節でスクワット時の深屈曲位から伸展運動で膝蓋骨外上方に疼痛を伴い、動作が困難であることと、深屈曲位での踏ん張りが利かないこと。視診・触診で外側広筋の膝蓋骨付着部よりやや近位に陥没を認めた。またVM・VL・VIの横方向への滑走性の低下を認めた。ROMは屈曲140°、伸展0°、extention lag 0°であった。左膝関節では自動最終伸展が膝蓋靭帯部とその内外側部の疼痛のために不可能であり、ジョギングが困難である。視診・触診で膝蓋骨の低位、膝蓋下脂肪体の内外側方向の滑走性の低下、下腿他動外旋が大きく、内旋が小さかった。ROMは屈曲140°、伸展0°、extention lag -15°であった。右膝関節の疼痛の原因は外側広筋の再断裂であると考えられるために治療としては、現時点では安静とする。受傷機転からその機能背景を考えると、50kgでのスクワット動作で筋断裂する要因は、一回目ではマルアライメントによるVMの筋力低下とVLの過負荷状態などが挙げられる。二回目では一回目の縫合部の瘢痕治癒の状態を考えなければならない。外側広筋の中に瘢痕周囲と正常な組織が存在し、その間の柔軟性が低下することで一回目の断裂部位より遠位で断裂が生じたと思われる。治療方針は下腿内旋の制動や内側広筋の筋力増強などによる外側広筋への伸張ストレス軽減、瘢痕組織の柔軟性の獲得である。左膝関節の疼痛とextention lagの原因は膝蓋骨周囲の拘縮、半月板のインピンジメント、AKP、PFjtの拘縮が挙げられる。治療方針は拘縮の改善、インソールによる大腿内旋、下腿外旋の制動が挙げられる。
                                             (文責:一宮西病院 田中 和彦)
 
 症例2 橈骨遠位端骨折

 症例は70歳代の女性である。本年1月上旬に自転車にて転倒し、橈骨遠位端骨折(掌側Barton骨折)と診断された。保存療法が選択されギプス固定された。ギプス固定中の受傷4週後よりPT開始された。手指は全体に拘縮しており、肘関節は屈曲135°、伸展−5°であった。受傷後6週でギプス除去され手関節の自動運動が許可された。MP関節屈曲90°、前腕回内30°、回外90°、手関節背屈20°、掌屈25°でgrip動作では手背部に疼痛が出現した。骨癒合が確認された受傷8週後には他動運動が許可され、受傷16週後の時点では前腕回内75°、回外90°、手関節掌屈45°、背屈40°、握力3.5kg(反対側17kg)であった。レントゲンでは、橈骨のRadial lengthは短縮しており、背側にも骨折線を認め、尺骨プラスバリアントが確認された。レントゲン、年齢、日常での活動性などを予測した上で、ギプス固定中、ギプス除去後の自動運動許可期、他動運動許可以降それぞれの時期に施行するプログラムについて検討された。整復が不十分であること、年齢的に骨の強度が確証が持てないことなどからRadiocarpal関節での可動域を求めるのは無理があると思われた。橈骨の変形を予防しつつ、Midcarpal関節の可動性を引き出していくことが重要である。ギプス固定中では、手指の拘縮予防が必要ではあるが、強い手指の屈曲は橈骨に軸圧が加わり頭骨の短縮、変形を助長してしまう危険性があるので、手指を遠位に牽引しながら運動を行うなどの工夫が必要であると思われた。ギプス除去後自動運動許可期では、浮腫管理、手外筋の腱滑走改善が必要となる。特に、橈骨遠位端骨折では伸筋支帯、屈筋支帯レベルで損傷後の癒着・瘢痕が生じておりこのレベルでの拘縮は必発であり、この部位での腱の可動性を引き出すことがその後の手の機能改善につながると思われる。自動運動の内容としては前腕回内45°での橈背屈・掌尺屈(ダーツスロー)運動がMidcarpal関節の運動となるので多用するべきである。他動運許可期はその継続でよいと思われた。全般を通じて指摘されたことは、過度なgrip動作は橈骨の短縮を時助長するので、単純に筋力強化訓練を行うことは慎むべきである。また、遠位骨片が掌側に変位しているため、過度な背屈は正中神経や屈筋腱の断裂につなぐがる可能性も指摘された。本症例のように、関節内骨折であるにもかかわらず解剖学的整復と内固定が不十分である場合では、ゴール設定がどうしても低くなりがちではある。しかし、「整復が不十分だから」・「内固定が不十分だから」という条件を成績が悪い理由にするのではなく、条件が悪くても「良い成績」に導くためにどんな工夫ができるのかを深く考えるべきであるとの指摘がなされた。                           (文責:平針かとう整形外科 岡西尚人)