181回整形外科リハビリテーション研究会報告

2009.10.17 於:名駅モリシタ名古屋前中央点

症例1 80歳代 女性 第4腰椎圧迫骨折

 既往として胸腰椎圧迫骨折、円背変形のある症例が呈示された。この症例の場合、保存療法がとられ通常であれば硬性コルセットを作成するところ、既製品の軟性腰椎装具と胸部固定帯2個使用し疼痛がコントロールできたところから軟性コルセットを作成し疼痛を良好にコントロールできた状態で退院できた。入院当初は、VAS10、CRP10.1、WBC15600、MRI所見では椎体や椎間後方に水分貯留がみられ椎体炎を疑う所見であったが2週間後ではCRP0.4、WBC9000と改善がみられた。理学療法は、3週目より開始となった。11日後、退院となったが、VAS2.5(装具未装着時)、0(装具装着時)退院時は歩行器歩行200m、T字杖10m可能となった。今回、装具の作成は、立位採型で行い、伸展矯正位にて採型した。円背により椎間関節の脱臼位転移、背側組織の伸張、椎体前面の圧迫を防止するために装具は、通常作成する軟性コルセットの上下に軟性材料の固定帯を付け足した。支柱は背面と側面に配し前面の支柱がない構造で作成した。装着は、ベッド上で寝ている状態で自己装着ができるような、操作が容易なものを作成し装着後は、床上動作においても疼痛がなかった。訓練は、股関節の可動域が十分に保たれていたこと、円背といっても上位胸椎は安定したアライメントを保っていたことからから今回の受傷により損傷した組織や後方組織のinstabilityを注意して立位姿勢で上肢を挙上する訓練を中心に行なった。フロアより骨盤を前方で固定することでL4に対する前方へのモーメントが抑制されているのではないかと意見があった。また、疼痛は、コントロールされているが今回は軟性コルセットに変更しているので椎体の圧壊率を半年とか一年単位で経過を追って硬性コルセット装着しての圧壊率と比較するなどの評価が必要ではないかという意見がだされた。
                                               (文責 木村病院 神山卓也)

症例2 Osgood-schlatter病と診断されたスピードスケート選手
 
 症例は10歳代前半の女性である.現病歴は約1年前,左脛骨粗面痛を訴え来院され,Osgood-schlatter病と診断された.その後3ヶ月間の運動療法にて疼痛は消失したが,10月初旬に疼痛が若干再燃したため再来院しOsgood-schlatter病と再び診断された.疼痛はスピードスケート時のコーナリング(左回り)時,しゃがみ込み,片脚スクワット時に訴えていた.初診時理学所見は,脛骨粗面中央・内側に圧痛所見を認めスクワテッィングテストでKnee inで疼痛が増強しKnee outで消失した.安静時痛や熱感,腫脹は認められなかった.筋性拘縮はOber test変法が陽性で股関節,膝関節,足関節に特別な制限は認められなかった.しかし筋力は股関節外転で弱化を認め,他の特異的な弱化は認められなかった.超音波画像では膝屈曲時の膝蓋下脂肪体の後方(背側)への移動量が反対側と比べ低下や深膝蓋下包の低エコー像が描出された.通常,本病態は大腿四頭筋など膝関節伸展機構の短縮により,反復される脛骨粗面への機械的刺激に伴う同部の剥離損傷と考えられている.しかし本症例には大腿四頭筋の拘縮は認められないため,大腿四頭筋以外の要素が脛骨粗面へ機械的刺激を与えていることが考えられた.本症例における病態は,コーナリング時の左側股関節屈曲/内転位というKnee inを助長する姿位や股関節外転筋不足も加わり,さらにKnee inが助長されていることが考えられる.つまりスケーティング時の股関節外転筋力の強化による安定性が必要不可欠となってくる.また局所における病態へのアプローチも膝伸展ベクトルを減少させる重要な要素である.それは膝蓋下脂肪体の変性や膝蓋靭帯などとの癒着より脛骨粗面への牽引力の増大を生じさせていることが考えられるため,これらの癒着剥離が重要になってくる. このように,Osgood-schlatter病と診断された場合においても,脛骨粗面への局所的なアプローチのみだけではなく,Dynamic alignmentに対するアプローチも重要であると思われた症例であった.
                                            (文責:吉田整形外科病院 増一太)                                            

症例3 左足関節脱臼骨折の一症例

 50歳代の女性で、自宅の階段を踏み外し受傷した。救急外来受診し左足関節脱臼骨折と診断され、同日徒手整復術後シーネ固定された。翌日からPT開始となり、足趾の運動と患部外の筋力強化がなされた。受傷後7日に骨接合術が施行された。脛骨はキャニュレイテッドキャンセラスクリュー、腓骨はフィブラプレートで固定された。術後4日後からPT再開され、足趾運動、患部外筋力強化が施行された。術後14日後にシーネを外され、術後14日後のROMは、背屈-5度、底屈35°、内返し0°、外返し0°であった。圧痛は、遠位脛腓関節、長母趾屈筋、長趾屈筋起始部に認めた。下腿から中足部にかけて浮腫があり、足趾屈曲時にMTP関節背側に疼痛が出現した。足趾運動、患部外筋力強化を中心に行い足関節のactive assistでのROM exが追加された。術後28日後のROMは、背屈15度、底屈50°、内返し25°、外返し15°であった。圧痛は、遠位脛腓関節、踵腓靭帯、内果、腓骨筋腱に認めた。足関節中心に浮腫が残存し、足関節背屈時に前方に詰まり感と足趾屈曲時にMTP関節背側に疼痛が出現した。現在は、浮腫管理、後脛骨筋、長母趾屈筋、長趾屈筋、腓骨筋の反復収縮とストレッチと周囲靭帯のストレッチが行われていた。「損傷している軟部組織とROM訓練を進める上での注意点」について検討がなされた。受傷時のレントゲンでは、内果の横骨折、脛腓関節レベルでの腓骨の斜骨折、後果骨折、距骨の著名な後方転位が確認できSERW型と思われた。フロアーからは、遠位脛腓関節の損傷が窺がわれ、脛腓間ポジショニングスクリューが施行されていなかったので、同関節のルーズニングに注意しつつ、あまり早期に背屈可動域を求めないようにと指摘が挙がった。しかし、詳細にレントゲンを観察すると今回の内果骨折は横であり、SERでは垂直骨折である場合が多く外旋外力ではなく外反外力が加わった可能性が高い。しかし、後果骨折は前方から後方へ突き上げられた感じで後方に転位しており、単純なPAタイプでもない。距骨が著名に後方転位してことを総合すると、階段を踏み外し底屈外反位で踵から接地し、足関節に外反力が加わり内果横骨折が、さらに天蓋後方に前下方から上後方へ軸圧が加わり後果骨折と距骨後方脱臼が生じたと推察された。それをもとに、受傷組織を考察していくと、前脛腓靭帯の損傷はあろうが骨間膜は保たれている。距骨が後方転移しているので後方関節包の損傷は当然だが、前方関節包や伸筋支帯の損傷があると考えられた。骨折部の固定性は良好なので、特に慎重になることなくROMは順調に推移しているので、このまま筋収縮による腱滑走、周囲軟部組織の可動性を維持、改善を促していけばよいと訂正された。また、伸筋支帯の拘縮による伸筋腱の滑走障害に注意すべきと指摘があった。果部骨折では、Lauge-Hansen分類にて受傷機転を考察する場合が多いが、すべての症例が当てはまるわけではない。「症例を分類に当てはめて考える」のではなく、症例をそのまま見て考えていくことが重要で、レントゲンを詳細に診てそこから各組織にどんな外力が加わったかを推察することの大切さを痛切に感じた。
                                        (文責:平針かとう整形外科 岡西 尚人)