182回整形外科リハビリテーション研究会報告

2009.11.21 於:愛知県産業貿易センター

症例1 60歳代女性 右大腿骨顆上骨折・異所性骨化

 階段より転落して受傷した.前下方から後上方に向かう斜骨折を認め、遠位部は後方へ転位していた.また、内側顆・外側顆にも関節面に及ぶ骨折線を認めた(AO分類C-1).神経損傷などの合併症は認めなかった.Gardy結節より近位に16cmの皮切を加え、ロッキングプレートを用いた骨接合術が行われた。整復・固定ともに良好であったため、早期より非荷重での運動療法が開始された.膝関節の可動域は術後1ヶ月の時点で他動伸展0°、自動伸展−30°、自動屈曲95°であった.膝蓋骨中央上縁より近位に5cmのやや内側寄りの場所に腫瘤物を認めた.超音波エコー検査を行ったところ、骨折部のやや近位部に骨縁から中間広筋に向かって腫瘤を認め、自動での伸展・屈曲に伴って大腿四頭筋側が近位方向・遠位方向に動く様子が観察された.術後2ヶ月の時点で自動伸展−20°、自動屈曲125°まで改善した.エコー像では腫瘤物が骨化し、自動での伸展・屈曲による可動性がない状態へと変化していた.レントゲン写真においても骨化像が明瞭であった.膝関節屈曲により同部位の疼痛を訴えていた.異所性骨化の病態解釈、ROM制限因子、運動療法の適応と方法、今後予測される合併症などが検討課題であった.経過から判断すると異所性骨化は転位を伴った骨折時に発生した血腫から骨化に至ったものであり、暴力的な運動療法のためではないとの意見がフロアより出された.異所性骨化が可動域制限の原因になっているかどうかが問題となったが、エコー像において大腿四頭筋と骨との間に滑液包を形成してその上をうまく滑っているため、直接的な制限ではないとの見解が示された.可動域制限は、侵襲が大きいこと、ロッキングプレートによって余裕がないことなどから外側広筋側の拘縮によって起きている可能性があるとの意見があった.屈曲時において膝蓋上嚢の横方向への滑走性についても考慮する必要がある.内側の疼痛は、外側と内側の硬度バランスの中で起きている可能性があると考えられた.これらを確認するためにも、どこの軟部組織に操作を加えながら屈曲していくと可動域が変化するかなどの所見を得ることで制限因子を明らかにしながら今後の運動療法を進めていく必要があると考えられた.今回のケースでは、異所性骨化の上を筋が滑走している様子が確認された貴重な画像があり、異所性骨化が制限因子になっているかどうかの確認や病態の経時的変化、治療効果の判定において超音波エコーが有用であることも確認できた.
                                    (文責:伊賀市立上野総合市民病院 猪田茂生)

40歳代 男性 交通外傷による左Galeazzi脱臼骨折の一症例(現場にて、評価・訓練)

 2009年10月29日、バイクにて通勤途中で車と衝突、同日手術(橈骨Locking Compression Plate、尺骨pinning)施行しギプス固定を行った。1週後、シーネ固定に変更されている。勉強会開催日は発症から3週間と2日で、背屈30°、掌屈20°橈尺屈5°で実際に症例を前にした検討会であった。
X線では、尺骨の背側脱臼、尺骨の茎状突起の骨片が大きくTFCCの損傷は軽度の可能性がある点。橈骨の骨折は、骨間膜の損傷が疑われFHLや深指屈筋の損傷が疑われる点。橈骨のアライメントは一見良さそうである点。手根骨間も大きな転移はないと考えられる点などが意見として出されていた。手術創よりDRUJの背側の靱帯は修復していない可能性が高いという点が挙げられた。
 検討会時点での訓練方針は、線維化はまだなく、背側の靱帯を修復してあれば、軽度回外位で固定6週まで回外の可動域獲得、その後、回内の可動域を獲得していく。背側の修復をしていなければ、背側脱臼を修正したアライメントで回外の可動域を獲得していくなど、方向性を明確にして進めていく必要性が示された。
 手関節の可動域改善は@近位列の動きを誘導する(舟状骨の直立化など)、A近位列と遠位列との間の可動域を獲得していくという視点から訓練すすめていく。具体的方法としては、手根骨を意識して@に関しては、遠位に牽引を加えながら掌屈、橈尺屈をおこなう。そのとき舟状骨を押さえながら動きを誘導する。Aに関しては、ダーツスローを行っていくことなどが提案された。
 前腕の回内外は尺骨の背側脱臼が起きやすいので、DRUJをフリーにしないで回外の可動域を獲得していく。現状では、前腕の浮腫や筋の圧痛があり前腕部のコンパートメント様症状があるため、筋としては、深指屈筋の環指、小指、方形回内筋、FHLの圧痛、浮腫の除去をめざし、コンパートメント様症状を改善していく。改善の方法としては、伸張反射を利用した操作が紹介された。方形回内筋の解剖学的特徴を踏まえて尺側部分の柔軟性がないと回外制限に繋がりやすい点が指摘され、その制限因子に方形回内筋と深指屈筋(特に4・5指)との滑走性が指摘された。実際の症例においても方形回内筋の浮腫が認められた。
 DRUJの予後としては、疼痛に関しては、回外運動がしっかりした運動軸で行うことができると疼痛が少ない可能性が高いことが示された。不安定性に関しては、力仕事をするような事に関しては、安定性が保てない可能性が高いことが挙げられた。症状の出現に関しては、必発するとも限らないため症状が出現した時の対応になることが示された。
                                              (文責:木村病院 神山 卓也)