184回整形外科リハビリテーション研究会報告

2010.1.16 於:テルミナ名古屋ターミナル 会議室

症例1 30歳代 男性 左肘頭粉砕骨折、左橈骨頸部骨折

 原付に乗っていて交通事故にて受傷。3日後plateにて肘頭に対して接合術を施行しシーネ固定していた。術後5週にてリハ目的にて紹介されて来院した。初診時は肘周辺の浮腫が強く、皮切部の可動性も低下しており、上腕三頭筋内側頭および上腕筋の柔軟性も低下していた。ROMは屈曲100度、伸展−30度、回内50度、回外30度、屈伸時の痛みは肘頭窩周辺、回外時は腕橈関節周辺にあった。伸展および回外時のendfeelはカツンと急激に止まる印象であった。伸展時はつっぱり感を感じていた。治療については浮腫対策と筋のリラクセーション、皮膚の可動性拡大を中心に行った。経過としては浮腫は軽減し皮膚、筋の柔軟性は向上し、屈曲120度、伸展−20度、回内70度、回外35度に改善した。透視にて確認したところplateが運動を阻害している所見はなく、伸展では肘関節前方部の開大が確認された。今後の予後、治療と制限因子について討論された。制限因子としては上腕三頭筋内側頭および上腕筋が挙げられ、引き続き柔軟性を目指すことが挙げられた。その他には関節包、靱帯も対象になるとの意見であった。問題はendfeelからしても関節運動としてアライメントが破綻しているのか、軟部組織性の制限が中心なのかであった。レントゲンからの予測からすると、骨折部の整復固定についてはある程度はなされているものの、アライメントからすると少し逸脱しているように感じた。特に橈骨の位置関係は少し前方に変位しているように感じられた。そこから考えると腕橈関節のレベルで関節運動が破綻している可能性が示唆され、それが透視での前方開大に繋がるのではないかと考えられた。plateは少し飛び出ているようには感じるが、経験則からすると邪魔するほどのものではないと判断された。勿論飛び出た長さだけではなく、肘頭窩に対して尺骨長軸に合っていれば問題は少ないが、側方にズレるとさほど出て無くても阻害因子になる可能性があることは考えられる。今回は阻害因子にはならないと考えられた。今後は改善するかどうかは言及できないが、現状での結果は少なくとも悪くはなく、今後は可及的に進めていくことになるかと思われた。伸展については前方開大を考慮して腕橈関節の橈骨頭アライメントの改善を可及的に行ってみることが考えられた。そのためには考え方として治療という概念だけではなく、正常組織の過剰な柔軟性を獲得させるといった考え方が求められる場合もある。今回もそういった側面が考えられる。持続伸張も通常では採用されるが、今回のような症例では軟部組織性でない場合があるため、そういった場合は適応が無く、時には不具合が発生する場合も考慮する必要があることを理解しておく必要もある。今後の治療の結果が経時的にどうなるのかを観察して提示して頂けることを期待したい。


症例2  60歳代  女性  頸部椎間板障害

 2年程前から皿洗いのバイトを始めてから徐々に左上腕部に疼痛が出現した。その後消失との再発を繰り返し来院時には左頸部、肩甲帯部、上腕上部に重怠い感じがあった。臥床中は良いが起きていると1時間程度で鈍痛が出現して家事等に支障が出たため、受診しリハが開始された。レントゲン上、中部頸椎の動的アライメントに異常が見られた。頸部の理学所見としては、伸展や左回旋はぎこちない動きがあり、左C5/6椎間孔圧迫にて左上腕上部に放散痛を認めた。左小胸筋、僧帽筋上部線維に圧痛を認めた。顎は若干右により、正中に戻しても右へ寄りやすかった。肩甲上腕関節周囲筋に圧痛はなく可動域制限も認めなかった。そこで、レントゲンから上位頸椎屈曲制限を中位頸椎にて過剰に屈曲を補正しているため頸椎前彎位保持筋の筋緊張は亢進していると考え、後頭下筋群(小後頭直筋、上頭斜筋、大後頭直筋)の反復収縮とストレッチを行った。その後上部頸椎の動きが改善し、顎が左にも動きやすくなると小胸筋、僧帽筋上部線維の圧痛が消失した。その後自主トレを指導しながら5回の加療で頚部痛は消失し家事も休むことなく可能となった。頸椎疾患に対してはなかなか評価・治療が確立されていない部位であり、まだまだ試行錯誤がなされているものの、今回のように運動学的な評価とそれに関与する解剖学的知識の確認、それに対するシンプルな筋のリラクセーションと柔軟性改善を行うことで、他の関節同様に結果が付いてくるのだと確認された。ただ苦手、不明瞭という意識だけでなおざりにしないで、一つ一つ丁寧に確認して試行錯誤する作業が必要であると再認識させられた。何に対しても結果ではなく、取り組む姿勢が重要であると思われる。今後の展開に期待したい。

                               (文責:国立病院機構三重中央医療センター 岸田 敏嗣)