188回整形外科リハビリテーション研究会報告

2010.05.22 於:テルミナ名古屋ターミナル 会議室

症例1 40歳代 女性 LDH術後の腰椎変性側湾症

 症例は、約10年前にL4/5の腰部椎間板ヘルニアに対して、L4/5、L5/S1の後側方固定術を施行した。固定性は現時点でもさほど緩みもなく固定性としては良好であると思われた。術後より術創部右側、右大腿外側部、左下腿前外側部にしびれが出現した。術後5年経過より強い腰痛が出現し始めた。1〜2年前より左側弯が出現出現し、特に夕方になると体の傾きと共に腰痛も増強するとのこと。約4ヶ月前にリハが開始となった。筋力は4レベルと大きな低下は見られていなかった。仙腸関節のストレステストは陰性で、前屈での疼痛は存在していた。FNSTは確認されていないが、腸腰筋や中殿筋などはボリュームが大きいかは分からないが柔軟性は低下しているとのことであった。動画にて体幹の動きや歩行を確認したが、右側弯が存在し、歩行中も同様の肢位で跛行が見られた。股関節は伸展が使えていないように感じた。レントゲン上ではこの10年で固定部はさほど大きな変化は見られないが、それよりも上位のL1/2、L2/3の骨変化が観察された。検討としては痛みの解釈と今後の治療を中心に行われた。仙腸関節の関与と股関節の可動性低下による関与が挙げられた。術後3年でのMRIでL2、L3にT1でlowに写っており、終板障害の活動期が疑われた。この時点でコルセットにて固定して活動性を制限していれば痛みや変性側湾症が防げた可能性が示唆されていた。その後現在のMRIのT1でも未だにlowのため、これ以上の変形や痛みの増悪を防ぐためにもコルセットによる固定は必要であるとの意見が出た。また、上位でのヘルニアも軽度見られるが、大腿神経の症状が椎間孔由来か鼡径部での圧排かを鑑別する必要があるとのことで、レントゲン上での上部腰椎の右側側面の骨棘変形があることで腸腰筋の過緊張が考えられ、それが鼡径部での圧排に関与することが考えられるため、筋のボリュームや硬さ等の触診評価が必要になってくる。どちらにせよPTとして対処できることは股関節の柔軟性を出していくことで腰部に対するストレスを軽減し、それに伴い筋のリラクゼーションが出来てくることで神経の圧排も軽減し、神経症状の軽減を図ることが考えられた。また、臀部や大腿外側部の神経症状も側弯による筋の過活動に伴う反応性の筋コンパートメント症状とも解釈できるため、同様に筋のリラクゼーションが症状の改善に繋がると考えられた。今回の症例は経過が長いため、様々な二次的要素が重なって現在に至っており、姿勢や痛みなどC.Cとしての症状は派手ではあるが、画像診断も含めて、経過を紐解いて可及的にPTとして出来ること、出来ないことを整理して治療を進めていくことが必要であると実感した。また、出来ることでも優先順位があることも考慮していくことが重要と考えられた。経過の報告を期待した。


症例2  50歳代  女性  大腿骨骨幹部骨折後に膝関節屈曲制限が生じた1症例

 症例は事故にて受傷した右大腿骨骨幹部骨折、右第4肋骨骨折、肺挫傷、右眼窩骨折、左手舟状骨骨折、左足外果骨折、頚椎捻挫の症例である。今回の対象は大腿骨骨幹部骨折についてである。治療としては髄内釘横止めが行われたが、第3骨片が存在し、転位していた。リハが開始になった時点では、大腿部の腫脹、熱感、内外側中間広筋の圧痛があり、安静時痛もあった。膝屈曲40度程度で大腿中央部に耐え難い痛みを訴えていた。自動伸展時にも同様の痛みが存在していた。それらに対して様々な治療を施行していったものの、術後2週を経過した時点でも変化が見られなかった。この状態で今後継続することで改善が見込めるのか、そのための評価をどうするかが検討された。その結果、骨折部付近を圧迫したり、圧を逃がしたりと軟部組織に対する操作を行ったり、股関節の内外転のポジションを変えることで、痛みやROMに変化が見られるかを確認するとの意見が出た。その後経過報告があり、結局医師と相談の上、骨片切除術が施行された。麻酔下で膝を屈曲したところ癒着がはがれたような音と共に110度まで屈曲可能になったものの、それ以上は抵抗感があったため、観血的に骨片切除術を行ったところ制限無く屈曲可能となった。この結果から制限因子は骨片であったことが示唆された。通常は骨片が制限因子になることは少ないと思われたため、興味のある症例であった。骨片については検討の中でレントゲン透視やエコーで確認するとの意見が出ていた。これらは見るポイントが違うことを理解しておくことが必要であると思われた。エコーでは骨片の先端と筋との間での辷の状態を確認することが中心となる。レントゲン透視では骨片が動くのか固定されているのかがポイントになる。ただ、骨片が固定されている場合と動く場合でどう解釈するのかを確認しておく必要がある。固定されている場合は可能性として先端で筋の滑走を邪魔して、損傷を引き起こしている可能性が示唆される。動く場合でも骨膜刺激が入るような動き方と、完全に分離して移動する場合が考えられるが、後者の移動する場合は骨膜刺激は入らないので疼痛には関与しないと考えられる。骨片の状態を様々な状態で評価することが必要であると思われた。また、今回の原因が骨片であることは可能性としては高いのは間違いないが、確実にするためと、約3週間の時間のロスや患者への苦痛を考慮すると、固定術を行った時点で膝が完全に屈曲できるかを確認しておくことが重要だと思われた。その時点で制限があったならば、骨片切除を同時に行った可能性もあり、苦痛無く経過した可能性も否めない。また、今回は3週経過で摘出術を行っているが、これが早いのか、遅いのか等判断が難しい事はあるが、結果的には良好な結果であった。こういった症例を経験したことで、今後非常に参考となる。骨片も制限因子の一つとして記憶しておきたい。


                              (文責:国立病院機構三重中央医療センター 岸田 敏嗣)