189回整形外科リハビリテーション研究会報告

2010.06.19 於:テルミナ名古屋ターミナル 会議室

症例1 60歳代 女性 右後腹膜軟部組織悪性腫瘍に対する広範切除+腸骨合併切除術後の1症例

 症例は、右大腿部痛、腰痛を自覚して受診し、検査等を経て6ヶ月後腫瘤広範切除+腸骨合併切除術を施行され、術後1ヶ月にて転院してきた。手術については、詳細は分からないが、右腹膜を剥離し、大腿神経・腸腰筋・股関節前方関節包を切除し、大腿直筋・縫工筋・大腿筋膜張筋・大中小殿筋を腸骨から切離。股関節臼蓋上方から坐骨切痕、仙腸関節付近から坐骨切痕までを腫瘤と一塊で摘出した。股関節前方易脱臼性に対して大殿筋の一部を包むように縫合。内臓を保護するために腹壁と股関節周囲筋を縫合した。術後1週後からリハが開始された。筋力は健側の膝伸展と両側の足関節遠位筋が4レベルである以外は0〜1であった。起き上がりも45度ギャッジアップから介助にて直線的に起き上がる程度。坐位は保持可能である。立ち上がりは両手すりがあれば自力で可能で、歩行は分回し、骨盤後傾、膝伸展位で介助にて何とか可能な状態であった。検討としては残存機能で起き上がりの方法、歩行の獲得に対してどのように進めていくかが検討された。なかなか経験する機会のないレアな症例であったが、現在の状態で考えられる内容が検討され提示された。先ずは寝返りや起き上がり等離床の自立をどう進めるかであるが、易脱臼性というだけで、opeの時点でどの肢位で脱臼するのかを確認する必要があることと、何が原因であるかということを確認することが重要となる。原因によっては時期が来たら易脱臼性が収まる可能性がある。また残存するにしても注意する肢位さえ分かれば活動性に制限を加える範囲が少なくなるため、指導により活動性が広がる効能性が十分にある。逆説的には分からない中での訓練はどうしても自ずと制限を課してしまう。筋力が弱いことはあるが、片麻痺でも可能であることを鑑みれば十分に可能なことと思われる。歩行については、両上肢、左下肢が健常であれば両松葉での免荷歩行でも十分にADLは自立できる。ましてや少しでも右下肢に荷重がかけられれば、尚更楽に可能となる。右下肢での荷重量を確認し、痛みの無い範囲で可及的に荷重をさせていく方向で訓練を進めていく。右の機能的な面は期待できないため、よりADLの拡大に努めるしかない。しかし、理学療法としては可及的に股関節、膝関節のROMを維持しておくことがよりADLの維持に貢献できることと考えられる。手術の特殊性から、今後は二次的な痛みの発生が危惧されるため注意が必要である。また、鬱状態であるため、精神的な面が今後の訓練に影響することも考慮する必要がある。また、腫瘍の場合は手術までに時間がかかったり、手術が特殊であったり、放射線治療や化学療法で体力や栄養、骨細胞等への影響が考えられ、通常の術後とは異なる場合があることも考慮する必要がある。レトロスペクティブに我々は適切な時期に何を考えて理学療法を行うかを長期戦略として考える視点も必要で重要であることを再確認するべきである。今後の結果報告を期待したい。                              (文責:国立病院機構三重中央医療センター 岸田 敏嗣)