194回整形外科リハビリテーション研究会報告

2011.2.19 於:名駅モリシタ名古屋駅前中央店 会議室


症例1 10歳代 男性 腰椎分離症で通院中に鼠径部痛が出現した一症例

症例は10歳代の男性である。サッカー歴は9年で、高い競技レベルにある。既往歴に第6腰椎分離症があった。
 右前方に来る見方に対し、左インサイドキックでパスを出した直後に、左鼠径部に激痛を生じた。疼痛部位はASISと恥骨結節の間、および腸腰筋と恥骨筋の間であった。疼痛はダッシュの際には現れず、ジャンプやボールキックの際に現れた。また、左自動SLRでは疼痛はなく、両側自動SLRで再現された。他の臨床所見として、圧痛は恥骨結節とAIISに認め、大腿直筋、腸腰筋、恥骨筋に収縮時痛と伸張時痛を認めた。Freibergpatrickテストが陽性で、疼痛部位は同部にみられ、骨盤固定により疼痛は増強した。
 
検討項目は@痛みを出している組織は何かA痛みが出る機序は何かB治療方法はどうするかの3点であった。なお、レントゲン上AIISに剥離骨折が認められており、受傷後3週を経過していた。検討において、損傷部が大腿直筋、腸腰筋、恥骨筋で意見が分かれた。大腿直筋の場合、大腿骨頸部への反回枝部での損傷が考えられた。しかし、直筋の深層筋は平坦であり牽引力はかかりにくいという点と、疼痛の再現状況からは考えにくいのではないかと思われた。受傷機転のサイドキックは、左股関節を屈曲・外旋しながら、内転して振りきる運動である。そうすると、恥骨筋の肉離れの可能性が高く、腸骨筋の疼痛は腫れが波及した二次的なものではないかと思われた。これらに対する治療として、大腿直筋に対しては起始部にテンションがかからないように遠位部を十分緩める操作を行いたい。そして、受傷後3週間を経過した現状では、筋損傷は治癒傾向にあると思われ、恥骨筋に対しては内旋位での外転方向のROMの拡大を行い、腸腰筋に対してはリラクゼーションを行うことで効果は得られるのではないかということに至った。
 今回の症例は、予想された損傷部は近似にあり、以前からの所見も絡んでいたことで、その病態の考察は難しかった。しかし、疼痛の再現や受傷機転から整理して考えることでその病態がみえてきた症例であった。最後に、当症例は腰椎の過前彎を呈し、大腰筋や小腰筋は股関節前面部でより伸張された環境にあり、そこで連絡をもつ腸恥筋膜弓において損傷したのではないかという興味深い考察があったことを付け加えておく。 

(文責:生田病院 辻修嗣)



症例2 40代後半 女性 筋筋膜性腰痛と陳旧性外側半月板損傷と診断された症例 続報

 40歳代女性である。左殿部から膝の裏にかけての突っ張り感を訴えて来院された。1年前にエピソードがなく膝関節伸展制限が出現し、徐々に疼痛を認めるようになった。左外側半月板損傷と診断されたものの、保存療法が選択されていた。
 本症例は内側型OA、薄筋の過緊張、回外接地、膝伸展制限、PLPIKnee in、腰痛、仙腸関節障害、坐骨神経痛などと様々な病態が考えられた。その中でもまず膝関節の伸展制限を改善することと、足底板などで回外接地の改善が必要であると示された。その上で梨状筋を含めた骨盤周囲の評価を進める必要があると考えられた。
 再度、評価を実施した結果、薄筋の過緊張による圧痛を認めたが、その他の部位に対する各種評価を行ったが陽性を認めなかった。また薄筋のリラクゼーションのみにより膝関節の伸展制限や疼痛、歩行で著しく改善を示した。しかし、訓練の効果が持続せずに違和感、そして疼痛の訴えが生じ、根治には至らなかった。
 そのためにインソールを作製した。踵骨の直立化のためのホールドと外側ウェッジ、そして荷重の前内側へのカウンターとアーチ保持のためのパットをあてて作製した。装着後の歩行ではKnee inの改善、立脚中期での制動を認めたが、わずかに膝伸展の遅れ、下腿の外傾、遊脚期での股関節内旋(または右骨盤を中心とした振りだし)、足趾屈筋不足、開張足などの指摘があった。
 膝関節の伸展制限の改善には確実に薄筋全体に対してのリラクゼーションが必要であり、その方法は筋腱移行部周囲のみだけでなく、筋の近位部全体を伸張させることが重要となる。
 また症状の改善、安定化のためにインソールの使用も必要である。作製されたインソールより踵骨の外側部から立方骨を保持する程度までパットをあてることでより踵骨の直立化に伴う重心の誘導を促す。さらに内側アーチにパットされたものよりも外側から前方にかけて広く、高くパットすることで、内側アーチの保持で開張足の改善で足趾屈筋を促すことを示された。
 今回の症例のようにさまざまな要因が絡み合って膝関節痛、腰痛、背臥位では大腿の後面に緊張と痛みなどを訴えた症例であっても、疼痛のある部位や関節を丁寧に評価し、さらに症状が他関節からの起因または障害部位からの起因を評価、解釈することの大事さと臨床症状の解釈の難しさを再確認される症例であった。

                             (文責:一宮西病院 田中和彦)


症例3 50歳代 男性 肩関節における前上方軟部組織の特異的所見に対する超音波エコー画像による検討

 症例は、肩関節周囲炎を呈する50歳代の男性。1st内旋最終域において、烏口突起下に上腕骨頭(小結節)が入り込む際に、弾発現象がエコー画像に確認された。また、1st外旋20度付近でも同部に同様な弾発現象が確認された。実際にclick音が確認されており、内旋時に疼痛は生じないものの、外旋の弾発現象が生じる際に疼痛が認められていた。また、実際に問題となっている症状は、肩関節屈曲から伸展(下制)する際の80度前後のpainful arcであった。その他の所見としては、疼痛のために1st外旋20度の制限がある以外は著名なROM制限を認めないものの、GH後方の拘縮が残存していた。3rd外旋90度以降で同部に疼痛を認め、水平屈曲最終域で同部と肩後方に疼痛が認められた。また、2nd外旋位から内転すると80度付近でのlockingと疼痛を認め、それ以上内転することは困難であった。
 エコー画像が示しているものは、一体何であるのか。また、それを踏まえて症状を改善する方法について検討された。
 検討後、エコー画像から肩峰下、烏口突起下に小結節が入り込む際に肩甲下筋と肩峰下滑液包に滑走障害が見られる。また、LHBの亜脱臼や肩甲下筋損傷が疑われる像が確認された。棘下筋、小円筋など後方の組織の拘縮から骨頭の前方編位となっている。更に「表層の三角筋の滑走障害もあるのではないか」という意見もでた。これらから、2nd外旋位から内転でのlockingと疼痛は、肩峰下での肩甲下滑液包の滑走障害であること、肩関節屈曲から伸展(下制)する際の痛みは、肩峰ならびに烏口突起と小結節間の軟部組織の滑走障害であることが示唆された。
 運動療法は肩関節伸展位での外旋を引き出すべくアプローチすることで、肩峰下、烏口突起下の肩峰下滑液包の滑走性を促すことが可能となる。また、棘下筋、小円筋など後方組織のリラクセーションなどのアプローチが必要であると考えられる。
 今回の症例では、超音波エコー画像による特異的所見が提示され、病態がより詳細に考えることが出来た。今後、同様な症状を呈する症例において運動療法を実施する際に、非常に参考になる症例であった。

              (文責:NTT西日本金沢病院 リハビリテーション科 畠山智行)