202回整形外科リハビリテーション研究会報告

2012.01.21 於:名古屋会議室 名駅モリシタ店

症例1 60歳代 女性 足関節骨折後に荷重時痛が残存している1症例

 原付バイクを運転中に乗用車と衝突して受傷した。診断名は、右脛骨天蓋開放性および外側顆骨折、右腓骨遠位端および腓骨頭骨折であった。単純X線写真およびCT画像にて、内果近位部より前外上方、内果と天蓋の境界部より前外上方への骨折線を認め、内果と天蓋部分が前外上方へと転位する斜骨折であった。また、腓骨遠位端は、遠位脛腓間関節レベルで粉砕骨折となっていた。脛骨、腓骨ともにプレート固定による骨接合術が施行された。外固定はなく、術後6週間の完全免荷となった。術後4日目より理学療法が開始された。骨折部以遠の腫脹を伴った足関節可動域制限、安静時痛、運動時痛が認められ、アイシングや浮腫管理、関節可動域運動、筋力回復運動等が施行された。術後12週の時点で、膝関節30°屈曲位での足関節他動背屈()30°/()20°、底屈55°/50°、内がえし20°/10°、外がえし25°/20°、内転25°/15°、膝関節30°屈曲位での足関節自動背屈25°/15°、底屈50°/45°、内がえし20°/10°、外がえし20°/15°、内転20°/10°であった。全荷重歩行が許可されたが、立脚中〜後期における足関節前方部痛により松葉杖やT字杖が必要であった。16週が経過した時点で、杖なし歩行を獲得したが、足関節前面痛が残存し、買い物、室内家事動作においてTSストラップが必要であった。蹲踞姿勢や階段降段時などの前方荷重や母指MP関節伸展にて疼痛が増悪していた。補高や足部外転位、距骨の後方押し込みにて疼痛が軽減した。検討課題は、所見より前方荷重時痛の原因を明らかにし、治療方法を再考することであった。フロアーより、背屈制限があり、母指伸展を加えると疼痛が増悪することから、長母指屈筋の拘縮が原因ではないかとの意見でほぼ一致し、距骨下関節や脛腓間関節のインスタビリティー、足関節前方部の腱周囲の癒着、創部痛なども再確認すべきとの意見が出された。検討課題は「前方荷重時痛」であったが、その内容を整理する必要がある。荷重量の増加、距腿関節における背屈、距骨下関節の回内が要因として考えられ、正常な運動軌跡から逸脱する原因として拘縮、静的支持機構の破綻、動的支持機構の不十分さがある。これらを所見より明らかにする必要がある。本症例の場合、背屈角度を減らせば、片脚立位でも疼痛はほとんどなく、いわゆる荷重時痛ではないことがわかる。背屈角度の増加と底屈筋群の筋活動の増加を伴う動作にて疼痛が増悪していることから、距腿関節後方部の拘縮により距骨の後方移動が妨げられた状態で背屈を強制されることで前方部分のインピンジメントが起こって疼痛が出現していると考えられた。フロアーの意見のごとく長母指屈筋が制限因子と考えられるが、触診やダイレクトな徒手操作による伸張性の確認等で、その筋が短縮しているのか、癒着しているのか、癒着であればどの部分で起こっているかなどを詳細に確認する必要があると指摘があった。また、脛腓間や距骨下のインスタビリティーについては、テーピングや徒手にて離開ストレスの減少とともに疼痛が軽減するかどうかを確認する必要がある。単純X線写真において脛腓間のわずかな離開を認めること、荷重時に距骨下関節回内位になっていることから、試みるべき評価の1つと考えられた。また、CT画像にて、脛骨遠位端前面にも小骨片があり、距骨滑車面の軟骨損傷なども確認する必要がある。治療としては有効な手段がとられており、日常生活において補高や足底板等で、疼痛がなく、目的とする筋がしっかりと働く状態で荷重することで、治療効果を高めるではないかとの見解が示された。疼痛の原因として様々な因子が考えられ、丁寧に所見をとって解釈を行うことの大切さを再確認できた症例であった。

(文責:伊賀市立上野総合市民病院 猪田茂生)

症例2 60歳代 女性 左上腕骨近位端骨折−保存療法を施行された一例−

 症例は60歳代後半女性である。既往に脳梗塞があるが麻痺はない。過去にも症例検討に提示されており、今回は3回目である。スキーで転倒し上腕骨近位端骨折を受傷した。脳梗塞発症後、以降抗凝固剤を使用していた事もあり保存療法が選択された。5週間ベルポー固定をし、受傷6週経過後からPTが開始された。X-pは、骨頭下方亜脱臼位で、骨頭が骨幹に疳入したことで大結節が上方に転位し、さらに大結節が内方へ疳入し骨頭の横径が減少していた。屈曲60°、外転45°、結帯は体側であった。約半年後にはご主人の仕事の都合で海外へ移住し、それ以来2ヶ月に1度帰国し、約1ヵ月間の滞在中にPTが行われている。受傷から約1年経過後の前回検討時では、下垂位で出現する左上角付近から上腕上外側部に出現する疼痛の解釈と運動療法について検討された。屈曲130°、外転80°、結帯Th11であったが、GH関節の内転制限の存在が考えられ、まずは上方支持組織の伸張性拡大、さらに僧帽筋中下部線維の筋力強化が必要であると指摘された。今回は、受傷から約3年経過している。屈曲150°(自動140°)、伸展50°(右50°)下垂位外旋30°(右80°)、結帯Th9(右Th3)であった。依然として、家事などの労作時に左上角付近から上腕上外側部に疼痛が出現していた。また、就寝時には左側臥位時や右側臥位で左肩水平内転位になると、上角あたりから上腕上部に疼痛が出現していた。棘下筋上部線維のストレッチ(結帯Th5へ拡大)と僧帽筋中下部線維の収縮訓練を行う事で、治療後は上角付近の疼痛はほぼ消失し、就寝時の側臥位時の疼痛も軽減していた。が、労作時の上角付近の疼痛は再燃していた。今後は更に棘下筋上部線維の伸張性拡大と僧帽筋中下部線維の筋力強化を継続していく予定としているが、治療内容ならびに骨頭変形によるGH関節機能への影響について検討がなされた。まず、骨頭変形については、横径が減少している事で棘上筋や棘下筋上部線維の静止張力が低下しており、骨頭求心力が低下していると指摘された。また、下垂位外旋可動域についてはもう少し改善の余地はあると指摘された。さらに、外科頚骨折で保存療法を選択されたケースでは、固定期間中に骨頭に対して骨幹が内旋変位している可能性があり、そのためインナーマッスルのベクトル方向とアウターマッスルのベクトル方向に差異が生じて、自動挙上に制限が出現する可能性が説明され、回旋変位の有無を確認するよう指摘された。現在の症状は、GH上後組織の拘縮とTOS様症状が混在していると考えられ、骨頭求心力が低下している事を考慮しても、肩甲胸郭関節機能の改善は非常に重要になると思われた。技術的な事として、確実に肩甲骨の上方回旋と内転下制を誘導しつつ胸椎の伸展を促す事、そして単に強収縮を求めるのではなく、収縮と弛緩のメリハリをつける事が重要であると説明がなされた。また、棘下筋上部線維の伸張性については、結帯可動域で測るのではなく、最大伸展位での内旋可動域を健側と比較すると良いと説明された。エコーでは、正常な肩では下垂位外旋30°くらいでの等尺性収縮により、棘下筋の深部にある脂肪組織がよく動いているが、内旋可動域が不十分な例では、同部の脂肪組織の動態が緩慢である様子が観察されており、治療に是非参考にしてほしいと説明があった。受傷から長期経過しており、骨変形に伴う骨頭求心力の低下、年齢や姿勢(凹円背)に伴う肩甲胸郭関節機能低下などがあり難治例と思われるが、今後の治療と経過報告を期待したい。

              (文責:平針かとう整形外科 岡西尚人)


症例3 10歳代 男性「右肘関節脱臼骨折術後、異所性骨化を生じた症例」 

 症例は10歳代前半の男児で、6月下旬サッカー中に転倒し受傷、同日A病院にて右肘関節脱臼骨折と診断され、徒手整復された後、翌日B病院を紹介受診し同日緊急手術(ORIF)が施行されギプス固定、7月中旬にギプス固定から装具による固定となり、8月下旬装具除去、10月中旬抜ピン術が施行され、11月中旬より発表者の病院にて理学療法が開始された症例である。なお、異所性骨化は9月中旬頃より右上腕骨遠位外前方に画像上認められるようになり、今後骨化巣の成熟を待って骨化巣切除授動術を行う予定。   初診時の理学療法所見は、右肘関節ROM屈曲115°伸展-40°、右前腕回内70°回外90°であり、圧痛は上腕筋と異所性骨化部に若干認められ、その他疼痛は無く、腫脹も無い状態であった。
 治療は上腕筋と長橈側手根伸筋(以下ECRL)のリラクゼーションとストレッチ、肘関節後方靭帯のストレッチを中心に施行され、12月下旬の肘関節ROMは屈曲120°伸展-35°であった。
 検討項目は「異所性骨化の出現理由」「異所性骨化がROMに与える影響について」「運動療法の進め方」であり、いくつかの小グループに分かれてディスカッションが行われた。
 各グループからの意見では、異所性骨化の原因はピンが骨膜に影響を与えているのではないか、受傷時の局所損傷により派生した血腫が骨化してしまったのではないか、理学療法開始までに無理なストレスが異所性骨化出現部にかかってしまったのではないかという意見が挙げられ、ROMへの影響については、画像所見より異所性骨化部はECRL付着部付近であると考えられ、同組織の伸張性低下が肘関節伸展・前腕回内制限になっているのではないかという意見が挙げられ、運動療法の進め方については、肘関節屈曲制限に対して、肘関節内外反を用いた肘関節屈曲ROMexも取り入れてみてはどうかという意見があげられた。
 まとめとして、画像所見と受傷機転より、右上腕骨外側上顆のあたりに損傷を受けた形跡が見受けられることから、同部位周囲(特にECRL)の筋や骨膜、関節包などの損傷により血腫が派生し、その後右肘関節を90°屈曲位にて固定していたことにより、ECRLと上腕筋の間に血腫が貯留してしまい、同部位にカルシウムなどが沈着してしまったことが異所性骨化の出現理由ではないかという意見が挙げられた。
 肘関節の伸展制限と前腕の回内制限は、異所性骨化によりECRLの伸張度が低下してしまったことが原因で、肘関節屈曲制限は、受傷時に肘関節後外側の組織(関節包など)が損傷され、同組織が癒着・瘢痕形成されたことが原因で、現段階では異所性骨化とは別の原因ではないかという意見が挙げられた。
 運動療法の進め方については、肘関節屈曲制限について、肘関節前方にて橈骨頭と異所性骨化部が衝突するまでは肘関節後方組織に対するアプローチを進めていき、画像確認や医師との連絡を密にして、肘関節前方部で衝突しているのか否かを慎重に観察していけば良いのではないかという意見が挙げられた。
 異所性骨化は臨床上では経験する機会が少ない症例であり、今回の症例検討では異所性骨化に対してどのようなアプローチができるのか、それ以外の問題点をどのように考えればよいかということを習得でき、今後臨床上で同疾患に直面した際に十分活用できるものであったのではないかと考える。

(文責  佐藤病院 原 哲哉)